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犬はどのくらいグルメなのか~味蕾にかかわる意外な事実


いよいよ“食欲の秋“の到来ですね。そこで今回のテーマは、味覚について。

イヌは味覚オンチといわれることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。

細胞学的には、 草食動物>ヒト>イヌ>ネコ


味覚が発達しているかどうかの目安になるのが、味蕾 みらいの数です。味蕾というのは、舌の上面にある味覚の受容器のことで、その形が花のつぼみに似ているところから名がつけられています。

ヒトの味蕾は約1万個あり、甘み・塩味・酸味・苦味の4つの味を識別できます。一方、イヌの味蕾は、ヒトの5分の1以下の1700個程度しかありませんが、研究によってイヌもこれら4つの味に反応することがわかっています。


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スイカは、92%が水分であるため、暑い夏の日に犬が水分補給をするのに最適な食べ物のひとつ。
ただし最初に皮と種を取り除いておくべきです。そうすれば腸閉塞を引き起こすリスクを回避できます

イメージ的には、イヌよりネコのほうがグルメという感じがするかもしれません。ところが実際には、ネコの味蕾はイヌよりずっと少なく470個ほど(780個という説もある)。

だからといって、イヌのほうがネコよりグルメだと短絡的に結論づけることはできませんが、細胞学的には、イヌの味覚の幅は、ヒトよりずっと狭く、ネコよりはだいぶ広いといえます。

一方、草食動物の味蕾の数は、すこぶる多いという傾向があります。ブタとヤギは約1万5000個、イエウサギは1万7000個、ウシは2万5000個もの味蕾を持っています。この理由は、草食動物の餌場である草原を思い浮かべるとイメージできるでしょう。

草原には様々な草が入り混じっています。草の中には草食動物から身を守るために毒をはらんでいるものもあります。そこで草食動物は、ぱっと見には区別ができそうもない草の中から毒になるものと栄養のあるものを判別しなければなりません。 そのセンサーの機能を果たすのが味蕾なのです。

豊富な味蕾のおかげで、毒を感知したらすぐに吐き出すのです。 煎じ詰めて言えば、 “毒見 “が 味蕾を発達させたというわけです。


肉食に適している証拠


イヌとネコの味蕾には、細胞数では開きがあるものの、共通した特徴があります。
それは、塩分に対する反応が鈍いという点です(イヌ科、ネコ科以外の 大多数の哺乳類は塩分を感じる味蕾が備わっており、塩味を感じることができる)。

塩味をあまり感知しないというのは、肉食に適している裏付けのひとつといえそうです。なぜなら肉には天然のナトリウムがバランスよくふくまれているからです。

塩味に反応する味蕾を、とりたてて発達させる必要がなかったということなのでしょう。その代わり、甘み・塩味・酸味・苦味の他に、肉や脂肪に関連する化学物質に反応する特別な味蕾がそなわっています。

どうりでイヌが、肉や、肉から抽出されたエキスを好むはずです。

イヌは、雑食動物に分類されていますが、実は、オオカミや野生犬の食事の80パーセント以上は肉なのです


かなりの甘党


イヌの味蕾が最も敏感に反応するのは、甘味に対してです。バナナやふかしたサツマイモをイヌに差し出せば、喜んでたいらげる。 そんな経験があなたにもあるかもしれません。

イヌは、かなりの“甘党”といえるでしょう(だからといって、人間の食べる甘味料たっぷりのケーキやアイスクリームを与えることはやめましょうね)。
 
甘い味の好みは、雑食性の祖先が野生下で食べた果物や野菜から開発された可能性が高いと考えられます。

ジャッカルは、果樹園を荒らすこともあれば大量の草を摂取することもあると報告されています。


水を味わう味蕾がある


イヌの舌には、ヒトの舌にはない、水に反応する特別な味蕾があるといわれています。イヌがおいしそうに水をがぶ飲みするのはこのせいなのかもしれません。

この味蕾は、舌の先端にあり、常に水に反応し、塩辛い食べ物や甘い食べ物を食べた後はいっそう敏感になるようです。

野生のイヌ族が、脱水する可能性のある特定の食物を摂った場合、より多くの水を必要とすることから、このような特別な味蕾が発達したのではないかと考えられています。

動画:超スローモーションで活写した犬が水を飲む瞬間。まるでスプーンのように舌先を丸めて水を吸い上げている

sauce:How Dogs Really Drink Water | Vidis


どのように食べ物の好みを決めているか


それではイヌは、食べ物の好みをどのようにして決めているのでしょうか?

ここまでわかった犬たちの内なる世界 〜#07 「嗅ぐ」ことで人の見えないものを見る』でお話したように、イヌは人間の60倍もの嗅覚受容体を持っており、嗅覚に専念する脳の領域は、人間の40倍です。

この事実からも、においが好みを決定づける原動力になっていることは容易に想像できます。

とはいうものの、食事の際に、必ずしもにおいを優先させているわけではないようです。

ある実験で、味のない食べものに肉のにおいを付けたところ、イヌの関心は続かなかったそうです。おそらくイヌは、におい、味、歯ざわり、舌ざわりなどを総合的に判断して食べ物の好みを決めているのではないでしょうか。

ただ、イヌも人間と同じように、高齢になるに従って味覚オンチになっていく傾向があります。味蕾は本来、10日ほどで新しい細胞と入れ替わりますが、老犬になると細胞の再生能力が衰えてしまって味に鈍くなるのです。


🐶十犬十色、 バラエティーに富んだ犬の好物の数々


この夏の間に、 twitterでこんなことを問いかけました。


いろいろなレスポンスをいただきました。 ここに紹介させていただきます。

中には、好き嫌いなしという回答も。


フォロワーの皆様、 ご協力ありがとうございました!!
重ねてお礼申し上げます!



💜最後に。

AKCのサイトに 興味深い内容がリスト化されています。参考になると思います。

この果物と野菜、食べてもいいか、 食べてはダメか


💁🏼以下も併せてお読みください。

味覚と嗅覚は密接に関連しています。犬の嗅覚の詳細について書いています。


◼︎参考文献

『図解 感覚器の進化』 岩堀修明 (講談社ブルーバックス)


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