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耳鳴り潰し18

 家庭訪問期間中なので給食後下校の息子と、久しぶりに公園に行く。息子が体調を崩して以来となる。調べてみたら「耳鳴り潰し5」

に書いていたので、二週間近く間が空いた。公園に行くと先に遊びに来ていたカナちゃんが、砂場から息子の元へと駆け寄ってきてくれた。学校では顔を合わせている二人だが、公園で会うのは久しぶりとなる。自分を待っていて、笑顔で駆け寄ってくれる異性……息子よ、父にそのような瞬間は子どもの頃一度もなかった。

 夕方病院に行くためにいつもより早く公園を後にすることを始めから伝えておく。刻限が近づいたので、その時私と遊んでいた息子に「もうすぐ帰る時間だから、最後カナちゃんと遊んできたら?」と言うと「カナちゃん、もうすぐ帰るから、最後に一緒にブランコしよ!」と声をかけていた。息子よ、父は遊んでいる異性の友だちに対してそのような言葉を発したことは一度も……異性の友だち? 父にはそのような相手は……。

 かかりつけの小児科へ、こちらも鼻水の出ている娘と一緒に。息子が珍しく「これ読んで」と絵本を持ってきた。いつもは迷路の絵本なのに。宮西達也「おまえ、うまそうだな」を読み聞かせる。次に同じ作者の「きみはほんとうにステキだね」を。混み合っており、予定の時刻よりも押しているようで、最後まで読む時間があった。どうも息子の様子がおかしい。ネタバレは避けるが、内容がよほど染み入ったようで、物語の終わりと同時に息子の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。父の熱演も功を奏したようだ。

 絵本の読み聞かせで涙を流す、父にそのような記憶は……。
 
「疲れたので早く寝る! 明日は早く起こさないでね!」といつもより一時間早く寝床についた息子は、いつもより一時間半長く眠っていた。

 市川沙央「ハンチバック」を読み終える。健常者から脱落して間もない自分はまだまだ甘いな、といったことを痛感する。続いて個人のKindle出版本を、とハナヒラさん著「寝たきり我が子と地方ぐらし介護」を読む。noteで「Kindle出版」を検索して出てきたものであるが、「ハンチバック」とも繋がる読書となる。


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