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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病…

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元消化器外科医・病院経営再建奮闘医 「病院で働くということ」By Dr.エリプス 病院で働く意義・病院運営・人事労務について 現場・管理者 両方の立場でわかりやすく説明します。

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  • 「病院で働く」ということ・・・ Dr エリプス

    「病院で働く」こととはどういうことか。 外科医として25年以上を経過し、これから職業人として残された時間にできることはなんだろう、とふと考えました。 そこで、臨床の現場で実際に働いている人間が、どんなことを感じ、なにに楽しさや苦悩を感じ、どのように患者さんとコミュニケーションをとり、病院という組織で周囲と関係を気付きながら、どんなふうに働いているのかを、飾らない言葉で世間に発してみようと思い立ちました。 病院に勤務している医療関係者やこれから医療機関で働くことを目指して勉強している学生さん、病院受診をされる患者様、ただただ興味本位の方まで、「医者って(外科医って)こんなこと考えているんだ」「病院の仕事ってこんな感じか~」「うちの会社とはちがうなあ」なんて思っていただけるような内容にしていければと考えています。 週1回くらいのペースで更新していきます。 是非ご覧いただければ幸いです。

記事一覧

【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

 自分が小学生であった40年以上前のこと、任天堂から初代ファミリーコンピューターが発売された。その後、スーパーファミコンが発売されて大ヒット。多くの子供たちがゲー…

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医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

 医師のキャリアアップについて、前回は研修医~卒後5年目くらいまでの期間について書きました。今回は専攻医といわれる時期の後半(卒後5年目前後)から15年目くらいまで…

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10日前
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【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

 医師の医療現場によるパワハラ行為はパワハラという言葉が世の中に診とする前からあったと聞いています。医療現場における「働き方改革」と比べると影が薄いですが、とて…

Dr.エリプス
2週間前
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【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

 もともと眠りが浅い体質からなのか、夜間の電話呼び出しが常時あるからなのか、夜中であっても物音にすぐに反応できます。夜間の地震にはほぼ気付くし、携帯の呼び出し音…

Dr.エリプス
3週間前
3

医師との会話で大切なことを教えます

「お医者さんと話をするのは緊張する、何を聞いたらいいか分からない」 という声をよく聞きます。  間違ったことは聞いちゃいけない、素人が勝手な判断はしてはいけない、…

Dr.エリプス
1か月前
4

【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

 だれでもつらい時、しんどい時はあります。イライラもするし、むかつきます。でも自分の心の中はどうであれ、それを隠して無理矢理にでも笑顔でいる方が結果的に周りも自…

Dr.エリプス
1か月前
3

【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

 外科医が最も苦しいと感じる時、それは予想外の合併症が起こった時なのではないでしょうか。  想定通りに行かないことは外科医という診療科を選んだ医師は少なからず経…

Dr.エリプス
1か月前
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医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

 医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床医としての経験を積んでいくこ…

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1か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

民間病院にありがちであるが、病床稼働率が下がってくると経営陣がソワソワし始める。経営サイドから現場に向け、「入院患者を増やして」だの、「救急車断るな」などと指令…

Dr.エリプス
1か月前
4

「病院で働くということ」・・・Vol.6 医師に対する評価

医師は病院内外で、様々な方法・角度から評価を受けます。 患者さんやその家族はもちろん、ともに働くコメディカルスタッフ、雇用主である経営者、同僚・上司(指導医)・…

Dr.エリプス
1か月前
4

「病院で働くということ」・・・Vol.5:理解できない相手と

病院内で働いていると、どうしても理解できない考えや行動をする人がいます。 なぜそこでそんなことを言う? なぜそういう振る舞いをする?  などなど。 多くはその…

Dr.エリプス
1か月前
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なくなっていい病院なんてない。

病院経営を取り巻く環境はは依然厳しい状況が続いています。各種調査では全国の病院の7割は赤字経営と言われており、地方・公立病院ではその傾向が顕著です。 日本の病院の…

Dr.エリプス
2か月前
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「病院で働くということ」・・・Vol.4:第一印象は大事

今でも患者さんとの初めての対面は非常に緊張しますし、治療を受けられる患者さんはそれ以上だと思います。 「初めまして。△△科の○○です。よろしくお願いします。」と…

Dr.エリプス
2か月前
3

病院の理念と方向性

 病院はその規模・設立母体にかかわらずにかかわらず、地域の公共財だと私自身は考えています。質の高い診療を効率よく行い、病院の収益を上げていくことは病院運営におい…

Dr.エリプス
2か月前
3

「病院で働くということ」・・・Vol.3:医師の当直業務

 医者になってかれこれ25年以上、月2回以上の当直業務がずっとありました。30歳代の最も多いときで月8-9回、アラフィフと言われるようになった現在でも月に3-4回は当直…

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2か月前
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限られた医療資源の中で

 病院は医療を提供する場ではありますが、すべての医療機関が大規模総合病院のような検査・診療ができるわけではありません。病床数や診療科のみならず設置された地域特性…

Dr.エリプス
2か月前
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【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

【病院で働くということ】・・・Vol.12:ゲームと鏡視下手術

 自分が小学生であった40年以上前のこと、任天堂から初代ファミリーコンピューターが発売された。その後、スーパーファミコンが発売されて大ヒット。多くの子供たちがゲームに夢中になっている中で、自分はあまりはまらなかった。親にねだっても買ってくれなかったこともあるが、友達に行けば遊ぶことができたし、それなりに楽しかった思い出はあるのだが、実はそれほど夢中になった記憶がない。

 大学を卒業し研修医にな

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医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

医師のキャリアアップを考える(専攻医~卒後15年目くらいまで)

 医師のキャリアアップについて、前回は研修医~卒後5年目くらいまでの期間について書きました。今回は専攻医といわれる時期の後半(卒後5年目前後)から15年目くらいまでの医師としてのキャリアアップの考え方を書きたいと思います。

 医師として臨床経験5年目くらいになると、専門とする領域の疾患は一通り経験し、早ければ専門医取得が視野に入ってきます。診療科によっては「一人前」な臨床医として周囲から認めら

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【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

【病院で働くということ】・・・Vol.11:医師によるパワハラの土壌

 医師の医療現場によるパワハラ行為はパワハラという言葉が世の中に診とする前からあったと聞いています。医療現場における「働き方改革」と比べると影が薄いですが、とても大きな問題です。

 以前のブログでも書きましたが、多くの職種が働く病院という組織は、事業の形態としては「業務集約型」事業です。
 一方で売上である診療報酬の大半は、医師が行う診療行為により発生しているという現実があります。
 そこに医師

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【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

【病院で働くということ】・・・Vol.10:寝起きが良いことは医療者としての才能

 もともと眠りが浅い体質からなのか、夜間の電話呼び出しが常時あるからなのか、夜中であっても物音にすぐに反応できます。夜間の地震にはほぼ気付くし、携帯の呼び出し音は2コール目には出られます(携帯を取り落として出られなくなることはあるけど)。

「え、先生起きてたんですか?」

と電話越しに言われるくらい普通に電話に出るので相手はびっくりするらしいです。

 まあ、あくまでも返事をはっきりしているだけ

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医師との会話で大切なことを教えます

医師との会話で大切なことを教えます

「お医者さんと話をするのは緊張する、何を聞いたらいいか分からない」
という声をよく聞きます。
 間違ったことは聞いちゃいけない、素人が勝手な判断はしてはいけない、というプレッシャーもあるかもしれなません。

 医師も人間なので、疲れている時も機嫌が良くないこともあります。でも基本的に目の前の患者の訴えはきちんと聞く意志をもっているので、会話の冒頭から患者さんやご家族のお話を否定することはないと思い

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【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

【病院で働くということ】・・・Vol.9:つらい時ほど笑顔で

 だれでもつらい時、しんどい時はあります。イライラもするし、むかつきます。でも自分の心の中はどうであれ、それを隠して無理矢理にでも笑顔でいる方が結果的に周りも自分自身も気分が良くなることに気がつきました。

 これまで私も「先生の元気そうな笑顔につらいときに救われました」と言われたこともあります(自分としては、結構しんどかった時期もありましたけれど)。

 病院を受診される患者さんは、こちらの

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【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

【病院で働くということ】・・・Vol.8:外科医が苦しむとき

 外科医が最も苦しいと感じる時、それは予想外の合併症が起こった時なのではないでしょうか。
 想定通りに行かないことは外科医という診療科を選んだ医師は少なからず経験するはずですが、当初の想定以上の患者さんの病状悪化や、患者本人・ご家族からの結果が良くないことに対する叱責は精神的には非常に堪えます。

 もちろん治療前には様々なリスクを想定し、患者さんやご家族へその説明も行い、十分理解をしてもらってか

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医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

医師のキャリアアップを考える(研修医~卒後5年目くらいまで)

 医師は医学部を卒業して国家試験に合格し、臨床研修医になった瞬間から医師としてのキャリア形成が始まります。ここでいうキャリアとは臨床医としての経験を積んでいくことを指し、研究・学位取得などのアカデミックキャリアのことではありません(こちらの話は別の機会にしたいと思います)。

 まず医師になって5年間は通常研修医・専攻医として臨床医としての研鑽を積むことになります。ここで大切なことは、とにかくた

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【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

【病院で働くということ】・・・Vol.7:病床稼働率を気にする経営者

民間病院にありがちであるが、病床稼働率が下がってくると経営陣がソワソワし始める。経営サイドから現場に向け、「入院患者を増やして」だの、「救急車断るな」などと指令が出ることがある。

現場の言い分としては、ベッド状況に関わらず緊急の患者は受け入れているし、そもそも病床稼働率に合わせて入院の適応基準は変わらないということ。

ベッド稼働率が病院経営に大きなインパクトを与えることは理解するが、空床を目

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「病院で働くということ」・・・Vol.6 医師に対する評価

「病院で働くということ」・・・Vol.6 医師に対する評価

医師は病院内外で、様々な方法・角度から評価を受けます。
患者さんやその家族はもちろん、ともに働くコメディカルスタッフ、雇用主である経営者、同僚・上司(指導医)・部下である医師などからです。

その評価はかならずしも一致するわけではなく、
「あの先生は患者さんの受けはいいのに、看護師には嫌われている」とか、「あの先生は経営者からは高評価なのに、現場スタッフには不人気」などさまざまな形で評価されていま

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「病院で働くということ」・・・Vol.5:理解できない相手と

「病院で働くということ」・・・Vol.5:理解できない相手と

病院内で働いていると、どうしても理解できない考えや行動をする人がいます。

なぜそこでそんなことを言う?
なぜそういう振る舞いをする? 

などなど。

多くはその人の行動が自分の予想・期待通りではないことに起因していると思いますが、やはり理解不能は人との関係はストレスですよね。

その人の置かれた立場や社会的背景やこれまでの言動から、
「まあそういう人なんだろうなあ」
という想像がつけば

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なくなっていい病院なんてない。

なくなっていい病院なんてない。

病院経営を取り巻く環境はは依然厳しい状況が続いています。各種調査では全国の病院の7割は赤字経営と言われており、地方・公立病院ではその傾向が顕著です。
日本の病院の約7割、診療所では8割が民間(個人・医療法人)であり、経営悪化は即事業停止、すなわち閉院につながります。2021年の医療機関の休廃業・解散・倒産件数は600件に上り、2016年以降も増え続けています(帝国データバンクより)。
医療機関が診

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「病院で働くということ」・・・Vol.4:第一印象は大事

「病院で働くということ」・・・Vol.4:第一印象は大事

今でも患者さんとの初めての対面は非常に緊張しますし、治療を受けられる患者さんはそれ以上だと思います。
「初めまして。△△科の○○です。よろしくお願いします。」と名札を相手に見えるようにして挨拶をしています。なるべく柔らかい印象で、威圧的にならないように・・・。
以前聞いた話では、宿泊するホテルの印象は到着時のフロントの対応で8-9割は決まる、とのこと。これから治療を受けようかどうしようか、不安を抱

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病院の理念と方向性

病院の理念と方向性

 病院はその規模・設立母体にかかわらずにかかわらず、地域の公共財だと私自身は考えています。質の高い診療を効率よく行い、病院の収益を上げていくことは病院運営において必要なことではありますが、もっとも大切なことはその地域でどのような医療需要があり、病院としてどのようにそれに応えていくのか、を常に考えていくことです。

 周囲の医療機関の診療体制を十分に検討した上で、自院の強みを生かして差別化を図り、別

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「病院で働くということ」・・・Vol.3:医師の当直業務

「病院で働くということ」・・・Vol.3:医師の当直業務

 医者になってかれこれ25年以上、月2回以上の当直業務がずっとありました。30歳代の最も多いときで月8-9回、アラフィフと言われるようになった現在でも月に3-4回は当直として病院での業務にあたっています。

 医療者以外の方には「病院に仕事で泊まるって大変ですね。」「全然眠れないんですか?」とよく言われますが、もはやルーチンワーク化していて大変かどうかは自分ではよく分かりません。当直によってはほ

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限られた医療資源の中で

限られた医療資源の中で

 病院は医療を提供する場ではありますが、すべての医療機関が大規模総合病院のような検査・診療ができるわけではありません。病床数や診療科のみならず設置された地域特性や設立母体によって必要とされる医療や質は変わってきます。

 必要なことはその病院が地域で求められていることを正確に把握し、効率的に限られたマンパワーと設備・施設を活用して患者さんにとってその時点で最適な医療を提供することです。その最適な

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