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【禍話リライト】「びちびち金魚」

「金魚と言うとねぇ、これが因果応報になっちゃうんだけどさぁ…」

そのような出だしで語られたのは、大分県のとある地区にいたある男性に関するお話だ。

その男性は小学生の頃、好きな女の子がいた。
しかしその女の子には、既に付き合っている男の子がいた。
そのような関係でもそこは同じ地区に住む小学生。
女の子の家に行って三人で一緒に遊ぶ位のことはしていたのだという。

例えるなら、『ドラえもんのいないのび太が、出木杉と付き合ってる静香ちゃんの気を引きたいから遊ぶ』といった状況の色恋沙汰だった。
しかし傍から見ても、『この二人はこのままゴールだろうな』と、見て取れる関係性だったのだという。

そんな状況が続き癇癪を起した当時のその男性は、女の子の家で飼っている金魚を1匹掴むと、そのまま床に叩きつけた。

           バァン!


音を立てて叩きつけられた金魚はそのまま死んでしまった。


それを見た付き合っている男の子は、
「いくら自分の思いが届かないからって、生き物を殺すことはないじゃないか!そういう生き物に当たるの良くない!」
と、泣きながら抗議してきたのだという。

言っていることは正論である。
またそれを悲しみながら訴える男の子の姿を見て、女の子は(なんて心優しい人なんだ!)と思い、結果二人の絆が深まっていったのだった。

そんな二人とは裏腹に、金魚を殺めた彼には非難の声が上がっていた。

「お前、それはないぞ!」
「金魚何の罪もないでしょ!」

そんな言葉を近所の仲のいい友達からも言われてしまう。
すると彼は開き直り、学校の魚を飼育している水槽に手を突っ込んだのだという。
勿論その後叱責を受けることとなったが、流石に懲りたのか以降二度と同じ蛮行を繰り返すことはなかった。



そして月日が経ち、彼は大学受験生になっていた。

成績は良い方で、合格の難しい私立大学でも大丈夫だろうと思える程だった。

しかし結果は不合格で落第。

翌年も受験するがまたしても不合格。

流石におかしいと思い、周りが尋ねてみると、
「試験が迫ると眠れなくなる」
とのことだった。

それを聞いて全員が言う。
「プレッシャーに弱かったのかなぁ」

しかし彼はより具体的なことを、非常に近しい間柄の人にのみに説明していた。




「寝ようとしたら、耳元で、゛びちびちびちびち゛って音がするんだ…」

曰く、何か小さな生き物が床で、゛びちびち゛と音を立てて細かく動いているような音が聞こえてくる。



それが、


畳で寝ていても、


ベッドで寝てても、


布団で寝てても、


変わらずに自分の横から聞こえてくる。



そしてその音の主が、゛パクパクパク゛と口を開けるような音に交じって、耳元に近づいてくる。



(耳に入ってくる!!!)

「アーーーーーーー!!!!!!!」



近づいてくる何かへの気味の悪さ。

そしてそれが、自分の耳に入り込んでくるかのような感覚を味わい、飛び起きてしまう。



結果全然眠ることが出来ない。


そんな状態である為、睡眠不足でまともに受験に臨むことが出来ず、落第に至っていたのだという。

そしてその怪現象は、普段は起こらず、決まって大事な日の前日に起こる。

それがずっと繰り返されるのだと話していた。



この話を聞いた人の中には、「そんなの言い訳だ」と切り捨てる人もいることだろう。

実際、彼の語った怪現象が現実で起こっていたのか、はたまた自身の非を認められずについた嘘だったのかは定かではない。

しかしいずれにしても、彼が完全におかしくなってしまったのは事実であった。

彼はその後、両親の計らいで、とある施設か何かで用務員のような生活をしているとのことだが、その行く末は誰も知らないとのことだ。



出典:【シン・禍話 第三十七夜(後半一時間半は雑談)】

(2021/12/04)(36:35~) より


本記事は【猟奇ユニットFEAR飯】が、提供するツイキャス【禍話】にて語られた怖い話を一部抜粋し、【禍話 二次創作に関して】に準じリライト・投稿しています。


題名はドント氏(https://twitter.com/dontbetrue)の命名の題名に準じています


【禍話】の過去の配信や告知情報については、【禍話 簡易まとめWiki】をご覧ください。


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