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【出来た嫁とは】 大河ドラマ 「光る君へ」 第13回

さすが殿が見込んだ妻でございましょう

パイプオルガンの荘厳な音色と共に始まった今回は、出来た嫁祭りな回でもありました。「どうする家康」もそうでしたが、今作も男性を支える女性の姿が数多く描かれています。今作は主人公も女性なので、その色が余計に強く感じられるのかも知れません。

上記の高階貴子さんも出来た嫁なら、彼女の娘定子ちゃんも出来た女性。「おかみの好きなもの、全部好きになります」とあっという間に一条天皇の心を鷲掴み。「何が好き?」と問われて、いの一番に「母上」と答えるマザコン殿御を丸っと愛する懐の深さ。流石定子様。中の人の充希ちゃんが可愛すぎて悶絶しました。

老いた父も愛おしゅうございます

兼家の老いをただ憂うだけの道長に対し、こちらもまた出来た妻の倫子様は、義父に「お優しくしてあげてください」と夫に宣う。出来た嫁すぎて泣く。

彰子さんがもう生まれて大きくおなりなことにびっくりしましたが、母となって安定感が一層増したように感じます。

その道長は、しれっと明子女王も娶り、こちらもめでたくご懐妊。自らの懐妊を利用して、憎き兼家の持ち物をゲットし、呪詛を開始する明子女王の怨念たるや。陰陽道なんぞに頼りません。あたくしは自らの力で敵討を果たしてみせましょう、という気概。ああ、その力を別の方向に使えたなら。

それに対し、男性の戦いはなんとちまちまとしていることでしょう。「つくせよ俺に」と公任を脅す道兼といい、自分は死に腐れて土に帰るが「家は生き続ける」という兼家。視座の違いが浮き彫りになっておりました。

漢詩ですから、殿御からのものだと思っておきますわ

久しぶりに倫子サロンに顔を出したまひろは、4年前の庚申待の夜の顛末を知ります。自分には文を一度も送ってくれなかった夫が、文を交わした相手がいたことがちょっぴりコンプレックスな模様の倫子様。でも、見つけた「女性の手」らしい文は、自分では読み解けない漢詩です。

内容が陶淵明(とうしんめい)の「帰去来辞」であると知ったところで、倫子様はさほどその内容に興味も無さそう。まひろの「志」を表した漢詩ですから、色恋の匂いは一切ない為、興味を持たれてもセーフっちゃセーフではありますが。

みずから求めて精神を肉体の奴隷と化してしまっているのに、ひとりくよくよと嘆き悲しんだところで、どうなるものでもない。過ぎ去ったことは、今さら悔んでもしかたない。これからのことは心掛けひとつでどうにでもなる。人生の進路をたしかに踏み間違えたが、まだそれほど遠くへは来ていない。

岩波文庫「陶淵明全集(下)より」

和歌は心情を、漢詩は志を示すものとしているけれど、その志を示すのが女性であるまひろ。ジェンダーを逆にして描いていることの秀逸さを改めて感じた回でした。

明日も良い日に。


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