hoshi ichi

小説書くのが好きな人 読むのも好きです

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短編小説「自販機とおしるこ music mix」

 今、目の前に自動販売機がある。  夜、道の途中にある、長方形のデカい図体。やけに眩しい光は、目の前の田園風景と共に僕と虫を照らしている。  僕がどうしてここに立っているのか、単純にコーンスープが飲みたかったから。ただ、それだけ。なら、さっさと買えばいいじゃないかと思うだろうが、どうも小銭を入れる手が引ける。手の中に100円と50円をチャリチャリ言わせている。  と言うのも、今日の昼間、同僚が職場にて、ウキウキとした顔で帰ってきて、こう言うのだ。  「ちょっ、ちょっ、

    • エッセイ『かっこよくなりたいです。』

       かっこよくなりたぁあああい!。  絶賛、病み上がり真っ只中、絶不調です。それでいて自分の舞台作品も絶賛直し中です。その作業の中で自分自身を見つめ直す瞬間がありました。現実逃避でしょうか?僕の常に心の中の何かを創作する大きな力の一つは『かっこよくなりたい』なのかなと思ったんです。  演劇(役者と2024年の頭に初めて作演出やりまして、今、頑張っている最中です。)や小説、エッセイを書いているのは、単純に自分が面白いものを作りたい。人に見せて、反応をもらうのが快感だ。僕が描く

      • 短編小説『火の川』

         高台から見た街と祭りの明かりは火の川のように見え、僕はぼんやりとそれを見つめていた。  決して、誰かに連れてこられることのなかった祭り。存在は知っていたが祭りに対する興味なんて一つもなかった。ただ、その火の川を初めて見た、小学生の僕は、祭りを楽しみにするようになった。  祭りの存在を教えてくれたのは、唯一、言葉を交わすことができた少年『ハレタ』だった。彼も誰かと仲良くすることもなかった。誰かと話すときはテンションも上げず、まるで、その場をやりすごくように会話を終わらせる

        • エッセイ『思い出とお散歩』

          (エッセイと言いつつ、最初に素敵な音楽をどうぞ。) Ella Fitzgerald『on the sunny side of the street(live at the crescendo)』  街を散歩していると記憶を見る事ができる。  僕は散歩が好きだ。ちょっとした時間で、晴れていて、気分が乗っている日なら、散歩に出かける。気分が乗ってない日は出かけない。家で横になってる。  地元をフラフラ歩く。もしくは、飲みの予定がある日、早めに繁華街に乗り込み、すでに酒の雰囲

        • 固定された記事

        短編小説「自販機とおしるこ music mix」

          全然、ここで何も書けずにいます。 近々、何かしらあげたいと思います。 私事ですが、自分で書いたものを上演する機会があり、今年は新作を書いて、演劇としてやろうかなと思っています。 なので、戯曲とかも載せようかなとも考えてます。 短編小説、あげます。

          全然、ここで何も書けずにいます。 近々、何かしらあげたいと思います。 私事ですが、自分で書いたものを上演する機会があり、今年は新作を書いて、演劇としてやろうかなと思っています。 なので、戯曲とかも載せようかなとも考えてます。 短編小説、あげます。

          明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 と言いつつも、中々作品を投稿せずに年をあけてしましました。 何というか小説とか戯曲とか投稿するのに少し気が引けてしまっていていたところがあります。 ですが今年も頑張ります。 そして新作書きました。

          明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 と言いつつも、中々作品を投稿せずに年をあけてしましました。 何というか小説とか戯曲とか投稿するのに少し気が引けてしまっていていたところがあります。 ですが今年も頑張ります。 そして新作書きました。

          短編小説 「焼け空の一日」

           寒さを感じながら職場まで車を走らせる。工場から離れた駐車場に止め、そのまま入り口まで歩く。その道のりはオレンジ色から紫色、暗闇へ、徐々に変わっている。  更衣室で同じ作業員たちが、同じように着替え、各々の作業場に辿り着く。その中で様々な世間話、根拠のない噂話が飛び交っている。それはそれぞれの作業場に着き、作業を終え、自分の車に戻るまで続く。ここは饅頭工場で作業中は甘い香りが身を包むが、それは単なる空気になっていて、各々はえぐ味苦味で一杯だった。  私の作業場は饅頭の検品

          短編小説 「焼け空の一日」

          短編小説 「記憶を歩く」

           気がつくと、俺が知ってる近所の公園にいた。  記憶が正しければ、さっき会社から出て帰宅しようってところだったはずだ。でも、空の感じは明らかに定時である17時15分の日が暮れている頃合いとは正反対で、おそらく昼過ぎくらいだろう。腕時計を確認したら、それは正解だった。  そして、気になるのは、今、隣に知らない男がいるということだった。 同じくスーツ姿の男。彼は、私のことを見ていた。  「なんすか?」  「気づきました?」  訳がわからず、「え?」を繰り返すばかりの私に

          短編小説 「記憶を歩く」

          短編小説 「隣人と生活」

           働かなくなった私は、スマホを見るわけでもなく、本を読むわけでもなく、テレビを見るわけでもなく、何かするわけでもなく、ただ布団の上で横になり壁を見ている。いや、正確には見えない壁の向こう側を見ている。アパートの住人なんて誰も知らないが、ただ、私の部屋の隣の住人を妄想し、ボーッとしている。  大したことをしていないようだが、私には大きな発見だったのだ。決して、興味を持つ事がなかった隣人に興味を持った。スマホの中の騒音やテレビの砂嵐よりも、何も音を立てずに静かに暮らしている隣人

          短編小説 「隣人と生活」

          短編小説「もちもちでクレイジーなばあちゃんの墓」

           うちのばあちゃんが爆発した。  お葬式の最中にも、それを思い出して悲しみたくても悲しめない。 広い荒野の真ん中で、うちのばあちゃんは爆発した。跡形もなくきれいさっぱり。だから、今、目の前にある棺桶の中はおにぎりが入っている。  流石に何もないのは寂しいからおにぎりを入れてくれと、ばあちゃんから言ってきた。ばあちゃんは自分を爆発することを知っていた。  「たまこ、ばあちゃんは爆発するから棺桶の中におにぎり入れておくれ。あ、ツナマヨで・・・。」  たまこというのは私の名

          短編小説「もちもちでクレイジーなばあちゃんの墓」

          最近全然書けなくて、申し訳ないです。でもやる気が湧いてきました。 ということで新作です。 短編小説「こどもの遊び」 https://note.com/doolittle_1/n/n57e4b4e7ad67 ウォーキングヒム太郎のエンデングで蕎麦食ってるのと、駅を見上げるとホームが見えたので、なんかやる気が出ました。

          最近全然書けなくて、申し訳ないです。でもやる気が湧いてきました。 ということで新作です。 短編小説「こどもの遊び」 https://note.com/doolittle_1/n/n57e4b4e7ad67 ウォーキングヒム太郎のエンデングで蕎麦食ってるのと、駅を見上げるとホームが見えたので、なんかやる気が出ました。

          短編小説 「こどもの遊び」

           子供のころ、『ごろっちゃん』という遊びがあった。  誰が発案したでもなく、友達同士みんなで遊んでいたら、いつの間にかできていた遊びだ。  ルールは、住宅地の中をみんなで一斉に自分の気に入ったものを探しにいく。気に入ったものを見つけたら、『ごろっちゃん』という名前をつける。名前をつけたら、公園に集合する。みんなで『ごろっちゃん』を見せ合い、一番『ごろっちゃん』に相応しいものを決めるという、単純な遊びだ。  その住宅地のものならなんでもいいというルールだった。だから、みんな

          短編小説 「こどもの遊び」

          短編小説「冷めたモーニング」

           私には馴染みの喫茶店がある。土日の朝は必ずモーニングを食べにいくのが習慣になっている。定期的に通いたくなるほど、その喫茶店は居心地がいい。  マスターや、カジくん、マサさんという、私と同じ常連たちも皆、温かい。ユミちゃんという看板娘もいるのだが、誰もが認める美人で優しい女の子だ。もちろんコーヒーだって美味しい。まあ、私自信、コーヒーの味なんて詳しくはわからないが、美味しいと感じる。  店内はカウンター席が7席と、奥にテーブル席が二つ。私はいつもカウンターの真ん中に座る。

          短編小説「冷めたモーニング」

          掌編小説 『梯子』

           僕は今、梯子を登っている。ただ、ひたすら。理由は聞かないでほしい。コンクリートに囲まれていて、狭い。地面はもう見えない。地上もまだ見えない。遠く、遠くに小さく空が見える。それが今が夜で、もうすぐ朝だということを、なんとなく教えてくれた。僕はその小さな空を目指して登っている。  一つ一つ、最初は急いでいたが、やがて急ぐことをやめ、かといって、ゆっくりになる事もなく、ただひたすら登り続けている。    僕が握りしめている金属の棒たちは、ひんやりと冷たく、ザラザラしている。梯子

          掌編小説 『梯子』

          短編戯曲 「さよならがなごる。」

          登場人物 ・姉 東京から帰ってくる元アイドル。      ・弟 姉の帰り支度の手伝いをしていた。  とある東京発の新幹線の車内。窓際にあるに二つの席。通路側に弟が座っている。スマホで暇を潰している。しばらくすると、姉がやってくる。 姉 さっきの子供。 弟 ん?。 姉 さっきの、ホームで盛大にお別れしてた。 弟 小学生?。 姉 うん。 弟 どうしたの?。 姉 スンとしてた。  弟 え?。  姉が窓際に座る。 姉 あんなに泣いてたのに、スンとしてた。 弟 泣き疲れたんじゃ

          短編戯曲 「さよならがなごる。」

          短編戯曲 「砂漠で迷う。」

          登場人物 ・男 サラリーマン      ・運転手 タクシーの運転手  そこは日本にある大きな砂漠。当然、砂しかなく、どこまでも砂の地平線が広がっている。太陽に照らされた、その砂のど真ん中に運転手が座っている。 運転手 あちぃ。・・・だめだ、腹減った。  運転手はタクシーの方を見ている。  男がやってくる。 男   直りませんか。 運転手 無理ですね。 男   すいません。 運転  いや、無理にここまで来たのは私なので。 男   無理言って、こんな砂漠にこさせたのが。

          短編戯曲 「砂漠で迷う。」