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【03 青山】 サウナでルーティン

1日の疲れを持ち越さない。

疲れを落とすルーテインはいくつもあるが、
気に入っている一つがサウナだ。

今日まで一緒に過ごした恭子との週末を終えると、
明日は月曜なのだ。

女と一緒にいる事も、
一人でいる事も一緒なのは、
生きていること。

全てを清算したい。

サウナはもっぱら大衆浴場がいい。

プライベートサウナもいいが、
やはり、日本人のDNAがそうさせるのか、
雑多な人が出入りする銭湯が好ましい。

三人まで、とサウナの入浴制限があるのもいい。

選ばれるのは、サウナではなく
いつだって人の方なのだ。

サウナが人を選ぶ。

今日も恭子の家から我が家への帰り道にある
小さな銭湯へ寄る。

これはもうルーティンなのだろうな。

浴場へ着くなり体を洗った後、
浴槽に身を沈める事はしない。
そのままサウナへと行くのだ。

ボディーソルトを塗り、
サウナ待ちの列に並ぶ。
持ち込みは禁止されているので、
入る前に塗る。


前の待ち人が減るたび、
サウナとの再会が
楽しみになる。

恭子は美人で良い女だ。
週末はいつもこの女といる事が多い。

けれど、一緒になることはない、
それも直感がそう伝えている。

恭子よりも、
俺はこのサウナに
会いに来ているのだろう。

温めのサウナは90度ほど。

15分ほど入り、
水風呂へ飛び込む。

痺れるような冷たさを
感じ始めると
外気浴へ出る。

小さい銭湯ながら、
露天もつくこの場所は、
都心の中にあるオアシスだ。

5〜7分くらいして
サウナに戻ると
ちょうど列が途切れて
先ほど俺が譲った
サウナの客が俺にまた譲る。

輪廻転生ともいうべき
このライフオブサークルに
俺は組み込まれ、
俺はサウナに選ばれる事となる。

そうして3回繰り返すと
週末の疲れ、余計な雑念、ありとあらゆるものを
置き去りにしてくれる。

入れ替わりサイクルが
あってしまった
俺より幾分若い男が
少し恥ずかしそうに
また俺に席を譲り出ていく。

俺にもそんな時があったんだろうな。

無垢な気持ちで風呂から出て、
番頭にあるスタンドから
CHILLOUTを購入し喉に流す。



これでまた一つ業を背負った気がしたが、
その初めがCHILLOUTでよかったと思う瞬間だ。

ゆっくりとした時間を楽しんで、
銭湯から出ようとしたとき、
恭子があの若い男と談笑しているのが見えた。

そうか、それもいいな。

そう特に何も感じずその店を後にする事ができたのは、
きっとそれもルーティンだからなのだろう。

俺はまたいつもの家路で
明日へと進んだ。


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