残留思念

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理系の博士。Kurzgesagt日本語字幕やってます。 本やマンガの感想、雑記などもあるゴチャゴチャしたアカウントです。 特定の内容のみ興味があるかたは、マガジンをご利用ください。 https://note.com/dogresiduewp/magazines

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オーディブル記録18-19 今井むつみ本を2冊

ことば、身体、学び 「できるようになる」とはどういうことか『熟達論』を読んだ(聴いた)とき、ちょくちょく今井むつみの『学びとは何か-<探求人>になるために』と照らし合わせていた。そうしたら両者の対談本が目に飛び込んできた。これは聴くしかなかった。 内容としては、両者の本に出てくるところをそれぞれ語り合い、すりよせあっていたような印象がある。だが今井氏が為末氏に伝わるように平易な表現で説明し、為末氏がみずからのアスリート時代の経験を例に咀嚼をしていくという流れが繰り返されるこ

    • 岡部閏『グッド・ナイト・ワールド』

      少しだけあらすじ主人公の家庭は崩壊している。完璧主義で、過ちも犯している父親。役割を放棄している母親。ひきこもってゲームをする長男… そんな崩壊した一家だが、それぞれの癒しはオンラインゲーム「プラネット」だった。彼らはゲームの中では互いの素性に気づかぬままに身を寄せ合い、理想の家族を演じ合っている。 そんな中、ゲームのラスボスである「黒い鳥」が現実世界にも影響をおよぼしはじめ、主人公の現実世界での家族関係も変化していく… 世界鬼岡部閏と言えば『世界鬼』である。20歳ごろ

      • Kurzgesagt日本語チャンネルが来てるぞ

        来てる。日本語チャンネルが来ている。 みんな気づいているか?来ているぞ? 経緯2022年の1月、スポンサードを受けたKurzgesagtは一挙に6言語でチャンネルを開設した。日本語のチャンネルもだ。 ワクワクして動画を見てみると…翻訳が異常だった。ネイティブだったら絶対にやらない訳が頻繁に目につく。例えば巨大ウイルスのGirusは日本では”ジャイルス”だろうが、ギルスと訳されていた。ナレーションも何かぎこちなく、棒読みで、多くのファンがガッカリしていた。 翻訳もナレーシ

        • オーディブル記録17『成瀬は信じた道をいく』

          『成瀬は天下を取りにいく』の続編。成瀬の大学受験から、大学1年の冬までを描く、連作短編集。 前作と同様、様々な登場人物が成瀬を目撃していく。 成瀬ファンの小学生、成瀬パパ、バイト先のスーパーのクレーマー、琵琶湖大津観光大使になるべく育った女性… 聴き終わった感触として、やっぱり成瀬の言動は面白く、目が離せない。「成瀬のように周りの目線に振り回されずに生きていかないとな」と思わせてくれる(とくに琵琶湖大津観光大使の話) ただ、それは一作目のメッセージの繰り返しにもなるの

        オーディブル記録18-19 今井むつみ本を2冊

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          オーディブル記録16『熟達論』

          「走る哲学者」こと為末大による著作。集大成的な一冊らしい。 先んじてポッドキャスト『超相対性理論』で為末氏をゲストとして熟達論についてのトークを聴いていた。流しぎみに聴いてしまったが、「面白そうな本だな」という印象は残っていた。 オーディブルで発見し、「だったらこれを聴いた後であらためてポッドキャストを聴き返すのもいいな」と考えて聴き始めた。 概要為末氏は「何かについて熟達する」ということについて、競技人生が終わった後も考え続けてきた。それは個人の経験や実感を振り返って

          オーディブル記録16『熟達論』

          オーディブル記録15『逆ソクラテス』

          伊坂幸太郎に初挑戦。かなり良かった。 小学生を主人公とした5つの短編が収録されており、やっぱり表題作が特によかった。表題作についてだけ語り、あとは一冊全体を通じての話だけ書いておこう。 逆ソクラテス主人公の担任は感じが悪い。生徒一人一人を値踏みする。 「この子はできる子。こいつはダメ。」 そして、その評価を露骨に表にだしてしまう。生徒の本当のポテンシャルなど、簡単に値踏みできるものではないのに。 教師に期待された生徒は本当に成績が伸びてしまうピグマリオン効果や、その逆のゴ

          オーディブル記録15『逆ソクラテス』

          オーディブル記録14『嫌いなら呼ぶなよ』

          自己啓発本によりすぎていたので小説。綿矢りさに初挑戦。 4本の短編が収録されており、楽しかった。 眼帯のミニーマウスフリフリのファッションにこだわり、整形も繰り返す女性が主人公。現代では整形もかなり身近になっているらしく、主人公の思考回路にはむしろサバサバしたものを感じる。むしろ彼女に遠慮なく好奇の目線を浴びせる同僚たちのほうがいやらしい存在に見えてくる。オチも爽快。 神田夕ブレイクしきれない中堅?のYouTuberにハマり、応援のつもりで粘着する女性の話。こういう人、本

          オーディブル記録14『嫌いなら呼ぶなよ』

          オーディブル記録13『精神科医が教える幸せの授業』&『精神科医が見つけた3つの幸福』

          著者は精神科医の樺沢紫苑。精力的に執筆や配信などの活動もしている人のようで、オーディブルには彼の著書がゴマンとある。自分は他にも読書術の本を1冊読んだことがある。 2冊読んだ経緯オーディブルのリストをみていたら『精神科医が教える幸せの授業』というタイトルを見つけた。自分はポジティブ心理学周りの幸福論にすごく関心があったし、160分ほどで終わるごく短いコンテンツだった(※1)ので聞いてみた。すると、ポジティブ心理学とは異なるアプローチの幸福論で、思いがけず面白かった。 この

          オーディブル記録13『精神科医が教える幸せの授業』&『精神科医が見つけた3つの幸福』

          オーディブル記録12『イシューより始めよ』

          著者の安宅和人氏は 東大院→マッキンゼー→イエール大学博士課程→マッキンゼー→ヤフー というバキバキの経歴をたどってきている人。 特にマッキンゼーでの戦略コンサルタントとしての経験に基づく思考術を開示する一冊。 コアとなるメッセージとしては、「どうやって取り組むか」の一つ手前にある「何に取り組むか」こそが大事だぞということ。知的生産に携わる人々には取り組む課題がほんとにいろいろあるだろうけど、でも真に取り組むべき課題(イシュー)は全体の1%ぐらいなのだという。 確かに、

          オーディブル記録12『イシューより始めよ』

          【虚無?】ChatGPTと本質観取をしてみた

          『水中の哲学者たち』と『親子で哲学対話』を読んだことで、本質観取を自分でもやってみたいというモチベーションが湧いてきた。 問題は、そういう場を作るのが大変そうだということである。身近で開催されているものを探すのも、自分で人を集めて開催するのもちょっと大変そうだ… 面倒くさがりの自分の脳内で悪魔がささやく。 「ChatGPTとやってみれば?」 なるほど、それなら今すぐできる。まあ相手には人生経験も五感や直観もないのでどうだろうと思うが、人物を演じさせればいけるかもしれない…

          【虚無?】ChatGPTと本質観取をしてみた

          読書記録『親子で哲学対話 10分からはじめる「本質を考える」レッスン』

          オーディブルで『水中の哲学者たち』を聴き終わってすぐに、amazonで以前に予約していた本書が届いた。見事に哲学対話つながりだ。「前著の記憶がホットなうちに」と読みだしたら2時間もせずに読み切ってしまった。 著者は教育哲学者の苫野一徳。彼が普及活動を行っている「本質観取(ほんしつかんしゅ」と言う哲学対話。それを親子で行った記録になっている。1章で本質観取自体の説明、2章で本質観取の行い方を示しており、3章で20回分の哲学対話が掲載されている。 親子で話すことになった経緯彼

          読書記録『親子で哲学対話 10分からはじめる「本質を考える」レッスン』

          オーディブル記録11『水中の哲学者たち』

          著者は若手哲学者の永井玲衣。哲学対話の運営にも携わっている。そんな彼女のエッセイ。 哲学対話の場に参加しているときの場面が切り取られることもあるが、哲学対話自体の本ではないと思う。基本的に、永井氏が経験したことと感じたことを紡いでいる。そしてその根底には「水中の哲学者」というテーマが流れている。 「水中の哲学者」が意味するところ哲学とは、何かを深く問う営みである。哲学対話の場面では、時間内に答えを出すことも難しそうな、大きな問いが設けられる。例えば「人は何のために生きるの

          オーディブル記録11『水中の哲学者たち』

          オーディブル記録10『ファスト&スロー』

          ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンによる有名すぎる一冊。他の書籍でもシステム1とシステム2の話が度々引用されており、機会があれば読んでみたいと思っていた。そしてオーディブル期間限定無料がその機会となったわけだ。 まずはシステム1とシステム2について、ごく簡単に説明しよう。人間が物事を判断するときには、脳の働きからみて2通りのアプローチがある。 システム1:直観的な早い思考。理性による吟味を経ずに脳がスパッと判断してしまうやり方。スピーディーに、低コストで運用できるが、

          オーディブル記録10『ファスト&スロー』

          オーディブル記録⑨『目的への抵抗』

          コロナ禍で課せられた移動制限。それに対して「緊急事態であることを理由に人々の自由を奪うような法案が通されることに対して、鈍感であってはいけない」というような警鐘をならし、炎上したアベンガンという哲学者がいた。 そんな話から思考は発展し、「何かの目的をたてて、合目的的に自分を統制する」というあり方について疑問符が突きつけられる。それでは自分が生きる日々が、その目的の達成に向けた単なる「手段」に堕してしまう。本当に生きていると言えるのか。 たとえ話として食事が出てくる。食事の

          オーディブル記録⑨『目的への抵抗』

          オーディブル記録⑧『ケーキの切れない非行少年たち』

          少年院で過ごす子供たちの実態や更生プログラムについて考えさせられる本。タイトルの付け方もうまく、重たいテーマのわりにかなり有名になっていた。記憶にある人も多いのではないだろうか。 著者は、強姦や殺人などの重い犯罪を犯した子供たちのIQの低さに驚く。非行少年たちには、境界知能に該当するものも多く、現実の認識能力が低いことがわかる。そのように現実の認識能力が低いと、他者の言動を悪いようにとってしまったり、例えばレイプもののAVを真に受けて、相手も喜んでくれると思い込んで犯行に至

          オーディブル記録⑧『ケーキの切れない非行少年たち』

          オーディブル記録⑦『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』

          著者は尾原和啓。同著者の『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』を読んでいたこともあり、オーディブルのラインナップで見つけて聞いてみた。 「今どきの若者はすぐに会社をやめてしまう。無気力で困ったものだ」 そう思えるかもしれないが、そこには時代背景が関わっている。昔は物が無かった。仕事に励むことは、モノが充実していくこと、日本が発展していくこと、自分の地位が上がっていくことに直結していた。だけど今の若者はモノがあふれているところから始まっている。だから飢えていない「

          オーディブル記録⑦『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』