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Sonny Rollins – Brass / Trio (1962)

 『Brass / Trio』は、当時活動を休止していたSonny Rollinsの復帰作『The Bridge』と同時期に発表された1962年のアルバムだが、実際には4年前にメトロ・ジャズ・レーベルから出ていた『Sonny Rollins And The Big Brass』と同内容である。ピアノ・レスをはじめとした変則的なバンド編成で注目されていたRollinsの中でも本作は特に変わった一枚で、Ernie Wilkinsの指揮するビッグ・バンドと共演したA面、そしてHenry GrimesとCharles "Specs" Wrightからなるトリオ録音のB面からできている。
 力強いスイング・ジャズと研ぎすまされた少数編成が生むコントラストは、それだけでも驚きに値するものだが、いずれの演奏でもRollinsのサックスが際立っているおかげで『Brass / Trio』は文句なしに名盤の仲間入りを果たしている。「Love Is A Simple Thing」では、Rollinsのブロウから抑制の効いたメイン・テーマ、そしてRené Thomasの美しいギター・ソロまで、実に軽やかな流れで展開している。偉大な名曲「Who Cares」は、スイング・スタンダードとRollinsの個性が繰り広げる真っ向勝負といった様相だ。
 対するトリオだが、ラテン風の「What's My Name」や「If You Were The Only Girl In The World」におけるGrimesとWrightの機微にとんだリズムによって、静謐なプレイに徹しているというイメージを受けることはない。とはいえ、「Manhattan」の穏やかなアンサンブルや「Body & Soul」における圧倒的な無伴奏ソロはやはり鮮烈だ。