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【小説】あの日別れた君たちと〜第2章〜

登場人物

桜庭 慎司(さくらば しんじ):
男子校に通う中学2年生。
ひょんなことから、1週間の全寮制女子校に留学している。
小学校はアズサ、ハルカ、マユ、ミオと一緒で、
小6の卒業式の日に4人に告白した。

藤原 梓(ふじわら あずさ):
女子校に通う中学2年生。
同じ学年のハルカ、マユ、ミオと仲が良く、
4人のリーダー的存在。
シンジとは同じ小学校の同じテニス部だった。
自身では何も得意なことはないと明かす。

松田 遥香(まつだ はるか):
アズサ、マユ、ミオと同じ学校、クラスで、
少し内気で人見知りな性格だが、
しっかり者で頼れる存在。
絵を描くことが好きで、
美術の才能がある。

綿橋 麻由(わたはし まゆ):
アズサ、ハルカ、ミオと同じ学校で、
スポーツ万能女子。
特にテニスでは120戦無敗の成績を残すなど
その才能に溢れている。

大広 美緒(おおひろ みお):
マユと同じクラス。
勉強が何よりも好きで、
中学受験生活中の年間平均偏差値が79という
並外れた頭で生徒会の会長を務めている。
しかしおっちょこちょいな一面もある
クラスのムードメーカー。



第2章 生活

1日目の授業を受けた後、
俺と同じグループの4人と一緒に生活部屋に入った。
この部屋は上から見ると、
左側に女子部屋、中央に広間、右側に男子部屋があり、
それぞれにドアがついている。

「こんなの、ほぼ同部屋じゃないか、、、」
そう思った。
でも、自分ではない誰か別の男が、
こいつらとペアになるのは嫌だった。

俺がこいつらに告白した時は、
4マタだ、
キモすぎ、、、
なんて周りから言われていたが、
今はもう2年が経っている。
あんまり昔のことは考えないようにしていた。

この学校の寮では、
寮母は存在せず、自分たちで自炊するらしい。
いくら大学附属の中学だからって自炊はやりすぎだと思った。
そんなわけで夕食をこの5人で作らないといけなくなった。

夕食のメニューはカレー。
まさに定番で、いつもだったら進んで料理するのに、
こんな状況でそんなこと言えない。
広間の隅で立ち尽くしていると、
「もうこうなったんだから、これからの1週間楽しみましょ。」
そうアズサが言った。
「大体なんでお前らがこの企画に参加してんだよ、、、」
そういうと、
「いや、あなたこそ何でこんな場所にいるわけ?」
そう聞き返された。
「ま、まあもうこの話題はよそう。」

気を取り直して、カレー作り。
流石にこういうところで何もしないのは男として良くないかなと思い、
最初の下準備だけすることにした。
俺は同じく隅っこの方で野菜を切っていく。
ミオが洗ってくれた野菜を受け取り、
野菜を切ってハルカに渡す。

下準備ができると、
俺は料理ができるまでの間、広間に設置されたテレビを見ていた。
「くそう、、なんて気まずいんだ、
大体男1人なんて話す相手もいないし、
こんなんじゃあ夜寝るまで落ち着けないぞ、、、」
そう思いながら見ていた。

カレーができたらしい。
食事の時間だ。
テーブルに食器を並べ、
カレーを注いで、いただきます。
「うわー。
緊張して野菜小さく切りすぎた、、
こんなんただの具なしカレーじゃねえか、、」
正直言って俺は料理は得意じゃない。
なのにいっつも俺がやる、って言って失敗するんだ。
「素直にこいつらに任せたほうが良かったな、」
そう思ったけど、
「おいしい、、」
そうアズサが言った。
「うん、この野菜少し小さいけど柔らかくて良いね。l
マユもそう言ってくれた。
「この野菜切ったの誰だっけ、おいしいよ。」
ハルカが言った。
俺がほそぼそと手を挙げると、
「おお〜」
とみんなが言ってくれた。



そこで初めて、あることに気づいた。
「ああ、そうか。
こいつらは俺が1人で寂しそうにしているから、
元気を出して欲しくて言ってくれたんだな、」
そう思った。

「みんなすごいな。
それに引き換え、俺は何をしてんだろう。
1人で4人に告白して、
1人でこの4人とペアになって、
1人で勝手に寂しがって。
俺はなんて未熟なんだろう。」
そう感じた。





ご飯が終わると、
みんな何も言わずに食器を片付けて行った。
食事の後はお風呂。
この寮には大浴場があり、
そこで久しぶりに俺の男子校の友達と会える。
湯船に浸かりながら
同じ企画に参加した俺の友達と話した。

「この生活、慣れた?」
俺が友達に聞くと、
「いんや、ぜんっぜん慣れねえ」
そう言った。
「俺女子との関わり方あんま知らんから絶対慣れられん」
別の友達が言った。
「お前はどう?」
俺に聞かれた。
「ああ、まあまあ慣れたよ、」
そう言った。


「そりゃそうか、
こいつら同学年だけど全く知らない女子たちとやってんのか。
そりゃあ慣れねえよなー。
そう考えたらなんか俺すごい幸運だな。
この生活も悪くないかもなー。



風呂が終わったら、
あとは各自寝るだけだ。
「ふうー。
これでようやくゆっくりできるなあ。」
そう思って自分の部屋にいたら
突然部屋のドアが開いた。
そして、アズサが中に入ってきた。
「お邪魔しま〜す。」
そう言った。
「え、、、ここ俺の部屋だよね???」
俺がびっくりして聞くと、
「ああ、この生活部屋ひとつだけ不便なことがあって、
トイレと洗面台はこっちの部屋にしかないんだよね。
だからみんなたびたびお邪魔することになるから、
許してあげてね、」
そう言い放った。

オワッターーーー。
俺の自由な時間。
残念ながらもどこか嬉しい気持ちがあった。




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