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小説家になろう最高傑作「無職転生」について語りたい

「小説になろう」という小説投稿サイトをご存知ですか?

小説家になろうというサイトを要約すると、

・だれでも小説を投稿できる
・読者からのポイントが高くなると、ランキング上位に乗る
・その中でも特にポイントが高い作品が書籍化、アニメ化されていく

というシステムで成り立っていて、「転スラ」とか「リゼロ」はなろう出身作の中でも際立った成功例です。

そんな数々の人気作品を生みだす日本一の小説投稿サイトなのですが、中々癖の強いサイトで、ある種のテンプレがないと読者から見向きもされません。

11 :この名無しがすごい!:2014/05/03(土) 12:56:21.71 ID:qS42B/k
◆▼●なろうで受けるためには●▼◆
・ジャンル(異世界転生、移転、最初からファンタジー、MMORPG、なろうではこの4ジャンル以外ありえませんこのジャンル以外でランキング上位は確実に不可能です)
・設定(設定はいくら盛ってもOKなのですが極力説明を入れてください、ゲーム形式にLVやステータス値、スキルの形式で抜き出せば特に読者の大好物です)
・主人公キャラの設定(チート能力を最低一つ用意しましょう、転生移転ものの場合は必ず現代世界時代の主人公設定に引きこもり、ニート、フリーター属性を付けてください)
・展開(多少の波風は必要ですが主人公敗北の展開は絶対に避けてください、なろう読者はデリケートです一度の敗北にも耐えられずに感想欄が大荒れし、最悪の場合更新停止に追い込まれます)
・女キャラ(何人いてもかまいませんが、どんなときでも主人公ageを忘れないように、他の男キャラとの会話も極力避けてください)
・敵(ここぞとばかりにウザい性格に、強さも主人公を超えないように、ライバル紳士キャラなどもってのほかですそんなもの書くくらいなら主人公をもっとageろカス)
これをまもりましょう

いつしかテンプレなき作品は淘汰され、現在では、「異世界転生」「ファンタジー」「主人公最強」「ハーレム」のようななろうテンプレが豊富に取り入れられた作品がランキングを独占しています。

そんなテンプレの流れをつくったパイオニア的作品の1つとして有名なのが、現在絶賛アニメ放送中の作品「無職転生」です。

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...なんか今の流れだと「無職転生」をけなした感じになっちゃったんですけど、この作品は小説家になろうの中でも異質の傑作です。

2013年から2019年まで累計ランキングの首位を独走し続け、先ほどのテンプレ作品を多く生みだすくらい影響力があったといってもいい。

現在原作小説は無料で公開されているので、是非読んでいただきたい。アニメの方はまだ序盤ですが、世界観や作画が素晴らしく、原作読んだことない人でも楽しめると思います。
※後で書くように大いに人を選ぶ作品なので、「下ネタ」「ハーレム」が苦手な方はやめたほうがいいです。特に女性には薦められないかな...。

今回の記事では、この無職転生についてネタバレありで真面目に語っていきます!(まだ読んでない方は注意してください)

無職転生の魅力

~あらすじ~

34歳無職童貞ヒキニート。
更には、両親の葬式にすら顔を出さず、自室で(姪で)自慰行為に耽ったのが原因で家から追い出されるオッサン...。
何を隠そう、彼がこの物語の主人公である。

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間違いなく人生詰んでる...。
オッサンは最期に何を思ったか、トラックに引かれそうな高校生を庇うことで死亡

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そんな彼が転生したのは、剣と魔法の世界だった。
どうやら体は子供、頭脳は大人(34歳無職童貞ヒキニート)の赤ちゃん「ルーデウス・グレイラット」として生まれ変わったらしい...。
前世は悔い多き人生。彼は誓う、今度こそ本気だして後悔しない人生を送ると。

魅力① 生々しい人物描写

この作品を語る上で欠かせないのが、生々しい人物描写です。
アニメを視聴した人ならたぶん分かってくれるかと思います。

例えば、主人公ルーデウスは異世界に転生して、醜悪な前世の見た目と違い中々のイケメンへと生まれ変わりました。
彼は前世の何事に対しても中途半端で勇気を出せなかった人生を悔いており、今回の人生では努力を惜しまないようになります。

しかし、前世のニート生活で培った変態的な性格までは改善しません。
メイドや師匠、友達にまで見境なく欲情し、割とセクハラまがいの事もしますし、内面描写は割とクズです。
無職転生を序盤で挫折する人はこの描写がキツかった人も多いのではないでしょうか?

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そんな彼が数々の失敗を通じて自身を省みて、やがて家族をつくり守るために成長していくのが無職転生という作品の大きなテーマです。

次に、主人公の父親である「パウロ・グレイラット」

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爽やかで優しいイケメン父ちゃん
この世界の中でも高い剣術スキル(上級)を持ち、村のママ達からもモテモテ。
表面的にみれば、こんな感じの人物なのですが、無職転生では一筋縄でいかない人物像が描かれます。

まず女に見境がない
主人公の生まれる前には多くの知り合いの女性と関係を持っていて、やらかしまくってます
主人公が生まれた後は落ち着いたかと思えば、メイドと関係を持つ始末。
主人公も割と変態だと気付いてからは「悪友」のような感じで主人公に接する関係になります。

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こんな感じで、人によっては笑えないクズ描写が多数あるパウロですが、父親としては未熟ながら立派そのものです。

父親らしい面を見せようと苦闘した結果、空回りになったりしながらも、主人公を息子として接し、パウロ自身も成長していきます。

・明らかに出来過ぎな息子にかける過剰な期待
・パウロから見たルーデウスは「息子」、ルーデウスから見たパウロは...?

異世界から来た息子と、父親の関係
そんな関係から生まれる歪みと愛情をリアルに描き切っており、ルーデウスとパウロの2人の再会シーンは感動的です。

無職転生では、この2人のように、登場人物の人物像や人間関係がとにかく生々しくリアルに描かれており、この点がなろう系作品では異質です。

欠点無き人物はおらず、多種多様の人生が描かれ、多くのキャラが使い捨てられません

民族差別に苦しみながらも、子供を助ける信念を持つ男は、その明確な信念ゆえに簡単に人を殺めます。

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暴力系ヒロインならぬヒロイン系暴力とも揶揄されるくらい狂暴だった「エリス」は主人公との出会いを通して、目的を持ち、やがて分別のある強き剣士へと成長していきます。

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(作中ダントツ人気!)

ヒロイン「ロキシー」は主人公の師匠として、主人公のトラウマを解決する優しい面を持つ反面、強い顕示欲や達成意欲のために失敗を繰り返していました。彼女もまた、失敗と向き合う事により成長していきます。

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(ヒロインのロキシー。めちゃくちゃ可愛い!)

主人公を慕う極めて優秀な妹は、養育環境とその優秀さ故に人を能力で差別してしまう一面を持っていました。平凡な自分に向き合いながら、ゆっくりと着実に成長していくもう一人の妹とは対照的です。

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それらの描写は偶像的にキャラを親しみたい人にとっては、不快であると思います。実際に妹と主人公の精神的成長を描いたアイシャ編は、その描写の生々しさにより苦情が殺到し削除されました。

しかし、これらの描写が登場人物が生きているかのように感じさせる事に疑いはありません。

ファンタジーでありながら、現実の僕らも悩んでいる人間関係で成長していく姿は、ハリーポッターを彷彿とさせます。

「ああ、俺の周りにもこんな奴いるなあ」
そんな気持ちでみると、より作品を楽しめると思います(^^)

魅力② 重厚な世界観

2つ目の魅力が、重厚な世界観です。

転生作品だけあって、無職転生ではルーデウスが赤ちゃんから大人になるまで成長が丁寧に描かれます。

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幼少期は田舎にある裕福な家で過ごしますが、お嬢様の家→魔大陸...という風に狭かった世界が徐々に広くなっていきます
最初にシルフィ(幼馴染)と麦畑走っていた頃が懐かしい...。

・中世をモチーフにした文明、貴族文化
・魔法と剣術
・10万年以上続く歴史


などが綿密に練られていて、ルーデウスの視点と一緒に世界の秘密が明らかになっていきます。


また、主人公達はこの世界の中心ではありません

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どんどんその才能を開花させ、強くなっていくルーデウスですが、そんな彼が逆立ちしても敵わない存在が出てきます。
生意気なお嬢様も普通にギッタギッタにされるし、ルーデウスの周りの人も決して全員幸福にはなりません。

そんなシビアな世界の中、ルーデウスはやがて神々の争いに巻き込まれていくことになります。

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彼らの目的は何なのか?
謎の存在の正体が分かっていくのは、また後になってから。

ワクワクしながら読み進めるのも序盤の楽しみの1つですね(^^)/

魅力③ ターニングポイント

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作品を読んでいると、類似した設定から先の展開が読めてしまい退屈になっちゃう事ってよくありますよね。

「無職転生」では、そのようなことはありません。
「ターニングポイント」と呼ばれる、それまでの話を根本から覆す予測不可能な変化が突然生まれます。
作中でターニングポイントは5つ存在し、そのターニングポイントを起点として話の舞台がガラリと移動します。

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無職転生をまだ読んでいない方がいたとしたら、最初のターニングポイントまでは読んでほしいです。

ターニングポイント1より前の話は言わばチュートリアル
そこから面白さに深みが出て、無職転生という物語が始まると言っても良いくらいです。

アニメで「ターニングポイント」が来るのはもうすぐです。予測不可能な変化を映像で観れるのが今から楽しみです。

衝撃度の高いターニングポイントは4、2、1の順でした。

特にターニングポイント4はリアルタイムで感想欄が祭りになっていたのを今でも覚えています笑
作中最大のどんでん返しが展開され、そこを起点として謎の存在の正体が明らかになっていきます。

アニメでそこまで放映してくれたら嬉しすぎる...。(´;ω;`)
3期くらいかな...。

突発的にどんでん返しが生み出されているのにも関わらず、違和感なく読み進められるのは、著者である孫の手さんが当初から展開を練りに練っていたからでしょう。Web版を読み返す度にその手腕に驚嘆させられます。

無職転生を楽しむ時は「ターニングポイント」に注目してみてください!

他の魅力

・ヒロインが可愛い
全員可愛い。何なら全キャラに魅力がある。皆違って皆いい。

・ギャグが面白い
下ネタのオンパレードだけど、何だかんだ笑える。

実はここ二年ほど、俺はある病気を患っている。
心と身体の病だ。
詳しく言うのは難しい。
そうだな、球根を例に話をしてみよう。
その球根は山を見たり谷を見たりすれば、その芽を出す。
そして天に向ってムクムクと成長し、雨風では倒せない立派な茎を持ちつつ、先には立派な花が咲く。
しかし、俺の球根は成長せず、花も咲かない。
……要するに、EDだ。
カセットテープじゃないぞ。

・剣神がかっけえ
好きなセリフ。
「合理とは即ち、基礎である」
「自由に生きた奴が強ぇのは、いいなぁ……」

・おバカキャラ達
「魔・界・大・帝」「ニャ」「なの」などなど。

終わりに

「無職転生 - 異世界行ったら本気出す - 」。一般受けを度外視したタイトルや設定、描写の生々しさが、魅力でありつつも、他作品に比べてアニメ化が遅れた理由だと思っています。「小説家になろう」という誰でも投稿が出来て読めるシステムの中で連載され、商業的成功を考えてなかったからこそ、生々しく丁寧な描写が可能になったんじゃないかなと個人的には考えていました。

半ば諦めていた所にアニメ化。めちゃくちゃ嬉しいです。聞けば無職転生の為だけにアニメスタジオが設立されたという気合の入れ具合

色々魅力を紹介しましたが、この作品で描いているのはルーデウスの人生であり、大切な家族です。

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壮大な世界観も魅力ですが、間違いなく主題はこれであり、登場人物の苦闘する姿に僕は感動しました。

もしアニメを観て気に入ったのなら、ぜひ原作小説も読んでみてください。原作は2015年に完結しているのですが、無職転生はある物語の前日譚であり、著者である理不尽な孫の手さんの仕事が落ち着いたら、また新たに連載されるそうです。

楽しみですね(*´▽`*)

とにかく、無職転生はいいぞ!

原作小説

無職転生 - 蛇足編 - 
→原作終了後のお話

ジョブレス・オブリージュ
→主人公の息子ジークのお話

古龍の昔話
古代の神話、世界の秘密が明らかになっていく


~追記~
改めて考え直すと、無職転生の凄さはリアリティそのものではなく、それを面白くする孫の手さんの文章力、構成力かもしれません。

すべての物語はフィクションであり、嘘なのです。

リアリティを描写したり、人物を掘り下げたりすることは、作品に深みをだしますが、それに足りうる表現力がないと、読者にストレスを与えるだけのクソ作品になってしまいます。

無職転生の場合は、それを可能にするだけの表現があったので、累計で首位に立つことができたのでしょう。

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