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創世記

むかし、世界が出来て間もないころです。
世界の中心に混沌の神さまがおりました。
生き物たちはこの世界で生きていくための力を分けてもらうため、混沌の神さまの元に集まってきました。

「オマエハ ドンナ 足ガホシイ?」

混沌の神さまがそう尋ねたので、生き物たちは色々な答えを言いました。

「足はやはり速くなくっちゃ!」

そう答えたものは、蹄(ひずめ)を手に入れました。

「いくら速くても横にしか動けないなんてつまらない! 何にでもくっついて登れる足がいい!」

そう答えたものは、吸盤のある足を手に入れました。

他にも、大きく跳べる足をねがうもの、木にぶら下がれる足をねがうもの、太くてしっかりふんばれる足が良いというもの、足なんていらないというものなど様々でした。神さまはその望んだものを生き物たちに与えていきました。

その調子で生き物たちは、いろいろな機能を口や鼻、耳などの器官に授かりました。
しかし、よいことばかりではありません。大きな体に小さな口をつけてしまったものは、おなかがすいて死んでしまったり、強い爪や牙があっても足がおそいものはエモノをとらえることが出来ませんでした。こうして多くの生き物が滅んでしまいました。残った生き物たちも、自分たちの得た力が生かせる限られた場所でしか生きられなくなりました。混沌の神さまの力は使い方が難しかったのです。

「オマエハ ドンナ チカラヲ望ム?」

最後の生き物はそうたずねられて困りました。他の生き物がまちがえた力を望んで不幸になったのを見ていたからです。迷った後、その生き物はこう答えました。

「私は自由になる力を望みます。どこにでもいけて何にでもなり、何でもない、何でもできる手や足や体をください」

それを聞いた混沌の神さまはグッグッグと低い声で嗤いました。なんと大それたことでしょう、それは混沌の神さまの力そのものです。生き物が神さまの力を望むなんてとんでもない! 神さまはその生き物の願いをかなえると同時に呪いをかけました。

その生き物は、望めば全てを生み出し、どこでも生きていける力を手に入れました。それは混沌の神さまの力そのものです。しかし器として牙も爪も翼もなく、もっとも弱い体を与えられました。
なので何もしなければもっとも弱い生き物のまま滅びる。そして歩みをとめ自由を捨て、何者かになってしまったとしても、その力は失われるようになってしまいました。これが呪いです。
その生き物は、常に変化と自由を求め続けるしかありませんでした。

「オマエハ 私ヲ憎ムカ?」

混沌の神さまがそう聞きました。

「神さま、いえ、お父さん、私はこれを呪いとは考えません。祝福だと思います」

その生き物はその力を可能性と名づけました。よかったですね。
とっぴんぱらりんのぷう。いあいあ! あざとーす!

おしまい。

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