どーる⊿妄ツイ

アルノに脳みそ壊された書き手 小説チックな書き方が主です。

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マガジン

  • 『 』との想い出だけが

    中編「『 』との想い出だけが』」のまとめです! よろしければ前後編両方にスキ!お願いします!

  • 魔法少女アルル

    中編です。前後編の2部作です。2つともハートボタンをポチッと押してくださると嬉しいです!

  • 隣の席の中西さん

    超不定期・超軽いシリーズ中編です! ゆるーくお楽しみください!

  • 花言葉は、せいしゅん!

    長編作品「花言葉は、せいしゅん!」のまとめになります! 各話ここにまとめていきます!

  • ひまわりと月明 (完結済)

    長編?作品『ひまわりと月明』のマガジンになります! 毎話ここにまとめていきます!

最近の記事

  • 固定された記事

泡沫のような奇跡を 《前》

深い、水底まで沈んでいくような感覚を今でも覚えてる。 光も届かない。 音も届かない。 何もない。 誰もいない。 拭えないその感覚を抱いて、私は今日も目を覚ます。 上体を起こして、腕の力で椅子に座る。 それが、私の歩き方。 「朝ごはんまだ?」 リビングに顔を出すと、バターのいい香り。 「あら、今日の授業は……」 「もう夏休み!だからちょっと散歩でもしようかなって」 腕で車輪を回して食卓に着く。 「ついて行かなくて大丈夫?」 テーブルに置かれる、スクラン

    • 『 』との想い出だけが 《後》

      柏手が鳴って、電流が流れたように、私に衝撃が走る。 記憶、思い出…… 私の、本当の。 ========== 古びた、誰も寄り付かない神社。 参拝に来る人も居ない。 なんなら、誰の目にも映っていない。 神様は忘れられたときに死ぬ。 日に日に、体に力が入らないことを実感していて。 私はもうすぐ、死ぬんだろうな。 そう思っていたある日。 「……………………」 小さな、男の子。 四歳、五歳くらいかな。 じっと、鳥居の向こうから私の方を見つめていた。 正確

      • 『 』との想い出だけが 《前》

        バス停の古いベンチ。 変わらない静かな海。 太陽と防波堤、影が動く。 進学を機に地元を出て二年。 あの頃は飽きるほど見ていた海も、なんだか懐かしく思える。 潮風の匂いに、潮騒に。 脳の隅の方をくすぐられる。 息を吸い込むたびに、心がもやもやする。 瞬きをするたびに、『 』がそこにいるんじゃないかと思う。 でも、肝心のそれが思い出せない。 『 』が誰なのか。 そんな簡単なことが、思い出せないままだった。 ========== 水に包まれていると、どうし

        • 魔法少女アルル 《後》

          「アルノ、迎えに来たよ」 「窓から来なくてもいいのに」 くすくすと笑うアルノ。 「ちょっと失礼」 俺は、そんなアルノを抱えて、窓から飛び降りる。 「やっぱり○○はすごいね」 「鍛えてるからな」 夜の散歩。 体の弱いアルノにとっては貴重な外出。 「さあ、お姫様。お手を」 「私のこと姫なんて呼ぶの、ちゃんとした式の時だけのくせに」 街を囲うようにぐるりと建てられた壁。 その中心に聳え立つ城を背にしながら、酒場だけが盛り上がる夜の街を二人で歩く。 「フードははず

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        泡沫のような奇跡を 《前》

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        • 『 』との想い出だけが
          2本
        • 魔法少女アルル
          2本
        • 隣の席の中西さん
          2本
        • 花言葉は、せいしゅん!
          1本
        • ひまわりと月明 (完結済)
          12本
        • シリーズ中編「俺の義理の姉がとんでもなく可愛い」
          14本

        記事

          魔法少女アルル 《前》

          東京と言えど、都心から少し離れればそこは閑静な住宅街。 夜の風は、静かに木々を揺らす。 「はぁ……はぁ……」 そんな不気味な夜。 汗だくになりながら走る少年が一人。 「こんな時間に……コンビニなんて行くんじゃなかった……!」 路地を一本右に曲がり、息をひそめる少年。 口を押さえて、少しの音も漏れないように努める。 「…………」 ひた、ひたと近づく足音。 ドクドクと強くなる心音。 「…………」 ひた。 ひた。 …………。 「…………?」 少年は、

          魔法少女アルル 《前》

          うそつきは初恋のはじまり

          物静かで、何考えてるかわからない。 アイツに、そんな感情は一ミリも無かった。 「なあ……いいか」 「わたし……?」 ただの罰ゲーム。 ウソの告白。 「言いたいことあんだけどさ。ちょっと、ついてきてくんね」 「…………いいよ」 俺たちの『ウソ』の恋仲が始まることになるなんて。 ・・・ 「中西ってさ、な~んか近寄りづらいよな~」 「それな。何考えてるかわかんね~んだよな」 中西アルノ。 同じクラスの女子生徒で、頭がいい……以外はあんまり思いつかない。 休み時

          うそつきは初恋のはじまり

          気づいてよ、バカ......

          「私……恋してるみたい」 私は今、恋をしている。 彼のことを見ていると胸が苦しくなるし、四六時中彼のことを考えてしまうし。 それを、友達に相談したんだけど…… 「えぇ!だれだれ!!!」 「三組のあの野球部のエースの人とか?」 「うぅ……」 圧が強いというか、急に眼の色が変わったというか。 「教えてよ~!」 「きになるな~」 私が相談したのは、同じクラスで親友とも呼べる姫奈と瑛紗。 ……相談する人を間違えたかもしれない。 「だ、誰にも言わないでよ……?」

          気づいてよ、バカ......

          舞い落ちる雪、花びらに変えて

          分厚い灰色の雲が空を覆い、大粒の雨がアスファルトを打ち付ける。 「この度は……」 頭の中を反芻する雨の音。 鼻孔に残る線香の匂い。 喪服に身を包んだ親戚たち。 全部が徐々に心を蝕む。 なんで、僕だけが。 どうして、僕の周りの人だけが。 僕は、耐えきれなくて式場から静かにいなくなり、雨の当たらない軒下で膝を抱え込む。 「あの子、呪われてるんじゃない?」 きっと、僕が近くにいるなんてことも知らないでひそひそと声を潜めながら話しているんだろう。 「次はだれが引

          舞い落ちる雪、花びらに変えて

          隣の席の中西さんは、ハムスターにも似てるかもしれない

          隣の席の中西さんは、猫みたいな人だ。 何を考えているかわからなくて、気まぐれで。 だけど、猫を撫でる姿はどこか子供っぽくて。 そんな中西さんとようやく挨拶を交わせる関係になったと思っていたのに。 「全員いるか~?中西は……欠席か?誰か知ってるやつ~」 隣の席は今日、えらく見通しがいい。 机に突っ伏している中西さんも、ぽやっとしながら窓の外の木にとまった鳥を眺めている中西さんも今日はいない。 なんだか、寂しいな。 ・・・ 放課後、僕は日直の仕事を教室で一人残っ

          隣の席の中西さんは、ハムスターにも似てるかもしれない

          たまたま立ち寄ったお店の店員さんは、高根の花だと思ってたあの子でした

          真っ青な空を窓の向こうに見ながら、授業間の休み時間は教室前の廊下が生徒で賑わう。 部活の仲間同士、同じクラス同士、中学が同じもの同士。 あちこちでグループが作られて、いろんな話が展開される。 多くのグループは他の生徒から注目をされるなんてことは無いと思うのだが、一つ隣のクラスの廊下前のある三人組の女の子。 校内では、誰が付けたか三人の名前の頭文字を取って『さつまいろ』なんて呼ばれている三人組。 かわいくて、スタイル良くて、人当たりもバッチリで。 それでいて飾らない

          たまたま立ち寄ったお店の店員さんは、高根の花だと思ってたあの子でした

          ペンギンだって空を飛びたい!

          空が、厚い雲に覆われる。 灰色の空が、世界を光から隠す。 『昨夜未明……………なお犯人は…………警察は…………』 聞いてもいないニュース番組を消して、制服に身を包む。 「ちっ……落ちてねーじゃん……」 どうみても不自然な袖の汚れ。 昨日必死に洗ったと思ったのに、落ちていなかったことに腹が立つ。 携帯で時間を確認。 今から出れば間に合うか。 流石に三日連続遅刻はまずい。 「いってきます」 この言葉の返答はないとわかっているのに、どうしてもこれだけは言ってお

          ペンギンだって空を飛びたい!

          ひまわりと月明 『最終話』

          春の陽気に包まれた公園は、子供たちの無邪気な声で溢れ、平和という言葉を具現化している。 ベンチに座って、優しく吹くそよ風を浴びながら目を瞑る。 こうして、何もしないで眠ってしまうのもまた一興…… 「パパー!」 聞きなじんだ声に目が覚める。 「陽葵。どうしたんだ?」 「あたしね、ママといっしょにね、パパにかんむりつくったの!」 「おー!どれどれ?」 僕が頭を下げると、陽葵がそっとそこに花冠を被らせる。 「どうかな?」 「ばっちり!」 「ちょっと……陽葵元気すぎ

          ひまわりと月明 『最終話』

          ひまわりと月明 『第11話』

          指の震え、膝の震え、肩の震え、視界の震え。 木枯らしが落ち葉を舞い上げる音も、雑踏も、今日は無駄に大きく聞こえる。 会場は前よりも大きいし、参加者も観客も前よりも多い。 前回出たコンクールとは規模もレベルも違う。 体の芯から震える感覚。 腹の底がむずむずとする感覚。 「○○……」 「…………あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」 「ネクタイ、ずれてるよ」 「うわ、ほんとだ」 「直してあげる」 ぴしっと立っててとアルノに指示されて、僕はそれにおとなしく従う。

          ひまわりと月明 『第11話』

          ひまわりと月明 『第10話』

          正直、焦りはあった。 自分は何を成しえているのか。 自分は何者になれるのか。 先週の○○のコンクールでの演奏を見るまでは、○○だってきっとそう思っているんだって、心のどこかで安心していた。 だけど、あの日。 あの日、間違いなく○○は何者かになろうとしてた。 昔の○○の姿を見た。 いつもいつも俺の前を止まらずに駆けていく○○の背中が、より一層遠くになった。 俺も、何か成し遂げないと。 その結果がこれだ。 地面を見失い、気が付けば救急車に乗せられて病院に運ばれ

          ひまわりと月明 『第10話』

          誕生日を迎えた義理の姉は、一日くらいお姉ちゃんって呼ばれたい

          時計の針が刻一刻と日付の移り変わりが近づいていることを知らせる。 秒針が進むにつれて、それを見つめる俺たちはどこかそわそわしていた。 「もうすぐだ」 「カウントダウンして!」 アルノに言われるがまま、残り五秒からカウントを数え始める。 「3……2……1……誕生日おめでとう」 「ありがと~!」 3月17日。 アルノの誕生日。 アルノの方が一つ上。 とはいっても、日付が変われば俺の誕生日だし、そんなに関係ないか。 「さて、年齢も私のほうがお姉ちゃんになったわけで

          誕生日を迎えた義理の姉は、一日くらいお姉ちゃんって呼ばれたい

          隣の席の”にゃ”か西さん

          高校入学直後で、まだまだ浮ついた空気がぼんやりと残る五月の教室。 隣の席になった中西さんは、なんだか猫みたいな人だ。 目つきとか、ツンとしたところとか。 見た目とか態度の部分もそうなんだけど、一番は行動の部分。 「中西起きろ~」 今日もまた、授業を睡眠時間に充てている。 窓際の一番後ろで、ぽかぽかの日差しが差し込む席で、日光を浴びながら背中を丸めて寝ている。 「えーじゃあここを……」 「はい、わかりません!」 なんて観察をしていると、中西さんが急に起きて当てら

          隣の席の”にゃ”か西さん