販売員をしていた頃の話 1 舐めてはいけなかった
大学を出てからの数年間、販売員をしていた。
場所は仙台駅某所。
とある牛たん屋さんでお土産販売の仕事をしていた。
このお店で販売員を始めた理由。
①牛たんが好き。
②大学時代にレンタルショップでアルバイトをしていた際に接客態度を褒められていい気になっておりこの程度の接客は楽にこなせるだろうという良くないタイプの自信があった。
③休日以外はかなり暇そうなのでゆるく過ごせるだろうと思っていた。
なんとも舐め腐った理由で入社したが、その実態は全く違った。
入社して早々、駅から少し離れた会議室で新人向けの研修が行われた。
会議室に入ると、物々しい雰囲気の女性が立っていた。
接客専門のマナー講師だという。
立っている際の姿勢、つま先の角度、手の位置等、お客様がいない間も徹底して美しい姿勢を守り続けるように指導を受けた。
暇な日にお客様がいない間もその姿勢を徹底し、きちんと立っていなければならないのだという。
指導の中で実践してみるとかなりきつくて、お客様がいない間はこんな姿勢を維持しなければならないのかと絶望した。
苦行だ。
その他にもお辞儀の角度、お客様への目線のやり方、商品説明の際の身振り手振りなど、接客するにもかなり気を遣わなければいけないことがわかった。
どこもゆるく過ごせそうになかった。
あまり気にしたことがなかったが、仙台駅の販売員はホスピタリティを徹底しているのだ。
いざ売り場に入り、暇な時間が発生して周りのお店を見ると、どのお店のスタッフもみんな綺麗な姿勢でまっすぐ立っていた。
勿論私のお店の皆さんもそうだった。
そしてお客様が来ると商品の説明を的確に行い、お客様の目線などで求めていることは何かを探り、お客様に合った言葉をかける。
書き起こしてみると簡単そうに思えるが、これが意外とできない。
瞬時にお客様の求めていることを察して的確に動ける先輩たちのことをとても尊敬した。
レンタルショップでのアルバイトの経験なんて一つも役に立たなかった。
自分のできなさに落ち込んだし、お土産販売という仕事を舐め腐っていた自身を恥じた。
それでもお店の皆さんは優しくて気さくで楽しかったし、牛たんが好きで自社の商品に誇りを持っていたからこそお客様への説明の時は熱が入ったし、試食用の牛たんが余ると持ち帰らせてもらえたし、仕事自体はとても楽しかった。
入社して3ヶ月ほど経ったあたりから、お客様の求めていることを少しずつ見極めることができるようになっていった。
気が付いたらレンタルショップでバイトしていた頃のようなフランクさも出てしまっていたが、それがまた好評で私を目当てに来てくださるお客様も増えた。
意外とこの仕事が向いているのかもしれないと思った。
そしてある日、私は店長に呼び出された。
サービスコンクールに出てみないかと言われたのである。
続く
関係ないけど、オフィスの引越しが終わって新しいオフィスでの仕事が始まった。全てが新品でかわいくて最高で居心地が良くて仕方がない。一生居たい。
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