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開幕から1ヶ月の立浪ドラゴンズを見てみよう(2022年中日ドラゴンズの記憶と記録③)

 こんにちは、ドリーです。

 プロ野球が開幕してからはや1ヶ月以上が経ちました。中日ドラゴンズは下馬評以上の好スタートを切っていると思います。じゃあ立浪和義監督への交代で何が変わったの?そんなことをnoteでは見ていこうと思います。


①采配

 今回は采配から見ていきたいと思います。

①-(1)全体像

 まずは全体像から。

 結論から言うと「良いとは言えない」です。
 与田前政権との比較をしていくと理屈よりも流れを重視したような采配となっています。たとえば4月17日(日)の広島戦、7回裏に清水達也が乱調で2死満塁として4点差としたときに本来8回に投げるロドリゲスを投入。1球でピンチを凌ぐと次の回も続投します。これは翌日が休みであること、中3日での登板であったこと、1球でピンチを脱したことが要因となっていますが、8回表には阿部寿樹のホームランで2点を追加し、試合が動いている中で8回裏にも点を取られると9回裏にも影響しかねない状況になっていました。そこを制圧力のあるロドリゲスに任せたというわけです。実際その後はスムーズに中日ペースで試合を終わらせることができました。歴代最多の407セーブをあげた岩瀬仁紀氏でも「自分が投げる前の攻撃でチャンスになったり点を取ると試合が動き始めて投げにくかった」と言っていた通り、試合には流れがあるのでそれを断ち切る存在が必要になります。攻撃でも劣勢時には頻繁に野手を交代させる、小技によって介入するなど動いて打破していこうとする姿勢が見えます。
 このように、前政権では「戦力揃っていたらもっと勝てるんだろうなぁ…」という気持ちにさせられる「正しいかもしれないけど結果に結びつかないしどう動いても上手く行かない」ことが多かったこととは違い、現政権では多少無理してでも目の前の勝利に執念を燃やすタイプの采配になっていると思います。リスクは高いかもしれないけどリターンは理屈でやるよりも高いものを得られるかもしれないということです。
 一方で目の前の展開、目の前の試合を良くしようとするあまりに全体が見えていないという欠点があります。投手運用にしても柳の130球以上の完投を2試合続けることに代表されるように1年間持つかわからないようなものになっていますし、野手運用は開幕戦から目の前の1点を欲して阿部に数年練習していないサードを守らせる事態になったり、4月30日(土)の広島戦では9回表の時点で残っている控え野手が捕手の石橋康太のみということがありました。開幕直後に「このままだと『代打三ツ間』の二の舞になる」というツイートを見ましたが、そういうケアレスミスではなくても試合前の1軍登録を含む準備不足でのミスでの敗戦は十分にあり得るので気をつけてほしいです。ここは監督1年目なので1シーズン143試合戦ってみて振り返った時に来季以降に生かしてほしいです(勿論その中で潰れる選手がいないことを祈るばかりですが)。
 ただ、どういう采配であっても選手が正解にする場面が多いと思います。采配には〇と×と△の3種類があると考えていて、△の成功率は上がっています。そこは勝負師と言われた立浪監督らしいのではないでしょうか。

①-(2)投手の采配

投手戦力マップ

 先発ローテーションは大野雄、柳、小笠原の3人は固定して残りは流動的に回す方針にしました。小笠原が離脱すると高橋宏の中10日の方針の限定的な解除もありながら代役も好投していきました。高橋宏の中7日は大きな怪我無くプロ初勝利もできたので安心しました。彼を抜くと4番手格には勝野が入ったと思われ、立浪監督からも期待するコメントが出ました。と思いきや怪我で離脱…。かつてローテ2番手として投げた福谷も登板を重ねているので、ここまで名前を出した6人が離脱のない限り5月以降は中心になると思われます。そして高橋宏が中10日程度で回る中で松葉や岡野らにチャンスが回ってくるのではないでしょうか。松葉はバンテリンドームで5回までという起用法を立浪監督が明言した通り、彼を最大限に生かした形になりそうです。
 先発の球数は大野雄、柳、小笠原が120球で他が100球目途となっているようです。ただし、先述の通り柳が既に130超えの完投を3回記録しているのは気になるところです。選手が球数を気にしなくて良いと言ってもそれをコントロールするのが首脳陣の役割ではないでしょうか。
 中継ぎは3連投防止や役割分担など最低限やってほしいことはこなしていると思います。開幕3戦目では(役割分担の観点からは不適なものだったとはいえ)2連投していたロドリゲスをベンチ外にするなど100%準備させない状況にする方針もみられました。結局ライデル・マルティネスが試合展開の影響で開幕1週間で3連投することになりましたが、今後は先発投手が6回まで投げたら清水、ロドリゲス、祖父江の3人が補うことが可能になるでしょう。ただし、岩嵜の離脱は誤算でしたね。ここに田島が信頼を得ると4点リードだったり勝ちパターンの誰かが3連投の時に代役として投入ということが考えられ、僅差ビハインドで勝ちパターンが出てくること(ここまで何度かあります)も減らせると思います。
 連投制限にしても球数制限にしても1年間戦ううえでの運用方法なので、今の投手運用で果たして1年間持つのかというのは気になるところです。
 2軍では怪我人が多く、マルクを中心とした中継ぎに登板数が集中したり若い先発投手が多い球数を投げなければいけないことが出てきました。大嶺や垣越は今何してるのでしょうか?

①-(3)野手の采配

1軍野手の戦力マップ

 打順の組み方は割と良いものになっています。大島が離脱するまでは2・3番が日替わりながらもこれ以上組み替えるならビシエドを3番に置くしかなくない?となるような形になっていました。大島が離脱してからは試行錯誤の後、1番鵜飼2番岡林3番石川昂という若手を上位に配置する形に変更。阿部は4番の後の尻拭い、木下は少し成績が落ちている中だったので不適切な構成とは思いません。高橋周は緊急昇格後からスタメンで起用していますが、A.マルティネスらとの兼ね合いはこれから見ていくことになるでしょう。石川昂は継続起用に応えて結果を残し始め、ついにクリーンアップに入りました。
 打席での指示はオープン戦から一貫して基本的に「ファーストストライクをしっかり振れ」。これは徐々に浸透しており、相手を連打で打ち崩すときはこれが目立ちます。それが相手の心理にも働き、甘いボールを投げられないとばかりにカウントを打者有利にすることも出てきました。4月頃からは打撃練習でもセンターから逆方向を中心としたものを指示しているようです。ここまでの得点増の要因の一つ(後述します)でもある長打・フライの減少に繋がらないと良いですが、アプローチを使い分けるように指示を出してほしいです。
 バントの数は意外にも(?)リーグ4位。問題があるとすればそのサインを出すタイミングで、1死からのバントはたまにあって大丈夫かと思うことがありますが、無駄にバントに頼ることは少なく、序盤無死1塁でもちゃんと打たせる場面を見ることができます。あとは選手がそういう場面で打つかでしょう。ランエンドヒット以外でむやみに走らせることは避けている印象があり、選手の能力もありますがそれでも盗塁数は13でリーグ2位、なんと失敗は1。一方で次の塁を狙う走塁で1点を多く取る場面が増えており、良い意味で機動力野球ができているのではないでしょうか。ランエンドヒット・ヒットエンドランのサインは少し多めで、フルカウントだと走らせる場面は3月30日(水)のDeNA戦でそれが試合終了の原因となってからは少し減ったのではないかと思います。ただし、5月3日のDeNA戦であったフルカウントから投手に走らせたのはスタミナにも影響を与えるので明確にやめてほしいです。
 このように小技による介入は割とあって、それの成功体験、または選手の働きの悪さによって介入が悪化するというのは前政権で起きた話なので気をつけてほしいです。
 途中交代は先述の通り劣勢ではどんどん選手を投入する形です。一方でミスした選手の懲罰交代のようなものも散見されます。3月30日のDeNA戦。フライを3つ打ち上げた岡林を「ライナーやゴロを打つように指導しているのに従わなかった」として3打席目終了後に交代。4月に入ってからも判断ミスのあった木下や京田が翌日スタメン落ちということがありました。木下がスタメン落ちの試合で代わってスタメンマスクの桂がバッテリーエラーでそれが決勝点に、京田がスタメン落ちの試合では代わってショートに入った堂上が衰えの見える守備で点を献上ということがありました。レギュラー格の選手を懲罰交代するということは敗戦の確率が上がるリスクを背負うわけで、緊張感を与えると思われがちですが選手のケアもしながら戦っていってほしいです。
 代打起用は福留を我慢の起用が続いています。これをいつまで続けるのかは立浪監督の判断にかかっています。開幕当初の山下に代わって高橋周の復帰によってベンチに控えるA.マルティネスが1番手になっています。左の代打が溝脇というのは少し層が心配になりますね。平田は走塁・守備にも秀でている分代打での起用が少し限定される形になりそうです。あとは郡司に期待していきたいです。
 2軍では根尾がショートに再コンバートになったことが大きなトピックです。一つ前任の仁村徹氏の運用と比較して気になるのが起用ポジションが少し硬直していないか?ということで、例えば内野複数ポジションを守れる三ツ俣大樹がなかなかショートで起用されなかったり、根尾がショートコンバート後に占有状態になったりしていることが挙げられます。2軍は非常に好調なので、あとは出場機会の配分をもう少しだけ柔軟にしてほしいです。高卒の味谷と星野の出場機会が少ないのは体力作りも兼ねていると受け止めています。

②簡単なデータで立浪ドラゴンズの変化を見てみよう!野手編

 ここまでのドラゴンズの変化といえば得点力を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。というわけで簡単なデータを見ながらどのようにして得点が増えたのか見ていきましょう。

打撃成績の基本情報(2021年3~4月、2021年後半戦、2022年を比較)
打撃成績の基本情報(ここ3年の比較)

 最初に見せるのはちょうど1年前の2021年3~4月、2021年の後半戦、そして今年の基本的な打撃成績を纏めたもの、その次はここ3年の基本的な打撃成績の比較です。チーム打率はリーグトップ、得点数はリーグ4位になっています。

野手のデータの比較(2021年3~4月、2021年後半戦、2022年を比較)

 まずは短期間でのデータの変化を。得点との相関(関係性)が高いとされるOPSはチーム全体で大幅に上昇しています。大島と阿部がそこに大きく貢献しており、レギュラー選手を2021年後半戦の同ポジション選手と比較してもOPSの上昇がみられる選手が多いです。指標上悪いとされる選手も昨季ほど足を引っ張っているわけではないという見方ができます。出塁率は打率の分の変化が大きく、積極的に打ちに行くという方針からか三振率・四球率は減少しています。大きな変化は長打の増加でしょう。二塁打に変化はありませんが、三塁打・本塁打は増えており、長打率も5分ほどアップしています。長打率(塁打/打数)から打率(安打数/打数)を引いて純粋な長打力を測るIsoPはリーグ4位で、平均以上の選手も何人もいます。特に石川昂弥はIsopが優秀とされる.200以上です。ちなみに最後にIsoPがリーグ4位以上に行ったのは2012年まで遡ります。打者不利のバンテリンドームを本拠地にしていることを考えたら上出来だと思います。鵜飼が思ったよりIsoPで伸び悩んでいるのが気になります。本塁打・犠打を除くフェアゾーンへの打球がヒットになった割合であるBABIPもかなり高いわけではないので運が良い(ゴロが内野の間を抜けたヒットが多い、ポテンヒットが多い)というわけではないと考えられます。
 岡林は積極的なアプローチによる四球の少なさから出塁率はそんなに高くありません。開幕直後は打っていたので指の怪我だけではなく体力・技術面で壁にぶつかった可能性も考えられます。最近は復調してきたので今後の成績向上に期待しましょう。
 好調ながらも離脱した大島に少しフォーカスしてみます。大島も実は長打が増えていて、体の強さが窺えます。三振が増えた気がして下にもあるデータを見たらやはり大幅に増加しています。少しずつ打撃に衰えが来ている可能性は考えられますね。

野手のデータの比較(ここ3年を比較)

 続いてはここ3シーズンの比較。ここで一つ気づくことがあると思います。

あれ?OPSって2020年と変化なくね?

 たしかに1試合の平均得点も大差ありません。しかし、リーグの平均OPSも落ちています。しかも5分も。そうなるとリーグ平均以上のOPSを記録している選手も増えてきます。IsoPも同様です。平均との乖離がかなり小さくなりました。

 ではデータをもう少し深く掘ってみましょう。
 長打増(ゴロ性ではなかなか長打は増えないので必然的にフライが増えることになります)はこんなところにも好影響が出ています。犠牲フライの増加です。現時点で昨季の3~4月の倍以上であるだけでなく、試合数が倍近くある昨季の後半戦よりも犠牲フライの数が多いです。これはすなわち得点手段の増加に繋がっています。
 そして相関性が高いと言われる得点とOPSですが、OPSはリーグ2位なのに得点はリーグ5位です。それも考えてみましょう。得点圏打率はリーグ4位です。しかし、広島と巨人を除けば得点圏打率は大差ありません。じゃあ得点圏打数は多い中日有利じゃない?と思いますが、ここにも長打が関わってきます。得点圏での本塁打はリーグ最少の2本です。もっと言えばその2本はいずれもランナー1・2塁の時の3点本塁打で、ランナーが3塁にいたら1本も本塁打を打っていません。まだ得点圏で単打が多いようでは得点増に向けて課題が残ります。ランナーなしの時の本塁打(=1点)は10本でリーグ3位。繋ぎを意識しすぎないアプローチを求めていきたいです。長打自体神宮球場で稼いだ部分もあるので、球場によって変えている可能性も考えられます。追い込まれたりランナーがいるとバットを短く持つ選手も目立つので、コンパクトにしすぎず状況に応じた打撃をしなければなりません。細かいことやるよりも単純に打てば得点が増えることは皆さんもなんとなく理解していただけると思います。

③簡単なデータで立浪ドラゴンズの変化を見てみよう!投手編

 ちょっと調子悪いんじゃないの?と言われている投手陣。何かデータでの変化はあるのか見てみることにしました。

投手成績の比較

 実は全体の投手成績はそんなに変わっておらず、チーム防御率も僅差でリーグ3位です。リーグ内の平均防御率を考えてもそこまで変化はありません。ただし、防御率というのは味方の守備や打球の飛んだ場所(≒運)にも影響されるので、奪三振や与四死球、被本塁打に着目した疑似防御率であるFIP(平均は防御率と同じ)を見ると少し良化していると見れます。
 先発を見ていきましょう。この表には書かれていませんが、QS率と先発時の6イニング以上の投球率は大きな変化はありません。左右の柱である大野雄と柳の状態が気になるところで、大野は被本塁打が少し減ったものの、奪三振率(K/9)が大きく低下しています。カットボールの精度を高め、全ての球種でゾーン内の制球を落ち着かせることが必要になると思います。柳はカットボールとチェンジアップが良くないことから奪三振率が低下。勝野は奪三振率の向上から期待していましたが、脇腹痛での離脱は残念です。高橋は抜け球と引っかけた球を減らすことが重要でしょうね。そして全体的にBABIPが高いのが気になります。投手はシーズンごとのBABIPが安定しやすいと言われていますが、誰か1人ではなく全体で3割以上になるのは運が悪いとも言えます。ここは少しずつ落ち着いてくると思います。全体で見て被本塁打が減っていることはポジ要素です。
 中継ぎは奪三振率の向上が見られます。田島はカットボールの使用が増えたのでモデルチェンジになるかもしれません。勝ちパターンに入った清水も開幕当初はゴロを打たせることが多かったですが、徐々に奪三振が増えています。中継ぎ転向が大ヒットのロドリゲスは荒れ球を武器にセットアッパーへ。あとは無駄な四球を減らすだけ。Bチームで気になるのは山本で、登板ごとの好不調の差が埋まれば序列の昇格も考えられるでしょう。こちらはこちらでBABIPが非常に低く、これから少し揺り戻しが来てしまう可能性は考えられます。ただ、それでリリーフの質が凄く下がるということはそこまで気にしなくて良いという水準にはあるはずです。
 あとは停滞している2軍からの突き上げですね。先発も中継ぎも1軍と2軍の実力差が乖離しており、これでは誰かが離脱した時に苦しくなります。

④最後に

 ドラゴンズはここまで割と良いスタートを切っています。これは選手・采配が上手く噛み合ってのもので、良い部分に気づいてそれを継続し、悪い部分は改善していくという流れを作らなければ5月以降失速ということも今の戦力では十分あり得ます。采配も選手のプレーも反省点はここまでいくつも挙がると思います。そこを詰められるチーム、同じミスをしないチームが強いチームなので、ここからは失敗を生かせるチームにしてもらいたいです。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。


データ参照
nf3-Baseball Data House-  https://nf3.sakura.ne.jp/index.html 
データで楽しむプロ野球  https://baseballdata.jp/ 
NPB  https://npb.jp/ 

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