日本の14才、mRNA COVID-19ワクチンの3回目接種後に脳静脈洞血栓症
コロナワクチンをまだ接種をする人がいらっしゃいます。新聞やテレビのニュースにならないのと、適切な診断治療が望まれるので、14才の重篤な副反応症例をもう一人お知らせします。
症例
日本の14歳の女子が、3回めのファイザーのBNT162b2 mRNAワクチンを接種した7日後に、前日から持続する頭痛、嘔吐、両側四肢の感覚異常、および発作の症状で発症しました。
彼女にCOVID-19 を含む最近の感染はない。
病歴、手術歴、および家族歴に特別なことはない。
経口避妊薬やその他の臨床的に血栓形成に関連する薬も使用していなかった。
神経学的検査では、意識障害と両側上肢の衰弱が明らかであった(手動筋力テスト:上肢に4つ、下肢に5つ)。
検査所見の要約を示す (表 1 ) 顕著にD-dimer が上昇しているので、血栓形成を疑う。
病変部の画像診断の大きくした写真です。入院1 日目の頭部 CTで右側頭領域に赤い矢印で示す出血がある(図 1)。
下の写真は同日のCT血管造影像です。造影剤が入って白く見えるはずの上矢状静脈洞が造影されていない。上矢状静脈洞内に何か、おそらく血栓がある。上矢状静脈洞は、図2.に赤い星でマークしてある部分です。
脳の静脈血の大部分は、静脈洞を経由してS状静脈洞に向かい、内頸静脈から心臓に還流します。静脈洞に大きな血栓が形成されると心臓に戻るはずの静脈血がせき止められます。初期に脳脊髄液の産生が低下し、それから内圧が上昇し動脈血の流入が妨げられ、静脈系による脳卒中となります。
血栓形成傾向の検査では、入院時のプロテイン S (PS) 活性は低い。 抗血小板因子-4 (PF-4) 抗体は陰性。 SARS-CoV-2 のPCR検査は陰性。
血小板減少症症候群(TTS)を疑い、ヘパリンの代わりにアルガトロバンを投与した。 ただし患者は、低血小板数および抗 PF-4 抗体がないため、TTS 症例定義の基準を満たしていない。
症状は大幅に改善し、3 日目までに完全に治まった。プロテイン S (PS) 活性は4 日目には正常に戻った。
7 日目に実施されたMRIの T2 FLAIR強調(図1D)で、拡張した上矢状静脈洞(矢印)に異常な高信号領域 (矢印) が示されている。
アルガトロバンを 11 日間続けた後、ワルファリンに切り替えた。
17 日目に行われた磁気共鳴静脈造影では、矢状静脈洞の異常な高信号領域の改善が示された(図 1)。
患者は 17 日目に軽度の指の協調/運動障害が残るが退院した。
患児は入院時Protein S値が低いため、念のために日本人の3大先天性血栓性素因のひとつであるプロテインS (PS)遺伝子を調べた。結果は、Protein S をコードする PROS1 遺伝子に変異はなかった。
本症例は、14才女子が3回めのファイザーのBNT162b2 mRNAワクチンを接種した7日後に頭痛、嘔吐、両側四肢の感覚異常、および発作で発症した脳静脈洞血栓症(CVST: 上矢状静脈洞) です。
治療はアルガトロバン11日間投与後、ワルファリンに切り替え、入院17日目に軽度の指の協調/運動障害を残すのみまで症状改善し退院となった。入院時に血栓の存在していた上矢状静脈洞は、退院時のMRI venogramで異常所見を認めず。また、入院時にCTで確認された右側頭葉の脳内出血所見も退院時CTにて改善を確認した。
世界的に、mRNAベースのワクチン接種後の子供の 脳静脈洞血栓症 CVST 症例はほとんど報告されていません。
しかし、COVID-19 mRNAワクチンの市販後調査からの安全性シグナルに基づいて、二次性血小板減少症とともに異常部位血栓症(脳静脈洞血栓症(CVST)および内蔵静脈血栓症(SVT)を含む)は特別に関心のある有害事象(AESI)の候補として注意深く適切な対応が推奨されます (ref)。
ref1) https://doi.org/10.1002/pbc.30376 症例のブログ記事
ref2) DOI:10.1594/ranzcr2015/R-0005
この症例を診断治療した病院は神戸こども病院
脳の静脈は硬膜静脈洞に集められる (医学部基礎学年向け)
タイトル:MRI of clot in cerebral venous thrombosis: high diagnostic value of susceptibility-weighted images
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