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AI時代のユーザ体験は「AAAA」モデルで考えよう

こんにちは、Doryと申します!
AlgomaticというAIスタートアップにて、LLM(大規模言語モデル)を使ったB2Bプロダクトやサービスを提供しています。

2022年末頃からLLMがプロダクト開発の現場にも定着し始めているなか「AIネイティブなプロダクトを作ろう!」「AIを使う意味がある体験にフォーカスしよう!」といったフレーズはよく耳にします。
けれども、"AIらしいUX"が具体的に何を指すのかについては、現在のところ共通の見解があるわけではありません。
そこで本記事では「AI時代ならではの体験設計ってなんだろう?」ということを、前職GoodpatchやAlgomaticでの私自身の経験を交えつつ整理しています。

【この記事には何が書いてある?】
・AIサービスの体験設計フレームワークとして「AAAA」モデルを提唱します、ということ
「AAAA」は「Automation(自動化)」「Advice(助言)」「Augment(強化)」「Agent(代行)」から構成されていること
・ユーザが求める便益とタスク特性によって「AAAA」のいずれが最適かは異なってくること

【この記事の想定読者】
・AIサービスの体験設計に関心があるUIデザイナーUXデザイナーの方
・AIサービスを手掛けているプロダクトマネージャーエンジニアの方
 ※ とくにB2Bサービスに関わっている方を想定しています。

本記事の内容は、AIサービスにおけるUXデザインについて論じた先達である以下2つのドキュメントから多大なるインスピレーションを受けています。興味がある方は、ぜひこちらもお読みください!
People + AI Guidebook(Google)
ツールからエージェントへ。弱いAIのデザイン - 人工知能時代のインタフェース設計論(クリストファー・ノーセル著, 武舎広幸・武舎るみ訳)

1.「AAAA」モデル:AI×体験設計のフレームワーク

結論から述べますと、あらゆるAIサービスはユーザ体験の観点から、以下の4つに大別することが可能だと、私は考えています。

  • Automation:タスクを自動化するAI

  • Advice:ユーザのタスクを評価するAI

  • Augment:ユーザの能力を強化するAI

  • Agent:タスクを代行するAI

AutomationAdviceAugmentAgentの4つは、
ユーザとAIとのタッチポイント
タスクの実行主体はユーザか?AIか?
の2軸によって分類が可能です。

1-1. Automation:自動化する

自動化(Automation)は、タスクの始めから終わりまでをAIが完全に遂行するパターンです。
ポイントは、ユーザによる介入が最小限に抑えられているということです。ユーザとAIとのタッチポイントは基本的に「開始時」「終了時」に限定されており、ユーザからの命令がトリガーとなりタスクの自動実行が開始されます。

自動化(Automation)」型サービスの代表例は以下のようなものがあげられます。

  • 日本語を入力すると自動で最適な英訳を出力してくれる「DeepL

DeepL
  • テキスト入力と条件指定をするだけで歌詞付きの楽曲が自動生成されるSuno AI」をはじめとした全自動作曲ツール


1-2. Advice:助言する

助言(Advice)は、人間によるタスクの実行結果に対して、スーパーバイザーとしてのAIがフィードバック・評価するパターンです。
ポイントは、タスクの主体はあくまでユーザ自身であり、タスクそのものへAIは介入しないということです。ゆえに、タッチポイントは基本的に「タスクの終了後」となり、ユーザのタスク終了がトリガーとなってAIによるフィードバックが開始されます。

助言(Advice)」の代表例としては、契約書の内容をAIがチェックし修正案を提示してくれる「リーガルフォース」などが挙げられます。

契約書レビューツールの「リーガルフォース」※画像は公式LPよりお借りしました


1-3. Augment:ユーザを強化する

強化(Augment)は、ユーザとAIがインタラクションを続け、"共同作業"をしながらゴールに近づいていくパターンです。いわゆるコパイロット(Co-pilot)体験はこれに該当します。
ユーザの能力を最大まで引き出すことが目的となっており、ユーザとAIとのインタラクションが非常に活発に行われていることが特徴と言えます。
また、ユーザの明示的なトリガーがなくとも、AIの側からユーザに対してフィードバックや提案が頻繁に行われることも「強化(Augment)」のパターンによく見られる傾向です。

「強化(Augment)」型のサービスの代表例としては以下のようなものが該当します。

  • 関連するコードやライブラリの情報をもとに、最適なコードを生成し補完してくれる「GitHub Copilot

  • 下書きをもとにイラストをインタラクティブに生成してくれる「Akuma



1-4. Agent:代行する

代行(Agent)は、AIが与えられた命令や周囲の状況をもとに段取りを考えながら、自律的に与えられたタスクをこなしていくパターンです。誤解を恐れずに言えば「人が細かく指示を出さなくても、自分でやることを考えてタスクをこなしてくれる」のがエージェントです。

恐らく「自動化」「助言」「強化」に比べて耳馴染みがないかとは思いますが、昨年4月ごろからのLLM Agentブームによって注目を浴びている概念です。(もしLLM Agentについてご存知でない方は、下記の記事や西見さんの書籍をぜひお読みください!)

ポイントは、タスクの進行状況に応じて、AIからユーザに対して確認やフィードバックなどのインタラクションが適宜行われるという点です。タッチポイントの数が最小化される「自動化」のパターンと、タッチポイント数が最大化される「強化」のパターンの中間のような位置づけと言えます。

適宜ユーザからの指示、設定、フィードバックを受けながら、画像生成・コード実行・文章検索といった各種外部ツールを使いこなすChatGPTは、
「代行(Agent)」型の代表例と言えるでしょう。

1-5. 「AAAA」を比較する

ここまで説明してきた「Automation」「Advice」「Augment」「Agent」の4つの頭文字をとり、私は「AAAA」モデルとして勝手に提唱しています。
それぞれの特徴を表にまとめると以下のようになるかと思います。

💡これらはAIサービスによく見られるパターンをカテゴライズしたものであり、MECEな定義(漏れ/ダブりのない定義)ではありません。複数のカテゴリーに跨がるケースも多々あるかと思います。

2. 「AAAA」をどう使い分けるべきか?

AI時代における体験設計のポイントは「自社サービスの顧客は"AAAA"のうち、どの体験を求めているんだろう?」という点に尽きるかと思います。
なぜならば「よかれと思って自動化したが、ユーザからすると自動化は必要なかった…」「ユーザを能力を強化するツールを作ったが、真に求められているのは助言だった…」といったケースが往々にして存在するからです。

経験則から言えば、それぞれ以下のようなケースにおいて 「AAAA」を使い分けることが望ましいと考えています。

2-1. Automation(自動化)が望ましいケース

  • タスクが人間にとって危険・有害である場合

    • (例)ショッキングな画像を分類する

  • タスクが人間にとって退屈・面倒である場合

    • (例)ファイルが更新されるごとにテストを実行する

  • タスクの実行速度が価値となる場合

    • (例)4000行のスプレッドシートをX秒以内に処理する

  • 人間が行うとミスや誤りが発生しやすい場合

    • (例)スペルミスや表記ゆれを大量の文の中から機械的にチェックする

2-2. Advice(助言)が望ましいケース

  • ユーザによる内省が必要な場合
    (例)答案のどこが誤りだったかを指摘する

  • タスク結果の責任を人間に帰属させたい場合
    (例)治療行為の要否を決定する

2-3. Augment(強化)が望ましいケース

  • ユーザにとってタスクのプロセス自体が楽しいものである場合

    • (例)成果物の品質でなく、過程の楽しさが重要な創像的タスク

  • タスクへの没入状態(いわゆる"フロー状態")を引き出したい場合

    • (例)コメントアウトをもとにコードブロックを生成する

  • リアルタイムでユーザによる意思決定やフィードバックが必要な場合

    • (例)ライブイベント中に適切なBGMを設定する

2-4. Agent(代行)が望ましいケース

  • 実行するごとに前提条件・周辺状況が変化するタスクを省力化したい場合

    • (例)都度異なる形式のJSONデータを処理・分析する

  • 、タスクに必要な知識や能力をユーザが持たない場合

    • (例)統計学の初学者がカイ二乗検定を行う

  • 即時性よりもタスク結果の品質が優先される場合

    • (例)目的にあわせた市場分析レポートを作成する

3. 「AAAA」をミックスする

もちろん、1つのサービスやプロダクトの中に「自動化」「助言」「強化」「代行」の各要素が共存していることはあります。なぜならば、タスクの特性とユーザの状況によって、解決すべき方法は大きく異なるからです。

ここでは、LLM搭載型コードエディターのCursorを題材に考えを深めてみます。

Cursorには、プログラミングをサポートする様々な機能が搭載されていますが、機能により提供している体験は大きく異なります。

Cursor: Command+K(コード生成機能)

  • 複数の値を与えると平均値を算出する関数」などと自然言語を入力すると、その条件に合わせてコードブロックが自動生成される機能

  • ユーザによる命令がトリガーになり、AIが主体となり全自動でタスクが行われるという点で「自動化(Automation)」に近い体験と言えます。

Cursor: Debug with AI(チャットでのデバッグ)

  • ターミナルでコードのエラーが発生した際に、AIが試行錯誤しながら原因を特定し、修正案を提示する機能。ユーザは修正案を受け入れるか否かなどをチャットで伝達。

  • ユーザによる操作がトリガーとなり、AI側が試行錯誤を開始すること、そして最終的な意思決定はユーザに委ねられているという点で「Agent(代行)」に近い体験です。

GitHub Copilot: コード補完

興味深いのは、サービスの設計思想が異なれば、似た機能でも体験設計は大きく異なるという点です。

AIコードエディタのGitHub Copiltでは、コードを書き始めるか、もしくは作成したいコードをコメントアウトで記述することで、GitHub Copilotがコードの続きを補完してくれます。

ユーザからシステムへの明示的なトリガー(命令)が存在せず、ユーザとシステムが常にインタラクションをし続けながらゴールに向かうという意味で「Augment(強化)」に近い体験ではないでしょうか。
同じ領域のサービスでも、CursorとGitHub Copilotでここまで体験が異なるのはとても面白いですね。

なお、ある機能やサービスが「自動化」「助言」「強化」「代行」のいずれに該当するかは、一義的に決まるものではありません。

たとえば、受益者が誰であるかによっても、該当するカテゴリは異なります。ここでは契約書レビューツールを例に考えてみます。弁護士や法務担当者の視点からすれば「これまで人力で行っていたレビュー業務が自動化される」という点で、「Automation(自動化)」に分類されます。一方、契約書をレビューされるユーザの視点からは「Advice(助言)」に該当する体験となるでしょう。

重要なのは、あくまで「誰が」「どんな便益を」求めているかというユーザの視点です。その整理に「AAAA」モデルが役立てば幸いです!

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