どこかの町の高田

@dokokanotakada 詩が好きです。

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最近の記事

詩 / 浜辺(マーク2)

望み遥けき初夏の浜辺に わたしは一つの思想を思い出そうとしていた この詩の主人公は人類です わたしは人類の最新版のひとりです。 土地訛り、トチナマリ、わたしはけったいな言葉で話し出そうとしている あほらしいこと言わんでええねん、ウツクシイことばっか喋ってようや 言葉商いしとりますさかい、掬い出さなあかん、人生を 運命を。ウチは祭りが好きや、祭りだけを信じとります よいどれ船の行く先はどこや!? どっこいどっこいゆらりゆれて オーダー違いの酒ばっか飲んで、愉快

    • 詩 / 賭け

      せや、あんた、賭けをしようや いまから夏になるやろう、花が咲くやろう その花を愛や誠というものに変えられたものが、勝ちや。 炎天下、お陽さんはえらい過酷な温度で、人を照らすやろう 沸き立つ血が、汗が、俺たちにあたらしい愛の形を見せるやろう  (そうか? あたらしい愛とはなんや?) ヒマワリひとつ、旗や棍棒のように持って 天使に向かって振り下ろす 花弁が散って散ってきれいやろうなあ! 天使は顔を覆って、笑いながら逃げるやろ? 天と地がサカサマになったみたいな、初夏のひか

      • 初夏と海と詩と中原に関する雑記

        例えば、好きな作家について書こうとすると、上手くいかない、というより何も浮かばない、ということがあると思います。はて、と頭を振ってみても何かが出てくる予感がない。しかし、その作家について感じていることは、ある。むしろそれが大きすぎるがゆえに、文章としてあらわすことができないというのが実情ではないでしょうか。 初夏となりました。いや、最近の暑いこと暑いこと、参ってしまいます。このようなときには海に行きたいと、思い立ちます。海というのはひとつの人格であるように思います。人格であ

        • 詩 / 予言

          ふるえそうな体で以って あたらしい思想を生み出そうとするわたしは せめて生を諦めることはしないと決意して いばらの生い茂った沃野を疾走した。 わたしは 自分の言葉で自分の詩を書こうとして 嘲笑もかまわず生きるつもりでペンを執った 生に対して全面的に肯定的な詩人であろうとして 人間のかなしみを祈りに変えるために生まれてきた。 天使は、すでに顕れていることを信じ 星々の光る月のない夜や 浪のようにゆれる稲穂や 春の光に包まれた町や にんげんのあたたかな心などを

        詩 / 浜辺(マーク2)

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        • 5本
        • 読書日記
          8本
        • きらきら町のものがたり
          17本

        記事

          詩 / ラブ・ソング

          忘れてしまうのでしょう? あなたが生きていたことも 初夏 ガキのように大声で歌い エレキギターを掻き鳴らした夜や 血の傾くのにまかせて まぐわったこと あなたが 生きていたことを。 忘れてしまうのでしょう? 私が生きていたことも 初夏 全霊を賭けて詩を書いた 死者とも繋がれると信じ切って 夜は降霊の時間だった 血の傾くのにまかせてあなたを愛した わたしが 生きていたことを 良いロックからは 宇宙のかおりがすると言って ひんやりとした農道に 飛び出してい

          詩 / ラブ・ソング

          詩 / 神さまのために

          うつくしい天使は夏の間だけ街に舞い降りて かなしみを背負ったひとに祝福を授けるのです ワンピースを着た若い天使は 生まれたときの その前のことを考えているのです。 心が貧しいことは、いいこと? 埋まらないココロや、食べても食べても満たされないお腹を 抱えながら生きることは、いいこと? 天使さま、子供にも馬鹿にされることは、いいこと? 裏切られたココロは、どこに行けばいい? うつくしい天使は夏の間だけ街に舞い降りて かなしい嘘をつかざるを得なかった微笑みのひ

          詩 / 神さまのために

          ラブ・アンド・クリティシズム

          夏が来た。海の音はいっさいの否定を打ち消す。私は愛や、誠実という言葉の意味をかんがえながら、それでいてよこしまな考えにもふけってしまう。ニヤリ、と笑ってみる、トンビの声が高く聴こえる。 遠くでは世音香が波の近くで跳ねてあそんでいる。飛沫のように散っていく波、笑う世音香、彼女は気が付いているだろうか、すでに彼女は人ではない、鹿のように跳ねまわり、天使のように笑う彼女は。 すべてがみな静止した映画のように見えて、その美しさにくらっと来てしまう。人間はかくもうつくしくくるえるの

          ラブ・アンド・クリティシズム

          都美子と梨花

          目に映る景色は、百億の名画にも勝るぜ。都美子はワンカップ片手にもう出来上がっています。梅雨に差し掛かるきらきら町の河川敷は、思うままの光をみせて、ほんとうに美しかったのです。 「なあ、魔法少女ちゃんもそう思うでしょ!? どんより雲も銀幕だと思えば美しいなあ!」 「やめてください、酔っ払い。私、こんなことに付き合ってる場合じゃないんですけど」 「ええ!? いいじゃんいいじゃん、世にも珍しい現代の巫女からのオサソイだよ?」 都美子は魔法少女梨花にウザがらみをしていました。

          批評絶頂感

          明らかな祈りせめて歌になるまで。美香は今日もオヒメサマごっこを続けている。授業で教科書を男子と共有している。美しいものは夢……、ならば生殖は悪? 俺は笹原っていうんだ、男で、大学生で、部活の所属はなし、そんでもって高校生の時に買ったレスポールを後生大事にもっている。尊敬するのは小林秀雄、池田晶子、懐疑しているのは若松英輔。俺は、あたらしい生存の倫理を探している。 明らかな祈りせめて歌になるまで。美香、俺はお前を批評してやろうと思ってるんだよ。お前の祈りや、前世に持っていた

          約束

          失った衛星を探して二十四年、私はどうやらキラワレ者らしい。ということだけが分かった。捨てられてばっかりの人生だ、サヨナラすら言わせてもらいなんてね。口が悪いこと、小手先で隠してたら皮肉屋になっちゃった! 馬鹿らし、虚しいなあ。 失った衛星を探して二十五年、失った衛星ってなに? 分からないものばかり追いかけてたらバカになっちゃうよ? (うつくしいという言葉を禁句にしようよ)どこかでカラスの群れが死んで、シャワーみたいに降ってくる。 言えない、言えないことばかりだから、いつか

          世音香

          しん、と静まった朝に 海は潮を寄せていた。 わたしの舞が永遠に連なると信じて おわらないうたの断片を歌おうと咽にちからを込めた。 (らー……) わたしは力が抜けてしまう。現世からかろやかにはなれ わたしは前世のともだちに会いに行こうとしている 腕をゆるやかに伸ばし、腕はひかれみちびかれ わたしはついにきれいに、はっきょうする。 しん、と静まった朝に 海は春を撫でていった。 わたしは快い感覚につつまれたと思ったら 急に涙があふれだしてしまう。 (これは

          芹川と輝波

          輝波さん、俺は世界に子種を落とそうと思ってる。むろんあなたにも、風にも、木々にも、雨にも、雪にも、万葉集に描かれたすべての自然物にも。そして最後の一人に出会うまで、うつくしい女すべてに。俺はもうさみしくない、何編言ったってさびしくないんだ。本当だよ。 夏が来る。夏が来ると芹川は会いたくなる異性がいる。それはきらきら海浜公園の海だ。春の終わり頃の日に、始めて人気のない海に浸った。抱き寄せられて、射精のように気持ちよかった。それから輝波海とはずっと仲良しだった。春が終わるたびに

          笹原秀雄の現代批評

          言葉にならないくるしみが、笹原を覆いました。なぜ、俺は俺でしかないのか、なぜ、俺は俺の人生しか歩めないのか。笹原は不思議で仕方がなかったし、つよい憤りすら感じていたのです。 笹原は午前2時の人通りも車通りも少なくなった道路で踊る。ゆるやかに身体をひらき、まわし、ときに低く高く唄いました。(俺が、俺がひとつの舞となれば、俺がもはや個人というものから抜け出してしまえば、俺が、他人の心をこのからだにそそいでしまえば、俺はすこしはマシになれるだろ?) なれるだろうか、笹原は懐疑す

          笹原秀雄の現代批評

          ミシンの海遊び

          ぜんらで海にダイブ。私はあたらしい思想を待っている。桜流しの雨がふって、もう季節は動き始めているんだね。私はどこに行こうか。誰も傷つかない国へいこう。私は梨花のようなヒーローにはなれなかった。 海はわたしを抱いてくれるから好き。だいすき。わたしを殺してくれるから好き。わたしを生かしてくれるから、すき。潮が、しおが、し、お、が。わたしの血をゆるやかにかたむける。うつくしいものは汚いところからはじまる。遠くの方で雨。 私は生きていたいんだ。私は生きていたいんだ。私は・・・・・

          敵役の春

          敵役は変身もせずに、踏切を待っていた。 スーパーからの帰りで、家路に向かう途中の踏切だった。敵役こと岩下隆は、今日は暑い春の日だからと、そうめんとキムチと氷を買った。すべて混ぜて、食べるつもりだ。揖保乃糸は買えなかったからなんか似た変な名前のそうめんを買った。 まあ別に、ニセモノでも悪くないよな。ニセモノであることを誇れば。岩下隆は、考えていた。そして俺は一生敵役を抜け出せないだろうと、思った。カンカンカンカン・・・・・・。踏切が赤く唸る。敵役は、今までに自分を嫌った人た

          魔法少女梨花

          梨花は考えていました。この町を救うにはどうすればいいのかと。魔法のステッキが光っても、ビームが炸裂しても、根本的解決には程遠いと思ったからです。 空に浮く、ステッキをかざす。夕焼けのひかりがジュエルにあつまる。私は魔法少女、齢十四歳、大人びてしまった暴力で、だれを助けるの? 化物。街を襲撃する彼らは、一様に寂しい顔をしている。いたみを知った美しい顔だ。私はそれに値するうつくしい思想を持つか? 分からない。梨花は通報があってもしばらく放置しているときがある。五分ほど。 梨