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コーヒーブレイク4回目~続き~:全国通訳案内士試験のススメ

~英語力を伸ばしたい学生~
~外国人観光客との交流に興味がある社会人~

向けの記事です。

コロナ禍が明けて、外国人観光客数が持ち直しています。

そして、インバウン丼のように、外国人観光客向けのビジネスも活況を呈しています。

以下の観光庁のグラフでは、2023年の出国日本人数は962万人と過去と比較して海外旅行に行けない様子が浮かび上がります(日本人はすっかり安い国の貧乏な人たちになってしまいました、、、)

他方、訪日外国人旅行者数は、2,507万人と活況を呈しています。

現在、日本人学生が海外に行かなくても、日本国内で外国人と交流することが可能となっています。

そのため、以前、以下で少しだけ紹介した全国通訳案内士試験について、今回、改めて紹介させていただきます。

今回は私が社会人になってからサークル(京都で外国人ツーリストさんにボランティアガイドをするGood Samaritan Clubという名のサークル)の広報誌に寄稿した「通訳案内士のすすめ」を紹介します。


「通訳案内士のすすめ」(2015年5月)

以下は、2015年5月に記載した内容になります。

Samaritanと通訳案内士のコラボレーション

48期生の●●と申します。まず始めに、サマニュー寄稿の機会を頂いたことに感謝致します。今回は「通訳案内士」(以下案内士)という資格を紹介したいと思います。皆サマも普段ボランティアガイドをしていると、最後の別れ際に‟Thank you so much. Your guide is so wonderful that I am fully satisfied with it.“という心温まるメッセージと共に、次の瞬間‟It’s just my appreciation.”とお金を手渡されそうになる機会があるでしょう。皆サマは「これを受け取ってはいけません」と青勉で習いましたね。そうです。これを受け取ってしまうと日本では違法になってしまいます。  

それは「通訳案内士法」という法律が存在して、ここで規定される「案内士」が独占「士」業であるためです。通訳案内士法には、(業務)第二条に「通訳案内士は、報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。以下同じ。)を行うことを業とする。」と記載されています。

法廷での弁論は弁護「士」、企業の監査は公認会計「士」しか出来ないのと同じです。自由に誰でも業務を営むことが出来ず、それに足る能力を持つ人=資格取得者のみが仕事をして、対価を得ることが出来る「士」業の1つなのです。

しかし、この御時世、外国人観光客も増えて、英語で案内出来る日本人も増えている中で、「案内士」だけのみガイドの対価を得るというのは、不思議ではないでしょうか。人の一生を左右する犯罪や命に係わる事故に巻き込まれた際に、それをプロの有資格者に委ねたくなる気持ちはわかります。それと比較して、外国人へのガイドはどうでしょうか。サマリタンズにお金を払いたくなる外国人がいるように、いまや魅力的なガイドを提供出来るのは「案内士」に限らないはずです。ではなぜこの「士」業が存在するのでしょうか。

その理由はこの資格の創設が、戦後間もない昭和24年(1949年)であることと関係しています。当時は、GHQや外交官が日本津々浦々を視察する際に、全行程を英語で案内する付添人(高等教育を受けた人)が必要でした。下手にぼったくりがガイドをして、彼らの日本に対する印象を悪くしてしまえば、それこそ敗戦後の日本復興に悪影響を及ぼす事態になりました。それから、時はや60年が経ち、制定当時から時代背景もガラリと変わりました。いまや2020年のオリンピックに向けて、「外国人観光客を増やせ、日本人ガイドを増やせ」と大合唱が行われる中で、最近急遽この資格にスポットライトが当たっています。新聞では「通訳案内士」=規制として、規制緩和を行い、参入障壁を下げろという論調が見られます。そのようななか、法律を所管している国交省も、試験を運用しているJNTOも、負けじと受験者数を増加させて、多くの人に資格を取ってもらう方向に舵を切りつつあります。(その流れで去年から1次試験英語はTOEIC840点以上であれば免除になりました)一方で、政府も規制緩和PRのために、様々な特別区を作り、その場所に限り一定の研修のみで有料ガイドを認めるような動きを加速させています。(総合特別区域法、中心市街地の活性化に関する法律等)このような、てんやわんやの中でも、敢えて私がサマ現役生にこの資格を薦めたい理由があります。

試験概要

まずは試験の概要説明をすると1次(筆記)試験(①外国語,②日本地理,③日本歴史,④産業,経済,政治,文化の一般常識)→ 2次(口述)試験で、①の合格基準点=70点②,③,④の合格基準点=60点、①はTOEIC840点以上で免除されます。合格率も概ね20%~25%となっており、2014年は全体合格率(全ての外国語平均)が22.7%で、英語は26.6%となりました。  

以上より、努力すれば報われる(合格る)資格であるという特徴があります。かくいう私も2010年(大学3年時)に受験をして1次試験日本史で敗退して、今年2014年にリベンジして合格に至りましたが(言い訳ではありませんが)当時の英語合格率は12%であったため、今と大分差があります。ここまでで興味を持っていただいた方は、是非ともJNTOのHPで過去問を御覧下さい。良質な問題が多く、合格基準60%を考慮すると、ある程度の社会科の基礎的知識があれば、教科によっては勉強時間も少なくて済みます。1年生時からこの資格を知っていて、勉強会でも効率的に知識を吸収することを心掛ければ、ハードルが下がります。サマだと資格を目指す同志が集いやすいので、お互い学びあうのも面白いかもしれません。

次にこの資格の活かし方を説明します。2014年の訪日外国人数は御存知でしょうか。それに対して、この資格登録者は17,736人(2014年4月1日現在)しかいません。66年目を迎える資格です。この間訪日外国人は1.5万人→1,341万人になりました。要は、需要と供給が掛け離れているため、まだまだガイドにお金を払いたい観光客ニーズがあります。この資格の現状を国交省が2009年に調査しています。それによると、案内士の年齢構成は40代~60代が主体、就業日数は年間30日以下が半数以上、年収は200万円未満が半数以上を占めて、専業6.2%, 兼業18.1%, 未就業75.7%となっています。特徴として「片手間で小遣い稼ぎ程度にやっている人が多い」という実態が見えてきます。他方で各種HPを覗くと時給3万~5万という超プロガイドも存在します。以上より、この資格は多様な可能性を有していて、キャリアアップの窓口ともなり得ると言えます。プロガイドになるために、案内士や同時通訳士になり将来ラグジュアリーガイドをする。JTB等の旅行会社に就職してプレイヤーとしても活躍する。将来家庭を持った時に子育ての合間に趣味も兼ねて仕事する。などが想像できます。(私も土日に東京でボランティアガイドをする際の信用力を上げるため+将来何か役立つかもという淡い期待が動機です)

最後に、いまや2020年のオリンピックに向けても観光業が盛り上がっています。私が観光業界で敬愛しているデービッド・アトキンソン氏(「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言」という本はおすすめ)は、「OECD加盟国のGDPに占める観光業の割合は平均8%であり、日本はまだ2%しかない。日本が普通に国になれば残りの6%成長が期待できて、30兆円程の延びが期待できる分野である」と主張して、実現に向けて行動を起こしています。このような追い風を利用しない手はないと思います。

幸運にもサマリタンズは「案内士」との相性は抜群です。皆様に必要なのはCool mindとWarm heart以上に、回りをきょろきょろして、同志を見つけて、未来を描き、時計を見て、集中する気構えです。学生生活は様々な出会いや経験に満ちあふれていますが、こんな資格が世の中にあることを知っておいても損はないはずです。それでは、皆様の学生生活が満ちたものになりますように。

Catch the trade winds in your sails. Explore. Dream. Discover.


「通訳案内士のすすめ」(2024年5月)

2015年に上記の寄稿をしたところ、なんと、2018年以降は、法律改正により通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を有さない方であっても有償で通訳案内業務を行えるようになったのです。

2023年の英語の合格率は12.9%、22年は17.4%となっています。
21年8.5%、20年10.4%、19年9.2%だったのと比較すると、合格しやすい試験といえます。

しかし、独占業務がなくなった通訳案内士は、何のために存在するのでしょうか?



「通訳案内士の存在理由」

通訳案内士の国家試験に合格して資格を取得後、都道府県に通訳案内士として登録すると、プロの「通訳案内士」として活躍できるようです。

通訳ガイド関連団体が実施している新人研修を受け、知識やスキルを習得し通訳案内士としてデビューします。働き方としては、フリーランスとして仕事をする人が多く、旅行代理店や人材派遣会社に通訳案内士として登録して仕事を紹介してもらうという形になるようです。

科目数もそれなりに多く、何よりも本当の英語力や日本の知識を試す試験ですので、楽しく(having fun)勉強できる資格です。

気になった方は、挑戦してみて下さい♪


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