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「今日もコピーが書けません」第10話:コピーライターVSアートディレクター

とある広告代理店の会議室。コピーライターPとアートディレクターDは、制作中のポスターデザイン出力を見つめていた。

「こっちの表情は、明るい中に少し憂いがあるんだけど、それがいい。こっちは、ど真ん中の笑顔、朝ドラ、って感じ。で、こっちは、微笑なんだけど品があっていい。う〜ん悩むな〜」

「どれも同じに見えますけど」

「ぜんぜん違うじゃない」

「それより、このコピー、また誤字がありますよ。赤字入れた時にはなかったのに」

「あ、ほんとだ。ごめんごめんチェックミス。デザイナーに言っとくね」

「アートディレクターとかデザイナーって、本当、文字に興味ないですよね」

「文字には興味あるよ。絵として見てるだけで」

「意味には興味ないというわけですね」

「それよりさ、このコピー、あと3文字減らせない?そしたら、ここが揃って気持ちいいデザインになるんだけど」

「3文字減らしたら、なんの意味もなくなるんですけど」

「だよね。じゃあ・・・5文字増やせる?そうすると、ここで行替えして気持ちよくなるんだけど」

「そしたら、これとこれ、漢字やめてひらがなに開きましょうか」

「なるほど〜いいじゃん」

「ひらがななんて、多い方がいいですからね」

「なにそれ?そしたら、文字間と行間も、もうちょっとあけようかな〜」

「なんでですか?」

「文字間と行間なんて、あいてる方がオシャレなのよ」

「そんなもんですか」

「それよりあがってきたタレントの写真、レタッチ激しすぎない?」

「きれいでつるつるしてた方が、夢があっていいじゃないですか」

「だって、これじゃ、20歳くらい若返ってるよ」

「事務所からの赤字はなんて?」

「しわ、くすみ、全部トル」

「全部とったら、こうなるんですね。」

「でも、間違えてほくろまでとっちゃったら、誰かわからなくなる」

「昔、そんな修正ありましたね」

「じゃあ、こんな感じのレイアウトかな〜。よし、じゃあここから詰めていこっと」

「ここからさらに赤字入れるんですか?デザイン会社泣いちゃいますよ」

「入れれば入れるほどよくなるのが好きなの」

「そんな、ミリ単位で移動して変わりますかね」

「ぜんぜん変わるんだから」

「姑ですね、デザイン姑」

「誰が姑やねん。あ、ここハコ組にしたいから、あと2文字増やして」

「そんな簡単に言わないでください。あ、そういえば、同じクライアントで別のポスターもあるんで、ちゃちゃっとアーディレしてもらっていいですか?」

「そんな簡単に言わないで。歴代のアートディレクターに謝って」

「じゃあ姑終わったら声かけてください」

「永遠にやってやろうかな」

「でも、デザインがないと表現にならないから、本当、ありがたいです」

「コピーがないと、意味をなさないから、本当、ありがたいよ」

「「えへへへへへへ」」


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