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【小説】「くしゃみ星人」とぼく


はじめに

この小説は、フィクションです。
実際の人物、物とは異なります。
この物語は、もう直ぐ小学校を卒業する12歳の男の子「海斗(かいと)」が、
小学校の思い出を振り返っている時の話です。




僕は12歳の男子小学生、海斗だ。
今、小学校卒業を間近に控え、
6年間の思い出が詰まった整理箱の中を見てる。

「ああ、こんなやついたなあ。」
そう思いながら箱の中から、1枚の絵を出す。
「懐かしいなあ。小1の夏休みに書いたっけ。
誰にも信じてもらえなかったけど、僕は今でも覚えてる。」


時は5年前、小1の夏休み。
親の実家に帰省することになった。
実家といっても、住んでいるのはおばあちゃんだけで、
おじいちゃんは僕が生まれる3年前に亡くなったらしい。
おじいちゃんは小児科医で、
しょっちゅう風邪をひく子供達を診療していたらしい。

実家に着くと、もうすでに夕方で、
おばあちゃんが夕食の準備をしていた。
そのままご飯を食べて、風呂に入り、寝ることになった。
寝床につくと、父が、
「もう電気切るぞ、さっさと寝よう。」
と言った。
でも、いつもと違う寝床のせいか、目が冴えてあんまり寝れない。
30分ぐらい経っただろうか、寝れないのに寝床にいても退屈なので、
寝床から抜け出して縁側まで行き、そこでしばらく座っていた。

ふと、涼しい風が吹き抜けた。
僕は思わずくしゃみをした。
「ハクション!」
すると、不思議なことに、庭に僕と同じぐらいの背丈の少年が現れた。
「そんなところに座ってると風邪ひくぜ。」
そう言ってその少年は、僕の布団を寝床から引っ張ってきて、
僕の背中にかけた。
「君は、誰?」
僕がそう聞くと、
「俺か、俺はタイゾウだ。」
と答えた。
「さあさ、もう夜も遅いから寝床につきな。」
僕は言われたままに寝床へ向かった。
途中で振り返ったが、その子の姿はもう無かった。

翌朝、目が覚めた。
もう朝だ。
居間に行くと、もうすでに、
父親が新聞を読みながらコーヒーを飲み、
母親とおばあちゃんが朝ごはんの支度をしていた。

朝ごはんを食べて、縁側を見返して見ても、
あの子の姿は無かった。
「やっぱりあれは夢だったんだな。」
そう思った。

しかしその日の晩、昨日のあの少年ともう一回話がしたくて、
また寝床を抜け出して縁側の方へ行った。
しかし、いくらまってもあの子は現れない。
ふと、昨日と同じような涼しい風が吹いた。
「ハクション!」
すると、またもやあの少年が現れた。
「あ、お前、昨日注意したのにまた寝床を抜け出してきたな。
何回言ったらわかるんだ。」
僕はその子に、
「タイゾウくん、君は一体何者なんだい?」
ときいた。
「いいから、さっさと寝床におつき。風邪を引いたら元もこもないよ。」
そう言って聞かない。
仕方なく、また寝床に戻った。

翌朝、気になっておばあちゃんにこの話を打ち明けてみた。
すると、
「ああ。それは多分、おじいちゃんの幽霊だよ。
おじいちゃん、小児科医だったからねえ。
小さい子がくしゃみとかしてると、心配で心配で仕方がないんだと思うよ。
でもあの人、話も顔も面白い人だったからねえ。
幽霊なのにしっかりと存在してるように見えるのかもしれないねえ。」
そう話してくれた。
「あれがおじいちゃんの幽霊?なんだかパッとしないなあ。」
そう思った。
なんせ、体は自分と同じくらいの小学生だったし、
話し方も自分と似てたからだ。

「幽霊の中にも、話しやすいやつとか、
人間を心配してくれる人がいるんだなあ、」と思ってた。
このことを夏休みの日記で書いたところ、
先生にどんな人だった?と聞かれて
この絵を描いたんだ。
確かに、こんな感じのやつだったなあ、と
5年経った今でもわかる。

今はおばあちゃん家も古くなってたから、
引っ越して新しい家におばあちゃんは住んでいる。
あの家に行くことは2度とないだろう、
だが、僕はあの夏の思い出を絶対に忘れない、と決めている。



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