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日本屈指のカレー激戦区・神保町にあるエナジードリンクみたいなカレー【エチオピア】

めくるめく神保町カレーと共に(第2回)


🍛お礼🍛

 なんと! 先日投稿しためくるめく神保町カレーと共に第1回、『日本屈指のカレー激戦区・神保町でいちばん美味いカレー【マジカレー】』が単独15000PV&200スキoverとなりました! 
 本当にありがとうございます。これからも隔週で神保町カレーの世界をお届けしていきますので、どうぞよろしくおねがいします!💪( 'ω' )و🍛



インドカレーとイギリスカレー

 東京は神田、神保町。
 カフェと古本と、カレーの街。
 
 そんな神保町には、大きく分けて二つの系譜のカレー屋がある。
(もちろん、それ以外の創作カレーやスープカレーのお店もある)

 ひとつはスパイスを煮込んだ《インド風カレー》の系譜。 
 スパイスや具材のみを煮込むため、とろみが少なくシャバシャバしているのが特徴だ。

 もうひとつは、スパイスと小麦粉を掛け合わせた《イギリス風カレー》(欧風カレー)の系譜。

 イギリスカレーは炒った小麦粉でカレールーにとろみを付けており、ルーの粘度が高いのが特徴だ。日本の家庭で食べられているカレーは、基本的にこちらの小麦粉入りのイギリスカレーの派生である。
 
 もしかしたら、イギリスにカレーのイメージを持つ人は少ないかもしれない。実は、イギリスでは植民地支配していた各地からスパイスを収集することができたため、インドから伝わったカレー文化が発展した歴史を持つのだ。
 カレーが作れるのにどうしてあんなパイやこんなゼリーを食べてるのかは人類史の謎。

 日本のカレー文化は、明治時代の文明開化に伴って欧州(特にイギリス)から輸入されたものが起源だ。カレーはもともと西洋料理として大衆に広がっていった。
 
 閑話休題。

 さて、今回ご紹介するのは、前者の《インド風カレー》。 
 神保町で働くビジネスマンや、勉学に励む学生から圧倒的な支持を集める「食べると元気になるカレー」、【エチオピア】だ。
 

サイケデリック&エキゾチック

 神保町駅から徒歩5分、御茶ノ水駅から徒歩2~3分。
 その店は、先日紹介したカレー屋が集まる魔の《カレートライアングル》の一角にある。

▲カレートライアングル。
いちばん左が前回紹介したマジカレー
▲ほんのり歴史を感じさせる外観だ


 店の名は【エチオピア】
 混雑していない日はない、神保町カレー界におけるスター的な存在だ。
 平日のお昼時には常に10人程度(1・2階合計)が並んでおり、その人気の高さが伺い知れよう。

▲スパイスの効能を謳っているカレー屋は珍しい気がする

 神保町のエチオピアは1階席と2階席がある。1階は【カウンターがメインのソロ向け】で、2階は【テーブル席がメインの団体(2~4人)向け】といった様子だ。

 もちろん、ソロでも2階を利用することができる。2階を利用するときには、1階の入り口ではなくその横にある階段を登って店に入ろう。
 1階と2階の列は別になっているので気を付けよう。1階に列ができているのに2階席は空いている……なんてこともたまにある。
 

▲2階席へと続く階段。趣だ。
待つときは、この狭い階段に並ぶことになる。

 
 さて、中に入り、食券を購入する。
 写真撮影時は午後4時なのでお客さんは少ないが、平日のお昼どきであればほぼ満席だ。

 とはいえ長居するような店でもないので、比較的回転は良い。きっとスムーズに入ることができるだろう。

▲おすすめはチキンカリー。
▲食券式。現金のみなので注意
▲趣のある店内(1階席)
▲ちなみに元はコーヒーのお店らしい。

 店内にはエチオピア~自家焙煎珈琲~という看板が吊るされている。これはコーヒーを扱っていた時の名残らしい。

 ちなみに店名の「エチオピア」はアフリカ北東部の国の名前だが、この店で提供されるカレーとは一切関係が無い。  
 
 タイカレーとかインドカレーとか、地名がカレーの名前になってる類のものではなく、本当に一切カレーと関係がない。

 なら由来は何なのか――どうやら、店名の「エチオピア」は、当時この店の名物だった「エチオピアコーヒー」が由来だそうだ。

 カウンター席に案内され、店員さんに食券を渡す。
 注文したのはチキンカレー(920円)。

 注文時に「辛さは?」と聞かれるので、レベル0~70から好きな辛さを選ぼう。レベル0が一般的な中辛、3が辛口らしい。 
 筆者は辛いモノ苦手なので、とりあえず1辛を選択。

 注文してすぐに、銀のボウルに入ったジャガイモを渡される。

▲卓上セット。お冷、カトラリー、お手拭き、そして塩(2種)
そしてジャガイモ

 このジャガイモ、なんとお代わり自由。
 前菜として食べてよし、カレーにつけて食べてよしという優れもの。とはいえエチオピアのカレーはライスの量が多いので、ここでいっぱい食べてしまうと危険だ。お腹の空き具合と相談しよう。


 卓上にはジャガイモにかける用の塩が2種類。
 通常の塩のほかに、オリジナルの【スパイス塩】が用意されている。

 せっかくなので、スパイス塩を振っていただく。

▲スパイス塩。マーガリンも頼めばもらえる。
▲やや小ぶりなジャガイモ。
いただきます

 味は特に変哲のない蒸かしイモ。
 一般的なそれよりも若干水分量が多く、ホクホクというよりシャクシャクといった具合だ。

 軽い口当たりにスパイス塩のアクセントが加わり、食欲が一気に加速する。
 今か今かとカレーを待っていると、ついにチキンがたっぷりと入った、チキンカレーが運ばれてきた。

 待ち時間は7分~10分弱程度だったが、ジャガイモのおかげでいいウォーミングアップが出来た。舌は今か今かとスパイスの到来を待ちわびている。


▲チキンカレー(920円)
スパイスの粒ひとつひとつが、存在感を示す


▲福神漬け

 ではさっそく、福神漬けを添えて——いざ、実食!!



▲シャバシャバのルーとライスを共に。
いただきます。

――パクッ。

……

…………?

―—————


——————!?!?!?!?

―――――――――――――――――――――――———————————————————————————————————————————————————んン!?!?!?!?!?!?

  
 あれ……ッ!? 苦い……!!??

 口に入れた瞬間、自らの舌を疑った。

 苦い——甘いでも、辛いでもない。
 カレーの評価軸としてあるまじき「苦味」

 疑いのあまりすぐに次を口に入れるが————やはり苦い。

 というか福神漬けも苦い! なんだか鉄の味がする。

 正直、辛いものは苦手だが、苦いものはもっと苦手だ。
 在りし日の記憶が思い起こされる。オブラートの使い方を知らなかった私が、オブラートを薬包紙みたいに使ってしまった日のことが。

 その時、私は漢方薬を飲もうとしていた。オブラートごと飲めばよかったものを、わざわざ漢方をオブラートから直接舌の上に出してしまい——中国4,000年の歴史を越え私の舌に降り立った強烈な苦みが、私を苛んだ。

 ―—というか、その時みたいな味がする。

 漢方だ。

 
 エチオピアのカレーは漢方だ。

 よく考えたら、スパイスは少なからず漢方でもある。
 だとするならば、この一皿を食べ進めるあいだ、あの苦い記憶(文字通り)を思い起こし続けることになるのではないか――?

  
 苦みに軽いショックを受けながらも、今度はチキンを食べてみる。

 

▲チキン。でかい。

 まぁ、ルーがこの苦みだ。
 どうせチキンも——


▲——————ッ

―———。


————————ッ!?!?!?!?!?!?!?

————————————————————————————————————————————————————————————————————————————ッ!!!!!!!!!!!!!!!???????

 噛んだ瞬間にあふれ出す、暴力的なまでの旨味

 柔らかなチキンにすっと歯が入った瞬間に、口の中ががチキンの旨味で満たされていく。
 爆発した旨味によってルーの苦みが押し流され——しかし、微かに残る苦みの余韻が肉の旨味を侵すことなく引き立てる!

 旨い——うまい、美味い、旨い……!! 
 

 勢いそのままに、ルーをまた一口食べてみる。

 ……! こ、これは——! 
 美味く、なってる……!?

 苦かったルーが、美味い。 
 いや、味そのものは変わっていない。
 しかし、苦みだけではない、苦みと共にやってくる辛さや複雑に絡み合う大粒スパイスの迫力――そういった、苦みに隠れて見えなかった、このカレーの真髄が見えてきたのだ。

 つまり、慣れたのだ。このカレーに。

  チキンの旨味と甘み、スパイスの辛さ、そして苦み。それを優しく支える安心感のあるライス。
 絡み、解け、結び、実る――あらゆる要素が互いの存在意義を高め合い、漢方的なカレーを至高のひと皿へと押し上げる。

 もう止まらない。
 苦みはもはや心地良く感じられた。

 漢方めいたスパイスが織りなす、サイケデリックな世界観とエキゾチックな風味
 柔らかくジューシーなチキンによる爆発力と、我らがライスによる圧倒的な安心感。

 気が付けば、そこそこの量があったはずのライスもルーもすっかり無くなり、後には皿の底に描かれた「エチオピア」のロゴが残されるばかりである。
 
 最初こそ苦みを感じ不安になったものの、最後まで食べてみると、この苦みがクセになっていたのだった。

 ごちそうさまで――——ん? なんか来た。


▲ランチサービス。日替わりアイス

 まさかのアイス。
 ランチタイム(11時~14時)のサービスらしい。

 カレーのみでも十分な満足度だったのに、口直しのアイスもついてくる。
 もはやこれ以上何を求めようか。独創的で美味いカレーが出てきて、ジャガイモついてて、隠れ家的な雰囲気があって、アイスまでついてくる。  

 圧倒的な満足感と、スパイスによってみなぎってきた活力を胸に、私はエチオピアを後にした。

 ごちそうさまでした。

総評

 苦み、旨味、辛さ、甘さ――目が回りそうなほど様々な味が下の上を走り回る、まさに目くるめくカレー体験だった。

 絶妙な完成度のチキンが独特なスパイスの味と混ざり合い、唯一無二のスパイス体験を生み出している。さらに漢方パワーで身体のコンディションが整うし、ジャガイモもアイスもついてくるのだ。
 これはリピーターが続出するのも頷ける。

 喩えるなら、エチオピアは”エナジードリンク”みたいなものだ。
 
 はじめは取っつきにくくて、よく分からないサイケデリック味がする。しかし、次第にそれがクセになって来て――何より、食べると体調が良くなる気がする。
 
 複雑怪奇で目が回りそうなスパイス体験、まさに、めくるめく神保町カレーを体現したかのような一皿だ

 

テイスティングノート


▲評価はあくまでも個人の主観


さいごに

 さて、いかがだっただろうか?
  
 荒々しいスパイスによる複雑な香味はまさにスパイスカレーの真骨頂。絶品のチキンカレー、ぜひご賞味いただければと思う。

 きっと、このカレーを口にすれば、神保町カレーの探求へと脚を踏み出したくなることだろう。
 

 次回は【5月28日】更新の予定だ。
 ぜひぜひ楽しみにしていてほしい。

 それではそれでは。


エチオピア公式サイト:https://www.ethiopia-curry.com/index.html


※本記事に記載されている情報は、2024年5月時点のものです。
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