Dr_George_Sensei

一介の大学教員。

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最近の記事

「大学生のうちに~すべき」という呪縛から脱却しよう

大学教員という仕事柄、学生から「大学生のうちにすべきことは何ですか?」という質問をよく受けます。時期が時期だけに、これから入学を控えている新入生の皆さんも、この問いが少なからず頭にあるかもしれません。 でも、この質問を受けるたびに若干の違和感を覚えます。その理由は、その回答が、今の回答者の立場から遡及して「あれをしてよかった」(あるいは「あれをすべきだった」)というポジショントークにならざるを得ないからと考えるからです。 例えば私は大学教員をしていますが、それゆえに、「大

    • 1/2の大学生

      間もなく、2020年度に入学した大学生が卒業する。(留年とか休学してなければ)。 いつもこの時期は教員として感慨深いのだが、今年は特別な思いがある。なぜかというとこの年度に入学した学生は実質1/2しか大学生活がなかったからだ。 そう、その原因はコロナである。この年度に入学した学生は、入学初っ端からオンライン授業が丸々2年間続いた。一緒に授業を受けているのが誰かもわからず、キャンパスにも行けていないから〇〇大学の学生というアイデンティティも持てず、つまらないユーチューバーと

      • 聞くのが「しんどい」授業

        先日、ゼミが少し早く終わった後、学生が次の授業の教室になかなか行こうとしないので、「どうしたの?」と尋ねると、「次の授業がしんどい」とのこと。 少し時間があったので、そもそも「しんどい授業ってどんな授業なの?」と聞いた結果をX(旧:Twitter)に書いたら、共感する部分が多かったのか、それなりの反応がありました。(下記画像) リプライには上記の事柄に加えて、 配布した資料をそのまましゃべるだけ 雑談が一切ない フィラーが多い などの意見がありました。 多くの大

        • 自分に合う仕事の見つけ方

          質問箱やMondにそれなりの量の質問をいただくようになりましたが、学生からの質問でダントツで多いのがこの類の質問です。 私はキャリアコンサルタントでもないですし、一般的な就職活動すらしたことがないので、どうしてこういう質問をたくさん寄せてもらえるのかが良くわからないのが正直なところです。 でも多分、それだけ大学生に普遍的な悩みであること、また一般的に大学の教員は「趣味の延長線上で仕事をしている」ように見られるので、このような質問が多くなるのではと思います。 質問を頂く度

        「大学生のうちに~すべき」という呪縛から脱却しよう

          ゼミ選考、雑感ー「○○に興味がある」って本当?

          今年もゼミ選考の季節がやってまいりました。 大学によって、何年生からゼミが始まるかは違いますし、選考の方法も異なるでしょうから、一般的なことは言えませんが、私の経験から、ゼミ選考を通して考えたことを備忘録的に書いておきたいと思います。(Twitter【現X】にも同様の趣旨のことを書きましたが、その補足です) そもそも、学生がゼミを選ぶ時の基準って何だろうと考えると、おおむね次のようなことだと思います。 領域(何が学べるか) 教員との相性 課題は厳しくないか(楽に単位

          ゼミ選考、雑感ー「○○に興味がある」って本当?

          本を読めという時の本の種類について

          わたしは仕事柄、本を読むことを勧めています。 そうすると、必ずいただく質問が以下の画像のような質問です。 この質問にお答えする前に、私がなぜ読書を勧めるか、その理由は大きく分けて3つあります。①ものの見方や考え方が広がること、②語彙が増えること、③ストレス軽減になること、です。 ①は説明するまでもありませんね。他者の異なるものの見方や考え方に触れることで、自身の視野が広がります。読書を通して得られるその経験によって、時に人生観が丸ごと変わることすらあります。 ②について

          本を読めという時の本の種類について

          大学(新入)生が読むべき本(リストあり)

          前回の更新からだいぶ時間が経ってしまいました。 皆さんは意外に思われるかもしれませんが、大学教員の夏休みは、採点、執筆、研究費獲得のための申請書の作成、卒論を含む学生指導など、結構忙しいのです(もちろんかなり個人差はありますが)。 やっと一息ついたので、ずっと書き残しておきたかったことを書こうと思います。以前、このような記事を書いたのですが、その続きです。 わたしは学生と話す機会があると、今どんな本を読んでいますか?とよく聞きます。いろいろと話を聞くよりも、本の名前を挙げ

          大学(新入)生が読むべき本(リストあり)

          大学の授業が「つまらない」理由

          学生のみなさんから「質問箱」でいただく質問の中には、少なくない割合で、大学の授業に対する「つまらなさ」に関するものが含まれています(下記はその例) 大学の授業が「つまらない」理由の大半は、もちろん教員の側にあります。大学の教壇に立っている人の多くは、研究をしてきてその結果として、大学教員という職に就いた人であって、教師になるための特別なトレーニングを受けてきたわけではありません。だからほとんどすべての教員は授業を我流でやっているような状態なので、「おもしろい」授業をしようと

          大学の授業が「つまらない」理由

          学んだことをアウトプットする機会を如何につくるか

          この間、更新がだいぶ途絶えてしまいました。4月は大学教員にとって繁忙期の一つで、目の前の仕事(オリエンテーションやら授業準備やら)に追われてしまっていました。GWになってやっと落ち着いていろいろと物事を考えることができるようになっています。 (昨今はGWでもお構いなしに授業がある大学も少なくないようですが) さて、喜び勇んで大学に入学した新入生の皆さん、授業が始まって1ヶ月が経ちましたがいかがでしょうか?大学の授業って意外とつまらないなー、授業には出席しているけどなんだか学

          学んだことをアウトプットする機会を如何につくるか

          大学院に行くか迷っています。

          職業柄、画像のような質問(大学院に行くか迷っている)をよく受けます。 そのたびにどう回答してよいかわからず、結果的にスルーしてしまっています。(ごめなさい) なぜどう回答してよいかわからないかというと、進学の目的、学んでいる学問の分野、国立か私立か、国内か海外かなどの組み合わせによって回答内容が大きく変わるからです。つまり、質問にあるような内容では、情報量が少なすぎてどう回答したらよいのかわからないのです。 ですのでここでは、進学の目的にフォーカスして、さらにそれを「学び

          大学院に行くか迷っています。

          今年の卒業生とコロナの影響ー卒業によせて

          卒業式のシーズンです。本年度、大学を卒業される皆様、本当におめでとうございます。新型コロナのパンデミックもようやく収束の兆しが見えてきて、各大学では、これまでの通り集まって挙式をしていることでしょう。 さて、卒業生の皆さんは一様に「コロナに振り回された大学生活だった」という感想をお持ちのことかと思います。ただ、コロナの影響は入学した年度によって若干異なるのでは、と式に出ながら思ったので、備忘録としてここに書いておきたいと思います。 コロナの影響によって、大学生活が一変した

          今年の卒業生とコロナの影響ー卒業によせて

          「ぼっち」のススメ

          先日、こんなツイートをしたら結構な反応がありました。誤解をされているむきもあるので、補足的に何が言いたかったのか書いておきたいと思います。 入試期間も終わり、4月からの大学に入る皆さんは、期待と不安が入り混じった気持ちでいることと思います。 期待の中身は人それぞれでしょうが、不安の中身は似通っていて、その大きなものの一つは、「知り合い(友達)ができるかな」でしょう。確かに付属校でもない限り、知り合いがいて大学に入学するケースはまれですから、この種の不安はよく理解できます。

          「ぼっち」のススメ

          本。借りるべきか買うべきか、それが問題だ

          皆さんは本を読むとき、借りて読むでしょうか?それとも買って読むでしょうか? 私が関わってる大学生の範囲で言えば、定期的に本を「買って」読んでいる人は稀です。その理由は2つあって、一つは単純に「高いから」。もう一つは「所有することの意味がわからないから」ではないかと思います。 本は高いか? 確かに本はいい値段がします。学術書や教科書なんかは3,000円を超えることがざらですから、学生が買うことに躊躇することもわかる気がします。ただある物に対して、その値段が高いと感じるか安

          本。借りるべきか買うべきか、それが問題だ

          授業評価アンケート雑感

          いつのころからか、大学では「授業評価アンケート」を学生に答えてもらうようになりました。この授業の良かった点、悪かった点を学生が評価するわけですね。 大学が学生を選ぶ時代はとうの昔に終わってしまい、今や学生が大学を選ぶ時代ですから、その意味でも顧客(学生)声を無視するわけにはいかないでしょうし、そうあるべきだと私も思います。(ちなみに私はぼろくそに書かれたことは、幸いにもありません) とはいえ、授業評価アンケートによって授業内容が改善されることはあまり期待できない、というの

          授業評価アンケート雑感

          大学選びで重視したほうがよいこと

          2022年時点で大学は800弱あるようです。この中から何を重視して選ぶのか。たしかに難しい問題ですね。 一般的に大学を選ぶときの基準を箇条書きにすると 知名度 偏差値 学びたいことが学べる(学部がある) 就職率(先) 資格が取れる などが考えられます。そのほかに、学費、通いやすさ(立地)、キャンパスの雰囲気などもあるでしょう。もう少し詳しい人ならば、外部資金の獲得状況とか、ST比(教員一人当たりの学生数)なども挙げるかもしれません。 この中で何を重視するべきか

          大学選びで重視したほうがよいこと

          「ガクチカ」をめぐって

          学生時代に力を入れたことを「ガクチカ」と呼ぶようになったのはいつの頃からでしょうか? もちろん、面接においてこの質問自体は昔からされてきたわけですが、「ガクチカ」という名前が与えられたことによって、学生がとりわけ意識するようになってきたように思います。 大学時代にすべきことはなんですか?という質問をよくされますが、その背景にもこの「ガクチカ」が少なからず意識されているように感じます。 ただ「ガクチカ」をつくろうと思って何かをして、それを「ガクチカ」として面接で話したとし

          「ガクチカ」をめぐって