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ビシエドと京田陽太は「聖域」なの?

 こんにちは、ドリーです。

 早速ですが、2022年5月6日(金)の中日ドラゴンズの親会社の系列新聞である中日スポーツの1面記事をご覧ください。

 題名は「立浪竜に聖域はない!! 「一番はそこですよ」大敗に不動の主砲ビシエドの4番外しにも言及」です。1面の写真まで出します。

2022年5月6日(金)の中日スポーツ1面

 立浪和義監督の言ったことを要約すると、「ビシエドが打たないことにはどうにもならない。前に突っ込まないように指導しているが、すぐに戻ってしまう。本気でフォームを変えようとしないと。明日本人と話し合って打順の変更も考える。」ということです。秋季キャンプからビシエドの打撃フォーム改造に取り組んでいた立浪監督としては頭が痛いことでしょう。25年くらいこのスタイルで打ってきたのでその癖を直すというのはなかなか難しい話だと思いますが、その指導が正しいのか、どういう指導をするべきか、前に突っ込んでいても以前は打てていたのに今は細部で見て何故打てないのかは技術論に詳しい人に任せるとして、引っかかるのは中スポの書いた「聖域」という言葉です。
 中スポ曰く「4番ビシエド」「ショート京田」は聖域だった、立浪監督はそこを取っ払った、ということになります。じゃあ聖域って何?本当にこの2つは聖域だったの?というのが今回のnoteの主題です。

①「聖域」の定義

 まずは「聖域」とは何かを定義しなければなりません。
 国語辞典を調べてみましょう。

 聖域とは…

①聖人の域。聖人の境地。 ②神聖な地域。犯してはならない区域。比喩的に、手を触れてはならない分野。

広辞苑

①聖人の地位または境地。②神聖な地域。神社・寺院の境内、神が宿るとされる所など。③それに触れてはならないとされている問題や領域。

デジタル大辞典

 どちらも①は宗教的な意味となります。プロ野球で言うと「どんな形であれ絶対に外すことのできない選手」「チーム状況、本人の状態に関わらず固定される選手」ということでしょうか。

②「4番ビシエド」は聖域なのか

2022年3月25日(金)、開幕戦で本塁打を放つビシエド

 それでは「4番ビシエド」は聖域なのか考えてみましょう。

 ビシエドが離脱以外で4番から外れたのは過去に3つの時期であります。
① 2017年の4~5月に不振で(代役の4番は平田良介)
② 2017年の夏に不振とゲレーロの活躍で(代役の4番はゲレーロ)
③ 2019年の6月に高橋周平の好調とビシエドの本塁打の減少で(代役の4番は高橋周平)

 代役に関して②のゲレーロ、③の高橋周の活躍は覚えている方も多いと思います。①の平田は2017年の3~4月に打率.260、本塁打4、OPS.822とクリーンアップとしては及第点でビシエドよりは良い状態でした。代役がいたから4番から外したということが考えられます。
 一方で不振だった2016年の夏、2020年の夏、2021年の5月などは4番から外れたことがありません。これは代わりがいないという事情もあったと思います。例えば昨季の5月は3番にいた福田永将も5番の高橋周も不振で、「4番にチーム最高の打者を」と考えている以上は結局不振でもビシエドを4番に置かざるを得ない状況でした。逆に言えば他球団がやっているように3番など他の打順にチーム最強打者を置く発想があれば「4番ビシエド」は解消されていたかもしれませんが。

 それで今の中日で見てみると、ビシエド以外に成績上良い打者はいるのでビシエドを4番から外す条件は十分に整っているわけです。OPSで見ると(故障の大島を除いて)阿部寿樹、木下拓哉、石川昂弥がビシエド以上の数字を残しています。この3人でクリーンアップを組んでも良いくらいで、ビシエドを4番から外すことありきになるのではなく、このメンバーで打線が上手く機能するように考えた形が立浪監督の4番外し示唆だと思います。

③「ショート京田」は聖域なのか

2022年4月7日(木)、本塁打を放つ京田陽太

 ファンからも散々聖域と言われ続けている「ショート京田」。これはどうでしょうか。

 京田は1年目の2017年から134試合→140試合→133試合→120試合(全試合)→106試合でスタメン出場してショートを守っています。昨季は5月末に再調整として5年目で初めて1軍選手登録を抹消されています(この時点で聖域なのかは疑問です)。
 京田のショート守備がチームで1番上手なのは当然の認識だと思います。それを考えると京田を押し退けるには打たなければなりません。ですが、中日の選手であれだけ酷評される京田の打撃成績を超えたのは2019年の堂上直倫しかいません。しかもその堂上はヤクルトの高梨裕稔に代表されるように得意な相手にぶつけ続けて残した成績で、昔から体力に不安のある選手です。根尾だって打撃に集中しやすい環境に身を置いてあの打撃成績です。

守りで勝てないのに打撃でも勝てない選手を使う必要なくない?

 これで終わりです。昨季の三ツ俣大樹のように一時的に結果を残せる選手はいてもシーズンを通してパフォーマンスを維持することは難しいということでしょう。また、ショートにおいて守備が軽視される理由としては、UZRという総合守備評価の指標が広まっていなかったり、「他の選手ならアウトにできた/アウトにできない」というのが判りづらいことだと思います。

 なぜ京田が今回1軍選手登録を抹消されたかというと、打撃成績に加えてそれが原因で気を病んでいると受け止められたことが大きいと思います。「戦う顔をしていない」という抽象的な表現でしたが、立浪監督が1ヶ月間スタメンで起用してこれまで京田を庇ってきたことを考えるとあくまでも彼はレギュラーとしてもう一度上がってこいというメッセージのはずです。まず打つべきなのは中軸なのは同意です。

④プロ野球に聖域って存在するの?

2022年5月3日(火)、横浜スタジアムでの立浪和義監督

 ここまで見ていくとプロ野球に聖域なんて存在しないのではないかと感じてしまうかもしれません。しかし、それにはNOと言います。連続フルイニング出場を続けていた時の金本知憲のように、チームの勝ちよりも個人が優先されるような状況は間違いなく聖域と言えますし、何なら2軍行きやスタメン落ちの際は監督が直接説明しなければいけなかったという現役時代の立浪監督もある意味聖域だったと言えます。
 単純にビシエドや京田が使い続けられた理由が聖域とは違うものだったよねというだけで、2人ともレギュラーとして1ヶ月間使われての結論として4番から外すことを検討したり2軍行きにしたということだと思います。特に開幕から1~2ヶ月は不調の選手も使い続けられることが多いですよね。これは競争が活発になったというよりもレギュラーの状態が良くないというチームの危機ではないでしょうか。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。


出典
データで楽しむプロ野球 https://baseballdata.jp/ 
nf3-Baseball Data House- https://nf3.sakura.ne.jp/2021/index.html 
スタメンデータベース https://sta-men.jp/index.html 
「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」 鈴木忠平著


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