見出し画像

酵素ドリンク/サプリについて

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
健康を気にし始めると目にする「酵素」と言うキーワード。酵素を補うことで若返り、の様な宣伝文句がよく見られますが、本当でしょうか?

【酵素とは何かを知ろう】

【酵素は触媒の働きを持つ】

まず「酵素」についてざっくり知っておきましょう。
酵素とは、「生体内外で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子」として定義されます。触媒と言う言葉を聞き慣れない方もいるかも知れませんが、「特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しない物」のことです。
化学反応に直接関与するのでは無く、必要なエネルギー量を減らして反応を進みやすくする、と言う効果があります。

小学校で行われる実験として、過酸化水素水(オキシドール)が水と酸素に分解する反応を進みやすくするする為に二酸化マンガンを加える、と言う物がありますが、この時に使われる二酸化マンガンは、化学反応の前後で変化しないので、触媒として働いています。

【生体内で働く酵素は蛋白質で出来ている】

酵素は、生物が物質を消化する段階から吸収・分布・代謝・排泄に至るまでのあらゆる化学反応に関与しているので、生命活動に欠かせません。ですから、酵素は生化学研究における一大分野であり、古くから研究対象になっています。

多くの生体内酵素は蛋白質を主成分として構成されており、生体内での生成や分布の特性、熱やpHの変化によって変性して活性を失う(失活)特徴は、一般的な蛋白質と同じです。

また酵素の中には、蛋白質の構造体のみでは活性がなく、活性発現に低分子の有機化合物を必要とする物もあり、酵素発現に必須の低分子有機化合物を補酵素(Coenzyme コエンザイム)と呼びます。ビタミンやミネラルの多くは補酵素として大切ですし、最近長寿サプリとして注目されているNMNもNADなどの補酵素と関わりがあります。

【酵素が関わる反応はかなり限定的】

そして酵素の特徴として、作用する物質(基質)がかなり限定的であり(基質特異性)、対象の化学反応だけを進行させること(反応選択性あるいは反応特異性)によって、生命の維持に必要な様々な化学反応に関わっています。

例えばですが、蛋白質を分解する酵素は、蛋白質以外のデンプン質や糖類、脂質などを分解することは出来ないので、他の酵素が必要になります。その為に体内では約5,000種以上の酵素が存在し、それぞれの役割を担っています。

【酵素の分類】

酵素には、上述の様な形で体内で作られる「体内酵素」と、食べ物から摂取する「体外酵素」の2つに分けられ、体内酵素は、食べ物の消化に関わる「消化酵素」と消化以外の化学反応に関わる「代謝酵素」に分類できます。

体外酵素は、主に食品中に含まれる酵素で、部分的に消化の手助けになる場合もありますが、消化器官内で胃酸や消化酵素によって不活化され分解されてしまいます。
アミノ酸に分解され体内に取り込まれた後は、蛋白質の材料として使われ、消化器官の働きをサポートし、体外酵素を含む食べ物を食べても、体内酵素として働くことはありません。

【酵素の生産量には限界がある!?】

酵素栄養学と言う理論があり、その理論においては、「体内酵素(消化酵素と代謝酵素)が1日で作られる量は決まっている」と言うことが大前提となっています。

この体内酵素生産力を、必要に応じて消化吸収と体内化学反応に振り分けて使っていると考え、食べ過ぎにより消化が必要になれば消化酵素が大量に使われ、通常量の消化酵素だけで消化が難しく、代謝酵素を作る力を犠牲にして、消化酵素を増産させる為、代謝酵素が減ってしまいます。代謝酵素が不足すると老廃物が蓄積され、疲労が溜まりやすく免疫力が低下し、病気にかかるリスクが高まります。

健康の為には、代謝酵素の割合が多い方が理想的なバランスとされており、その為に過度な飲食を避け、食物酵素を積極的に摂り、代謝酵素の割合が多い健康的な体を目指す、と言うのが酵素栄養学における考え方です。

この考え方に欠けているのは、「酵素は触媒として働き、化学反応前後で変化しない」と言うことです。慢性的な蛋白質不足や補酵素としてのビタミンやミネラルの不足で、十分な酵素が作れない様な場合には、消化吸収や体内代謝の速度がかなり低下することは起こり得ますし、適正な温度やpHでは無くなれば、触媒としての機能も無くなり変性し、分解されていくのですが、消化液内に含まれる消化酵素は「浪費され消耗する」と言うことは無いはずなんですね。

【「酵素を失活させない」食事やサプリは無意味なのか】

酵素を食事から摂ると言う考え方には、「加熱や酸処理を最小限にする」と言う生食や低温調理の物しか食べない、と言うローフードと言う考え方があります。

体外酵素は体内酵素の代わりにならないからその様な食事法は無意味として全否定する専門家もいます。しかし失活し消化された後はアミノ酸供給源になり、熱に弱いビタミン類を最大限に摂れる、と言う意味では、ローフードの考え方は悪くは無いと思います。また、脂溶性ビタミンは油脂類と一緒に摂ることで吸収率が高まるので、それを意識して油脂類をドレッシングの様に混ぜたり、油調理をする、と言う様な工夫も必要だと思います。

また、自前の消化酵素の働きを最大化する、と言う意味では、食事の際にゆっくりよく噛むことが大切です。極端ですが、ペースト状や液状になるまでしっかり噛むことで食べ物が細かくなり、接触面積が増え消化酵素が効率的に働くことが出来ます。

口に入れる前にスムージーの様にミキサーで細かくして食べたり飲んだりする方法もありますが、口の中を一瞬で通過してしまうので、唾液中の消化酵素が十分に働くことが出来ません。

時間をかけてよく噛むことで口の中の温度とpHで働く唾液内の消化酵素を十分に働かせた後に、酸性の胃内の消化酵素がペースト状の食べ物を分解し、アルカリ性の腸液で中和された後に腸内の消化酵素で更に処理される、と言う一連の消化が円滑に動く様になる、と言うことです。

また、食品に含まれる化学調味料や人工甘味料、保存料、着色料などの添加物が、体内の消化酵素をたくさん必要とする、と言うことも言われますが、個人的には老廃物や毒性物質を分解する肝臓に過剰な負担をかける、と言う側面の方が強い気がします。また、リン酸塩の様な多用されている添加物の場合、リン過剰に伴い骨などのカルシウムが溶出してしまう、と言う様な、ミネラルバランスを崩して不調の原因となることが知られていますので、そう言う意味で「過剰な添加物を避ける」と言うのは悪くは無いと思います。

また、胃酸で分解されにくく胃内環境下で最大の触媒能を発揮する様に設計された消化酵素剤やサプリメントを不調の際に一時的に使うことは否定はしません。
ただ、生物の体は外部からの助けが長期的にある場合、働かなくて良いと判断するので、自前の消化酵素が更に作られなくなり、消化酵素剤やサプリメントを使わないと十分な消化が出来ない様になってしまいますので、日頃から酵素材料の蛋白質を十分に摂るとともに、添加物の少ない食品をよく噛んで食べる、と言う努力も必要だと思います。

そして消化しきれない食べ物が大腸に行くと腸内細菌の餌になりますが、いわゆる悪玉菌と言われる細菌株は未消化物を好んで代謝して有害物質を作り出し不調の原因にも繋がります。
逆に食物繊維など人の消化酵素では分解出来ない物を好むのが、善玉菌と言われる細菌株ですので、自分の消化力に合わせた食事が大切だと言えます。

また、体の修復や代謝を高める為に、規則正しい睡眠を心掛けることも大切ですし、適度な運動や瞑想などで血流を良くすることも、代謝を促進し酵素の働きを最大化します。

最後に最近流行りの酵素ドリンクについても書いておきます。体外酵素は飲んでも体内酵素の代わりとはなり得ない、と言うのはご理解頂けたかと思いますが、製造過程の発酵時に、食材に含まれる食物繊維や蛋白質が細かく分解されているので、体内の消化酵素で改めて分解する必要がなく、栄養がそのまま吸収されやすいと言うことは言えます。

酵素ドリンクは野菜や果物、穀物などを発酵・熟成させたものが一般的ですが、添加物や糖分が含まれている場合が多く、日常的に摂取すると健康へ悪影響を及ぼすことがあります。そう言う意味では、無理に「酵素ドリンク」や「酵素サプリメント」を使うのでは無く、添加物や糖を使っていない、昔ながらの発酵食品や発酵調味料を食事に取り入れると言う方がより良いと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?