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2022年中日ドラゴンズ若手起用の振り返り&2023年若手起用の予測

 こんにちは、ドリーです。

 今年の中日ドラゴンズは最下位でしたが、若手選手の成長は見られました。よく言われていることは「立浪和義監督は若手選手を積極的に使っているから良い」という評価です。

 昨季「なぜ中日ドラゴンズは若手に切り替えないのか」というnoteを書きましたが、今季もちゃんと検証してこの状況を整理する必要があると思いました。投手と野手に分けて首脳陣の若手起用を見ていきましょう。

①投手振り返り

投手データの説明
FIP:奪三振、与四死球、被本塁打を元に算出した疑似防御率。投手の実力を測りやすいと言われている。
防御率:9イニングで自責点を何点に抑えるかの指標。
K/9:9イニングでどれだけ三振を取れるか。
K%:1人の打者に対してどれだけの確率で三振を取れるか。
BB/9:9イニングでどれだけ四球を出すか。
BB%:1人の打者に対してどれだけの確率で四球を出すか。
HR/9:9イニングでどれだけ本塁打を打たれるか。
WHIP:1イニングでどれだけ走者を出すか。

2022年中日ドラゴンズ若手投手の1軍成績

 一応小笠原も大卒3年目と同い年で若手なんですよね。規定投球回到達から1年経って奪三振の増加、与四球と被本塁打の減少で成績を向上させており、先発三本柱として良い成績です。高橋宏は球威でねじ伏せるという言葉がぴったりの成績で、正直ここまでの飛躍は予想できなかったです。嬉しい誤算が育成上がりの上田。2軍以上の奪三振率を叩き出し、制球力も良いので与四球の減少も考えられ、今後の飛躍が期待されます。それだけに謹慎処分が残念でした。勝野はまだスタイルが固まっていないように感じますが、悪くない成績だと思います。個人的には涌井秀章の加入でリリーフ転向も考えて良いかと。

 清水は制球の改善が飛躍の要因。藤嶋はもうひと伸びあれば勝ちパターンに確実に入れる選手になると思います。山本は2軍投手の情けなさから起用されている側面もありましたが、それなりの成績を残しました。ただ、FIPが悪いので来季はもっとレベルアップをしなければ通用しないかもしれません。

 根尾は投手転向後、1軍戦力として起用され続けてきましたが、痛打されたり制球を乱す場面もありました。彼の場合は特殊な例になるので先発・中継ぎの適性を見極めることも含めてもう1年ほど待ちたいところです。

 全体として言えることは1軍戦力として使われるレベルに十分到達している若手選手が多く、若いから使われているというよりも酷使に気をつけてねというところまで来ています。2軍からの突き上げが弱いことが懸念すべきところです。そこまで考えると、1軍で通用するレベルに達している選手がこれ以上いないから若手が起用されていたともいえます。ただ、1軍にいた若手投手は徐々に成績を上げていたことが多く、1軍の方が育成の面で機能しているかもしれません(勿論「使っているから育つ」という短絡的思考ではなく、首脳陣の指導能力や選手本人の修正のおかげです)。

②野手振り返り

打撃データの説明
打率:四死球や犠打飛などを除きどれだけの確率で安打を放つか。
出塁率:どれだけの確率で出塁(エラー出塁は除く)できるか。
長打率:1打数での塁打数の平均値。
OPS:出塁率+長打率で算出されたもので、得点との相関性が比較的高い。
IsoP:長打率-打率で算出されたもので、純粋な長打力を測る。
K%:どれだけの確率で三振するか。
BB%:どれだけの確率で四球を選べるか。
BB/K:選球眼を測る指標。
BABIP:フェアグラウンドに飛んだ打球がどれだけ安打になったか。

2022年中日ドラゴンズ若手野手の成績

 毎年低迷しているチームにありがちな「若手に切り替えろ」という声の中でやり玉に挙げられるのが野手です。

 シーズン開幕から起用され続けている岡林から見ていきましょう。
 岡林は天才的な打撃センスを持っている選手で、2021年終盤にはスタメン出場も増えてきました。秋季キャンプではセカンドの練習もして、2022年1月には立浪監督から「外野一本で出場機会を与える」と直接電話を受けて開幕から好調でしたが、次第にゴロ狙いになって低迷。打率が2割2分台に入ったこともあり、鵜飼やA.マルティネスとの併用や大島の離脱で出場機会を貰っている状態でした。ただ、6月からは実力でスタメン出場を勝ち取り、今や攻守で必要な存在となっています。最多安打、ゴールデングラブ賞、ベストナインも獲得するとは思わなかったです。守備も成長してセンターでも起用できるレベルに達しました。

 次は石川昂弥。1年目からファームで期待できる成績を残しており、骨折が癒えた秋から中村紀洋打撃コーチと打撃改造を実施。紆余曲折ありながらも持ち前の対応力で5本塁打を記録し、長打力を測る指標であるIsoP(長打率-打率)は.186と若手としては良い成績を残していました。守備もサードでのUZRがリーグトップになったように前評判通りの良さを発揮しました。が、コロナ感染や左前十字靭帯不全損傷での離脱でシーズン終了。
 開幕当初は高橋周平の離脱もあって使ってもらっている立場でしたが、時には3番でスタメン出場するなどその後は実力でスタメンを勝ち取った選手でした。

 鵜飼はレギュラーを期待されたA.マルティネスの不振により開幕後はスタメン出場が多かった選手です。天性のパワーで4本塁打を記録しましたが、攻守ともに粗さは否めず、6月には9打席連続三振も。その後2軍落ちとなりました。彼の場合は岡林と同じく外野にいる選手の不調や故障でチャンスが巡ってきた選手です。

 土田は2軍成績は三振以外打撃成績が昨季より低下した状態で昇格してきました。それでもスタメンで出ることになった理由は彼の守備力と、京田の不振から始まり溝脇と三ツ俣がショートとしての働きが不十分だったことでしょう。いわば消去法的な起用ですが、それでも見れる打率を残せていることは収穫です。ただ内野安打やゴロが多く、一歩間違えたら酷い打撃成績になることも否めない選手なので今オフは打撃強化に取り組む必要があります。

 この4人が2022年に100打席以上の出場機会を得た選手です。

 石橋は木下のコロナ離脱や登録抹消もあって2番手捕手格として31試合に出場。ただ、打撃では小技に頼って持ち味のパンチ力を生かしきれず、守備では全てにおいて木下との差が顕著に現れました。将来の正捕手としてレベルアップは必要で、まずは手術した箇所の回復からですね。
 石垣は後半戦にセカンドでの起用がありましたが、結果を残せず溝脇や高橋周が優先されました。打撃では似たタイプが増えてパワーで少し劣る石垣が埋没し、特別上手いわけではない(立浪監督からの評価は高いですが)守備では村松開人、田中幹也、福永裕基の獲得によって出場機会が危ぶまれます。確実性の向上が必須です。
 大島のコロナ感染で後半戦にスタメン出場もあった三好はライバルが増えたので武器が必要となります。盗塁成功率が100%でしたが、足の速い選手が増えてきたので守備の向上が必須です。打撃ももう少し伸びれば4番手外野手からレギュラー争いに割り込めるでしょう。

 全体的に見て若手野手は成績が悪い数値が多く並んでいます。それでも出場機会を与えられたのは、その他のレギュラー格の離脱、不振が原因でした。開幕当初は大島以外レギュラーが決まっていなかった外野に若手が多かったことも若手起用が増えた要因と考えられます。一方で、育成選手で2軍戦出場も少なかったレビーラとガルシアが突如支配下登録されて1軍で起用されるなど、立浪監督も現状の若手野手の働きに不満を持っていたと推測できます。

③2022年、中日ドラゴンズはどのように若手を起用したか

2022年中日ドラゴンズの年齢構成

 今季は勝利を目指しながらも結果的に若手を使うことになりました。「勝利への執念を植えつける」と言いながら勝利度外視で起用することはないと予想していたので、その通りになったかなと思います。その采配が本当に勝利に結びつきやすい采配だったかはこの記事の検証内容とは異なるので除外しますが、最善手を選ぶ中で成績を相対的に残している若手を起用しようとなっていたと考えられます。
 また、レギュラー選手の故障離脱やコロナ感染も若手起用の増加に影響しました。例えば石橋や三好はこれによって出場機会を貰った選手です。
 平均年齢が若返りつつあり、中堅~ベテランの戦力の空洞化が見られる今の中日では、若手が起用されるようになることも当然だと思います。

 そして、若手が起用されなかった昨季と何が違うかというと、初動の時点で成績を残していること、2軍でも成績が上がっていることです。ここ5年ほどで入団した選手が数年かけて成長して1軍で使えるようになったということです。育成には段階があり、それを1つずつクリアして今季ついに1軍昇格した形です。決して立浪監督は基本的に無茶な若手起用はしておらず、チーム状況を考えたら妥当なわけです。ここで無茶な起用をすると選手が小さくまとまってしまう恐れがあります。だからこそ中堅やベテランで暫く蓋をして若手は段階的に育成に注力したいのですが…。

④2023年、中日ドラゴンズはどのように若手を起用するべきか

2023年中日ドラゴンズの年齢構成(2022年12月10日時点)

 来季も若手が多くを占める選手層になることは間違いありません。そこで来季の若手起用についても考えていきましょう。

④-1 投手

 心配されるのが2軍が果たして回るのかどうかという話ですが、怪我人が物凄く多く出ない限りはどうにか回せると思います。

来季投球イニング増加が見込まれる投手

 上図の選手が投球イニングの増加が考えられます。ただし、誰かが離脱することは想定しなければいけません。今年も2軍はカツカツだったので、少し厳しい運用は強いられるでしょう。黄色靭帯骨化症の手術を受けた福や中継ぎ再転向が決まっている岡田は投球イニングの減少が見込まれます。

2022年オフに退団した投手の投球イニング

 本題の若手起用ですが、涌井の加入によって1軍では無理をさせない形になると思います。これこそ中堅・ベテランで蓋をして若手を育てる形です。しかも高橋宏や上田は1軍での登板機会が増える可能性があり、24イニングは簡単に埋まるでしょう。涌井の加入で他の投手が押し出された分が2軍の192イニングを一部埋めることになると思います。大野雄、柳、小笠原、涌井、高橋宏、松葉といった100イニング以上投げられることが見込まれる先発の中から故障者や不調の選手が出た場合はドラフト1位の仲地や先発に転向した根尾の起用もあり得ます。中継ぎは2022年のメンバーが中心で、2軍で中継ぎ適性を見せた若手は昇格するかもしれません。
 来季の若手投手は2軍でしっかりと実戦経験を積むことが増えてくるはずです。

④-2 野手

2022年に退団した選手+αの2軍での打席数、守備イニング

 正直捕手の故障者さえ多発しなければ2軍はどうにか回せます。山浅の加入、今季公式戦であまり捕手をやらなかった味谷や郡司の起用が考えられるからです。ただ、もう1人くらいいるとありがたいですね…。石橋は開幕絶望的なので2番手捕手が欲しいところです。
 二遊間も村松開人、濱将乃介、田中幹也、福永裕基、樋口正修の入団と星野の出場機会増加で補われ、渡辺が多く守った外野は今年怪我での離脱があったブライト、鵜飼、福元らが守ると思います。

 さて、問題は1軍。

2022年に退団した選手+αの1軍での打席数、守備イニング
2023年の野手予想布陣

 阿部、三ツ俣、京田の退団によって二遊間は半分近くの守備イニングが空きました。根尾の分も含めたら合計1281イニング、50.35%です。土田がショートとして今季40.30%守り、来季ショートの80~90%は彼が入るでしょう。しかし、故障する可能性もあります、あの打撃では苦しむ可能性もあります。その時にショートを守れるのは体力に不安のある田中、ショートはブランクがある村松、衰えの見える堂上、判断力や守備の確実性に不安のある溝脇です。半ば博打のような運営になっているので非常に危険です。ただし、若手にとってはチャンスで、土田、田中、村松は出場機会を掴みやすい状況です。濱は2軍でショート守備を叩きこむべきでしょう。
 セカンドはスタメン候補が多くいる中で、村松、田中、福永を起用する可能性もあります。当初はサード専念の予定だった高橋周も阿部の放出でセカンドに入るかもしれません。後半戦にセカンドで起用された石垣もいます。人数はいるので出場イニングとしての穴は埋まると思いますが、高い質になるかは蓋を開けてみないと分からないです。そもそもスタメン候補に若手が多いので、若手が起用される確率は高いです。
 来季の石川昂は立浪監督が競争の中でレギュラーを掴むことを求めており、優先的には出場機会が与えらえるとは限りません。ただし、コロナでの離脱前に見せた打撃をまた発揮できればレギュラーは一気に近づくでしょう。

 外野はA.マルティネスの退団やレビーラとガルシアの育成再契約によって穴は開きましたが、まずは新外国人のアキーノやアルモンテが優先されるでしょう。岡林はセンターでの起用がほぼ確定しています。鵜飼、福元、現役ドラフトで加入した細川はファーストもできるので、大島とビシエドの不在や不調時に出場機会を得られるようにしてほしいです。若手の外野手は多いですが、2軍で鍛えて控えの枠を奪うことからスタートになります。

2022年に退団した選手+αの1・2軍での打席数、守備イニング

 野手は大きく布陣が変わってポジションごとに出場機会を与えやすいポジションと与えられにくいポジションも変わりました。それぞれが今後の成長プランを考え直さないといけないかもしれませんね。

⑤まとめ

 今季の若手起用の振り返りと来季の若手起用の予測をしました。
 今季は立浪監督の中でも若手をなるべく使いたい方針があったかもしれませんが、流れの中で使われる若手が多かった印象です。来季は更に若返った布陣で挑むことになり、「若手vs中堅・ベテラン」から「若手vs別の若手vs中堅・ベテラン」の構図へと変化していきます。今季以上に結果を残すことが求められるので、オフからしっかり準備をしてシーズンに臨んでほしいところです。

 以上になります。ありがとうございました!

参考
nf3-Baseball Data House https://nf3.sakura.ne.jp/index.html 
1.02-ESSENCE of BASEBALL https://1point02.jp/op/index.aspx 
プロ野球データフリーク https://baseball-data.com/ 

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