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ワクチン接種後心筋炎 Up to Date

新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種後に心筋炎・心膜炎が発症します。

ポイント
病態が複数ある。疫学的に年齢・性別によってリスク/ベネフィットが異なる。主経路:活性化された免疫細胞 (細胞傷害性キラー細胞および骨髄細胞) によって媒介される炎症関連心筋炎が指摘されている。心筋細胞に対する自己抗体などは支持されていない*従来のワクチンによる心筋炎は好酸球性(アレルギー関連)


ファイザーワクチンBNT162b2接種後心筋炎の臨床的特徴

イスラエルは2020年12月20日に、21日間隔の2回接種を基本とした全国的なワクチン接種キャンペーンが開始されました。そして、イスラエル保健省は、2021年4月までに2回目のワクチン接種を受けた若者を中心に60人以上の症例の報告を受けました。
そして2021年10月6日にNew Engl J Med にイスラエルからのレポートが公開されました。ワクチン接種後の心筋炎/心膜炎に見られる症状を頻度順に並べると、トロポニン (I またはT) 上昇 100%、スパイク蛋白抗体価上昇 100%、胸痛 95%、抗N抗体 陰性 90%、CRP上昇 87%、心電図異常 68%でした。85%以上の症例は入院し、ほとんどは軽症でしたが劇症心筋炎で数名が死亡しています。

N Engl J Med. 2021 Oct 6 : NEJMoa2109730.

このイスラエルレポートのまとめ。(図1より改変)。若年男性のリスクが高いことがすでに示されています。また、中国発の新型肺炎として、初期の中国の症例で心筋炎が重症であると報告されましたが、2023年1月1日の記事に記載しているように、その頃の症例報告はその後のCOVID-19 と同じでない可能性があります

イスラエルレポート全文はブログ

ワクチン接種後心筋炎/心膜炎の頻度

(1) 若い男性にリスクあり 2021年6月1日公開 イスラエル

発生率は 1/3000 から 1/6000 の間
イスラエル 2021年6月1日 Science 訳ブログ

(2) 男児は利益よりリスクが大きい 2022年2月14日公開 米国

期間 2021年1月1日 から2021年6月18日 データソース VAERS
ワクチンはファイザー BNT162b2
心筋炎/心膜炎の症例 (n = 253) (初回接種後 129 人、2回目接種後 124 人) 86.9%が入院した。
12 ~ 15 歳および 16 ~ 17 歳の男性患者における 2 回目接種後の 100 万あたりの発生率は、それぞれ 162.2 および 93.0 でした。
デルタ期間中の COVID-19 入院に対するワクチン接種後の心筋炎/心膜炎と比較検討すると、12 ~ 17 歳の 2 回接種ワクチン接種は、併存疾患のある非免疫の少女にのみ均一に有利であることが示唆された。
国際的な推定によると、感染歴があり併存疾患のない男児では、1回の投与でも利益よりもリスクの方が大きかった.
オミクロンの設定では、1回の投与で免疫のない子供を保護できる可能性があるが、2回の投与では人口レベルで追加の利益が得られるようには見えない

Eur J Clin Invest 2022年2月14日 訳ブログ

図 1. (A) Pfizer-BioNTech [BNT162b2] mRNA ワクチン 1 回および 2 回接種後の 100 万人の青少年あたりの筋/心膜炎の発生率 (年齢および性別)
図1. (B) BNT162b2ワクチン接種後の日数別および年齢別の心筋炎/心膜炎症例
図2. VAERSによる筋/心膜炎の発生推定値と、BNT162b2ワクチン関連の心筋炎/心膜炎の国際的な発生率との比較


図3 (A,B)12~17歳の男児におけるCOVID-19の100万感染当たりの入院率とBNT162b2ワクチン100万接種当たりの筋/心膜炎発生率*の比較(ワクチン接種量、推定感染入院リスク(IHR)、合併症の有無、変種により層別化)。*2回目の接種で予防された入院は、Herreraら(19)およびSorgら(20)によるIHR推定値と、入院に対するワクチン効果(VEH)の2つの推定値に基づいている。 91.1%(24)(投与量1のVEH範囲の上限)から93.0%(26)(投与量2のVEH範囲の上限)までの9%;および2)84.5%(23)(投与量1のVEH範囲の下限)から93.0%(26)(投与量2のVEH範囲の上限)までの8.5%:防御を高めることによって得られる最大の利益。


図4. 予防接種の用量、併存疾患の状態、およびバリアントによって層別化された、12~17歳の男児におけるBNT162b2後のワクチン関連筋/心膜炎と、以前の感染歴のある小児の1回目および2回目のワクチン接種によって防止された追加の入院を比較するリスクベネフィット分析
図5. BNT162b2ワクチンの2回目の接種と12~17歳の男児における120日間のCOVID-19による入院リスクとのリスク・ベネフィット分析(疾患の発生率、合併症、変異の設定において、COVID19+陽性の偶発的検査を有する小児入院の40%(31,32,33,34)について調整なし、および調整あり)。


3人の若年成人男性におけるCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎@日本からの報告

国立循環器病研究センターのKasai先生たちによる論文が、2022年5月18日にPathology International という日本病理学会の国際ジャーナルに掲載されました。タイトルは、Myocarditis after COVID-19 mRNA vaccination in three young adult males: Significance of biopsy in vaccine-associated myocarditis. です。原著 全訳 (補足図表あり)
症例:2021年7月から9月にかけて、COVID-19 mRNAワクチン接種前は健康であった若年成人男性(19歳、24歳、24歳)が、mRNA-1273 COVID-19ワクチン(Moderna)2回目接種後2-3日以内に激しい胸痛を訴えて当院を受診した。すべての患者は、ワクチン接種後1日以内の入院前に38℃~39℃ の高熱があり、来院時、全患者の心電図はびまん性のST上昇を示し、血清トロポニンT値は上昇した(0.49〜1.03ng/ml、基準範囲<0.014)。冠動脈造影では狭窄はみられなかった。左室収縮機能は保たれていた。すべての患者はCOVID-19感染の既往がなく、入院時の新型コロナウイルスの鼻咽頭 PCR検査結果は陰性であった。入院6-9日目の心臓磁気共鳴(CMR)検査で、全員の左心室側壁に非虚血性心筋損傷の変化が見られた (図S1A)。CMRでもT2ベースの画像で心筋浮腫が認められ、EGEの結果と一致した (図S1B. 略)。これらの所見はCMR基準による急性心筋炎の診断を支持する

図S1A. 入院6-9日目の心臓磁気共鳴(CMR)画像では、全例でLV側壁の早期ガドリニウム増強(EGE)画像で非虚血性分布パターンが陽性であり、非虚血性心筋損傷を示した

集中治療室での数日間の観察の後、すべての患者は重篤な合併症を起こすことなく自宅へ退院した。1ヵ月後の経過観察では、すべての患者は完全に無症状であり、血清トロポニンT値は正常範囲であった。

ワクチン接種後2〜3日以内に右室中隔からの心筋バイオプシー (EMB) の結果は免疫介在性心筋炎であった。

組織学的所見 図1. より。心筋細胞壊死と隣接することなく、マクロファージが主体で少数のT細胞が混在する軽度の間質性炎症浸潤があった。好酸球は存在しないか、ほとんど認められなかった。
ヒト白血球抗原(HLA)-DR抗原は、他の非心筋炎症例と比較して、毛細血管内皮細胞と間質浸潤細胞にびまん性に陽性であった(図S2の3症例の免疫組織化学)。心筋の中等度の心内膜線維肥厚と軽度の間質性線維症も観察された。

図1. COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎3例の心内膜生検(EMB)組織像。 右心室中隔から採取したEMBでは、全患者のH&E染色(a〜c)で軽度の炎症が示され、マッソントリクローム染色(d〜f)で中程度の心内膜肥厚と軽度の間質線維症が示された。 (a) および (d)。 患者 1. (b) および (e); 患者 2. (c) および (f); 患者 3。スケールバー: 50 μm
図 S2: 新型コロナウイルス感染症 mRNA ワクチン接種後の心筋炎 3 例の心内筋生検 (EMB) 免疫組織化学 EMB免疫組織化学では、すべての患者においてCD68陽性マクロファージと少数のCD3陽性T細胞が示された。 テネイシン C (TN-C) は心内膜で陽性であり、間質で部分的に陽性でした。 ヒト白血球抗原 (HLA)-DR は毛細血管内皮細胞で発現されました。 (A); 患者 1. (B); 患者 2. (C); 患者3。 スケールバー:50μm

SARS-CoV-2を含むウイルスゲノムは、マルチウイルスリアルタイムPCRシステムにより、すべての生検した心筋から検出されなかった。

結論:モデルナ社のCOVID-19 mRNAワクチン2回め接種から2, 3日後に 若年成人男性(19歳、24歳、24歳)が発熱、胸痛を伴う免疫介在性心筋炎を発症した。3人とも症状軽快し数日で退院した

ワクチン接種後に心筋炎の臨床的疑いがある 15 人の患者からの EMB の包括的な組織病理学的分析

出典
Intramyocardial Inflammation after COVID-19 Vaccination: An Endomyocardial Biopsy-Proven Case Series
Int J Mol Sci. 2022 Jun 22;23(13):6940. リンク

対象はワクチン接種後に心筋炎の臨床的疑いがある 15 人。
*左室駆出率の低下で判定した
*内訳はファイザー11人、アストラゼネカ2人、ヤンセン2人。
方法は心内膜心筋生検 (EMB)し組織病理学的分析をした
*15人の年齢 18〜68才、男性 9人、女性 6人。

結果は15人中14人に心筋の炎症が明らかだった
*内訳は活動性心筋炎 2人、重度の巨細胞性心筋炎 2人、炎症性心筋症 10人 (ダラス基準による)
*すべての患者で感染性の原因が除外された
*症状の発症は、Comirnaty® では 0 ~ 56 日 (中央値 14 日)、Vaxzevria® では 1 ~ 14 日 (中央値 7.5 日)、Janssen® では 14 ~ 28 日 (中央値 21 日) 。

結論:SARS-CoV-2 スパイクタンパク質が、9 人の患者の心筋細胞でまばらに検出され、CD4+ リンパ球浸潤が優位だった。 心臓内でワウチン由来の SARS-CoV-2 スパイクタンパク質が発現し、同時に CD4+ リンパ球浸潤が見られたことは、ワクチン接種に対する自己免疫反応を示唆している

心臓組織にCD3陽性のリンパ球が浸潤している
心臓組織にCD3陽性のリンパ球が浸潤している
パネルC 患者14の心筋障害は高度
炎症性心筋症の患者の心筋組織にスパイク蛋白が検出された
スパイク蛋白抗体 GeneTex, 1A9, GTX632604; 1:100
スパイク蛋白抗体 GeneTex, 1A9, GTX632604; 1:100
患者の心内膜生検におけるCD4+およびCD8+ T細胞の代表的な免疫組織化学染色像
AとBはファイザー、Cはアストラゼネカ。Aは患者6、Bは患者10、Cは1患者13

出典
Intramyocardial Inflammation after COVID-19 Vaccination: An Endomyocardial Biopsy-Proven Case Series
Int J Mol Sci. 2022 Jun 22;23(13):6940. リンク

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Case 1. 22才男性 孤立性心房性心筋炎 

  • 出典 
    Myocarditis-induced Sudden Death after BNT162b2 mRNA COVID-19 Vaccination in Korea: Case Report Focusing on Histopathological Findings

  • [韓国で発生したBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種後の心筋炎による突然死.病理組織学的所見を中心とした症例報告]

  • J Korean Med Sci. 2021 Oct 18;36(40):e286. リンク

BNT162b2 mRNAワクチン初回接種後5日目に胸痛を発症し,7時間後に死亡した22歳男性軍新兵の剖検例の報告。

発症の17カ月前と7カ月前の健康診断で一過性高血圧(それぞれ156/94mmHg、128/74mmHg)、それ以外は健康であった。BNT162b2 mRNAワクチン初回接種から5日後の2021年6月13日、喫煙中の午前1時に胸痛を同僚に訴え、就寝した。午前8時、ベッドの横にしゃがんで意識不明の状態で発見された。救急外来に運ばれ、心電図で心室細動を指摘された。心肺蘇生が2時間行われたが、蘇生できなかった
冠動脈は開存しており,心臓弁にも異常はない.心筋の厚さは正常であり,心房,心室の拡張は認められなかった.心筋は均一な褐色で、明らかな壊死や線維化は認められなかった

心臓の組織学的検査では,心房壁、SA結節とAV結節の心筋内に好中球と組織球を主体とした炎症細胞のびまん性の炎症性浸潤が観察され、孤立性心房性心筋炎と診断された(Fig.1A).心房(図1A、B)、SA結節、房室(AV)結節周辺(図1C)では炎症性浸潤が優勢であり、心室領域では炎症性細胞はほとんど認められなかった(図1D)。炎症性浸潤に隣接して筋細胞の壊死または変性が認められた。多核巨細胞、膿瘍形成や細菌のコロニー形成は認められなかった。免疫組織化学的C4d染色により、炎症性浸潤を伴わない筋細胞の単細胞壊死が散見された。心房と心室で広範な収縮帯壊死(CBN)が認められた.ただし、CBNは心室細動や蘇生時のカテコラミン投与により生じた可能性もある。その他、肺、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、脳には、巨視的、顕微鏡的検査で微小血栓症や感染症の所見も含めて特異的な病理学的変化は認められなかった心臓や他の臓器に微小血栓症や感染症の所見はなかった.死因はBNT162b2ワクチンと因果関係のある心筋炎と断定された.

Fig 1A. 心房中隔のヘマトキシリン・エオジン染色では、好中球優位の大規模な炎症性浸潤を示す
Fig 1B. 筋細胞はしばしば収縮帯壊死を示し(黄色矢印)、マッソン三色染色により強調されている
Fig 1C. 房室結節部では、心房性心筋炎の表層への進展が認められる
Fig 1D. 心室心筋には炎症性浸潤はないが、特に左心室壁と心室中隔に収縮帯壊死(黄色矢印)の大きな病巣を複数認める

棒は100μmを表す。挿入図の青い矢印は、低倍率のビューから切片を採取した場所を示す。A)の標本にはヘマトキシリン・エオジン染色を、(B-D)の標本にはマッソントリクローム染色を使用している。RA=右心房、LA=左心房、RV=右心室、LV=左心室

筋細胞の細胞内に好酸球が密集していることが強調された(図1Bおよび図D)

Fig 2A. 炎症細胞のほとんどはCD68陽性の組織球である
Fig 2B. 炎症細胞の多くはCD3染色が陰性で、リンパ球が少ない
Fig 2C. C4dの陽性染色により、心房筋細胞の単細胞壊死が散見される

CD68とCD3免疫染色では、炎症性浸潤に中程度の数の組織球とまばらなリンパ球が認められた(図2A、B)。変性あるいは虚血した筋細胞は、C4d免疫反応に陽性を示した(Fig. 2C)

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Case 2. 46才女性 劇症型心筋炎

出典 Myocarditis after Covid-19 mRNA Vaccination
N Engl J Med 2021; 385:1332-1334. DOI: 10.1056/NEJMc2109975
Chieh-Yu Lin. Washington University School of Medicine, St. Louis, MO

患者1

45歳女性。BNT162b2ワクチン接種(初回接種)10日後に呼吸困難とめまいを呈した.
ウイルス性前駆症状はない。鼻咽頭ウイルスパネルでは,SARS-CoV-2 ,インフルエンザAおよびB,エンテロウイルス,アデノウイルスは陰性だった(補足付録の表S1).

血清PCR反応および血清学的検査では,活動性パルボウイルス,エンテロウイルス,ヒト免疫不全ウイルス,SARS-CoV-2の感染の証拠は認められなかった.

来院時,頻脈,心電図上のST低下(外側リードで顕著)トロポニンI値6.14ng/mL(基準範囲0~0.30)が認められた.

患者1. ST低下

経胸壁心エコー図では、重度の全体的な左室収縮機能障害(駆出率15~20%)と左室寸法が正常であることが示された。右心カテーテル検査では,右側と左側の充満圧が上昇し,Fick法による心指数は体表面積1m2あたり1.66リットルであった.冠動脈造影の結果,閉塞性冠動脈疾患は認められなかった.

心内膜生検標本では、T細胞とマクロファージが主成分で、好酸球B細胞形質細胞が混在する炎症性浸潤が認められた(図1A、図S2~S4)

彼女は強心剤の投与、利尿剤の静脈内投与、メチルプレドニゾロン(1日1g、3日間)の投与を受け、最終的には心不全のガイドラインに沿った内科治療(リシノプリル、スピロノラクトン、メトプロロールサクシネート)が行われた。来院7日後,駆出率は60%となり,自宅退院となった.

Case 3. 42才男性 劇症型心筋炎

42歳の男性mRNA-1273のワクチン接種(2回目)の2週間後呼吸困難胸痛を呈した.
ウイルス性前駆症状はなく,PCR検査でSARS-CoV-2は陰性であった(Table S1).

頻脈発熱があり,心電図ではびまん性のST上昇を認めた(Fig.S1).

経胸壁心エコー図では,全体的な両室機能障害(駆出率15%),心室寸法は正常,左室肥大が認められた.
冠動脈造影の結果、冠動脈疾患は認められなかった。心原性ショックが出現し,来院後3日目に死亡した.
剖検の結果,両心室性心筋炎が認められた(図1B,図S5,S6)
T細胞(CD3、CD4、CD8)とマクロファージ(CD68)が多くB細胞(CD19)、好酸球 が混在した炎症性浸潤が観察された

Fig 1B-1. 混合炎症浸潤に伴う多巣性心筋細胞障害が認められた。好酸球が散見された
Fig 1B-2. 混合炎症浸潤に伴う多巣性心筋細胞障害が認められた。好酸球が散見された
Fig 1B-1. 混合炎症浸潤に伴う多巣性心筋細胞障害(矢印)が認められた。好酸球(矢頭)が散見された


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ワクチン接種後心筋炎は軽症でも再発する@イタリア


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タイトル:Relapsing myocarditis following initial recovery of post COVID-19 vaccination in two adolescent males – Case reports
Vaccine X. 2023 Aug; 14: 100318. doi: 10.1016/j.jvacx.2023.100318


ワクチン接種者は180日後にも心筋に炎症があるとする論文@慶応

論文の主旨

ワクチンを接種した心筋炎の症候のない人にも18  フルオロデオキシグルコース (FDG)を使用した PET検査で心筋炎の所見がある

主要データ

図 2:ワクチン接種のある患者と受けていない患者における代表的な全身および心筋の 18 フルオロフルオロデオキシグルコース ( 18 F-FDG) PET/CT 画像 (PET 冠状画像、PET 軸方向画像、およびカラーブレンディング PET-CT 融合軸方向画像) 。(A) SARS-CoV-2ワクチンが利用可能になる前の期間に人間ドックのために18 F-FDG PET-CTを受けた43歳男性の画像。患者の心筋スコアは 2、心筋 SUVmax は 2.7 でした。腋窩、肝臓、脾臓の SUVmax はそれぞれ 0.6、2.8、2.1 でした。(B)SARS-CoV-2ワクチンが利用可能になる前の期間にPET/CTを受けた膵臓がんの80歳男性の画像。患者の心筋スコアは 0、心筋 SUVmax は 2.2 でした。腋窩、肝臓、脾臓の SUVmax はそれぞれ 1.1、2.2、1.5 でした。(C)左腕にBNT16b2ワクチンの初回接種から29日後に人間ドックのためPET/CT画像検査を受けた38歳男性の画像。左腋窩(矢印)および心筋における18 F-FDGの高い取り込みが観察された。患者の心筋スコアは 3、心筋 SUVmax は 14.6 でした。腋窩、肝臓、脾臓の SUVmax はそれぞれ 5.0、2.0、2.1 でした。(D)左腕にmRNA-1273ワクチンの2回目の投与を受けてから139日後に人間ドックのためにPET/CT画像検査を受けた72歳の男性の画像。左腋窩(矢印)および心筋における18 F-FDGの高い取り込みが観察された。患者の心筋スコアは 2、心筋 SUVmax は 5.9 でした。腋窩、肝臓、脾臓の SUVmax はそれぞれ 2.7、2.6、2.1 

解釈

この研究はワクチン接種者の心筋細胞が非接種者の心筋細胞よりもグルコースの取り込みが多かった、という事実を示している。なぜグルコースの取り込みが多いのか?から考えられる原因の可能性を2つあげる。注意点はこの論文のデータは、必ずしもワクチン接種者全員に心筋炎が生じていることを示しているわけではありません

1. 心筋に炎症が起きている
2. 心筋の代謝が高グルコース利用型に変化している

タイトル:Assessment of Myocardial 18F-FDG Uptake at PET/CT in Asymptomatic SARS-CoV-2-vaccinated and Nonvaccinated Patients
Radiology. 2023 Sep;308(3):e230743. 
原著リンク
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