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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.065

労働者災害補償保険法(5)

保険給付Ⅱ

今回は、障害に関する給付です。療養の甲斐もなく、残念ながら障害が残ってしまったときの給付です。ですから、前提として療養の給付や休業に係る給付があるはずです。
傷病(補償)等年金の受給者は、障害(補償)等年金へと移行する可能性が高いです。また、同じ等級で移行した場合は、同じ給付金額になります。

①障害(補償)等給付

1.種類及び額

障害(補償)等給付は、労働者が業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかり、治ったときに身体に障害等級に該当する障害が存する場合に、その障害等級に応じ、次表(詳細略)の額の障害(補償)等年金又は障害(補償)等一時金として給付します。
また、障害(補償)等年金を受給している者が就職して賃金を得た場合であっても、傷病(補償)等年金等が減額されたり、年金の支給が停止されたりすることはありません。当然、一時金の受給者に対して、一時金の返金を求めることもありません。これは、障害者の勤労意欲を尊重するということです。国にしても、賃金に対しては厚生年金保険料や所得税等も課せられますのでありがたい、ということもありやなきや。。。(笑)
試験対策上は、給付の対応関係が同じ第1級~第3級と、『両端』(つまり、年金の最低の第7級と一時金の両端の第8級と第14級)ぐらいを押さえておけば十分かと思います。(両端以外が出題されても、『それらしい数字』を選べると思います。)
(保険額抜粋)
・障害等級第1級~第3級は、傷病(補償)等年金と同じで、1年につき給付基礎日額の313日分、277日分、245日分
・第7級(年金の後端)…1年につき給付基礎日額の131日分(第1級の313と『数字が逆』と覚えれば忘れないかと思います。)
・第8級(一時金の最大)…給付基礎日額の503日分(一時金なので、これで終わりです。なので『一時金で困るさ。。。』という語呂合わせがあります。)
・第14級(一時金の後端)…給付基礎日額の56日分(強引にひねり出すと、週1回(52日分)+大晦日~正月3日までの『もち代』として計4日分との合計56日分。あながち見当違いでもないかも?)

2)併合等

1.併合

『同一の事故による』(以下、すべて『同一の事故による』です。)身体障害が2以上ある場合は、原則としてそのうち『重い方』を全体の障害等級とします。(併合)
例示すると、同一の事故により第14級と第7級の障害がある場合は、重い方の第7級となります。
次の2.『併合繰上げ』を見たら気がつきますが、この『併合』が原則とはいうものの、これが適用されるのは、片方が第14級(第14級は複数あってもいい)であるケースしかありません。

2.併合繰上げ

同一の事故による第13級以上の身体障害が2以上あるときは、次のように重い方の障害等級を軽い方と併合の上、繰上げて、全体の障害等級とします。(併合繰上げ)
①第13級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の障害を1級繰上げる
例:第13級と第8級がある場合…第7級
第13級も第8級も一時金の給付ですが、併合繰上げの結果、第7級とされるので、年間131日分の年金給付となります。
②第8級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の障害等級を2級繰上げる
例:第8級と第7級の障害がある場合…第5級
③第5級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の障害等級を3級繰上げる
例:第5級が3つある場合…第2級
障害等級がいくつあっても、判断の対象になるのは『重い方から2つだけ』ということです。試験では、例示を出してきて第●級という結果の正誤判断をさせる問題が出されます。例えば、
例:第12級と第10級と第5級の場合…この場合は、第10級と第5級だけが判断の対象になりますので、上記①に当てはまりますので、第4級となります。
蛇足ですが、第5級と第3級の場合、第3級を3級繰上げて第0級なんてことにはなりません。第1級が最大級です。
【唯一の例外】
上記の唯一の例外が、『第9級と第13級』の組み合わせで、この場合のみ、併合繰上げで第8級とはせずに、第9級と第13級の両方が支給されます。理由は簡単で、第9級が391日分の一時金、第13級が101日分の一時金、足して492日分なのに対して、第8級は、単独で503日分の一時金だからです。このような逆転現象が起こるのはこの組み合わせのみです。逆にこの組み合わせしかないので、試験には出ないかも。。。(正答率が高くなるから)。第9級と第13級の方が『ひくいさ』という覚え方があります。
【覚え方】(例)
繰上げる等級数:1+2=3
繰上げる等級の境目:2+3=5, 3+5=8, 5+8=13
『併合繰上げなので、大きい方の2つ数字を順に足していく』というイメージです。でも、こんなめんどくさい覚え方をしなくても、何回か問題集で問題を解いていくうちに、自然に覚えてしまうかと思います。

3)加重

これからの3項目(加重・変更・再発)は、『どのようなケースか』ということをしっかりと理解することが必要です。試験委員の先生も、『ここは理解しづらいところ』とわかって出題してきます。
まず加重です。
既に身体障害(その原因が、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤によるものであるかは問いませんが、私傷病による障害は対象にはなりません。)のあった者が、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による負傷又は疾病により、同一部位について障害の程度を加重(さらに重くした、つまり、障害等級が重い障害になった)場合には、以下①~③のような差額支給が行われます。加重とされるポイントは、
・まず、先発の労災事故による障害(補償)等給付の受給権がある。
・後発の事故も労災事故である。
・後発の労災事故により先発の事故による障害部位と同一の部位に新たに障害が加わった結果、障害等級表上、現存する障害が重くなった。
という場合をいい、自然経過又は再発により障害の程度を重くした場合は加重には該当しません。
また、『同一の部位』とは『一対のもの』も含み、例えば、先発の事故により右目を負傷した労働者が後発の事故により左目を負傷した場合も『同一の部位』となります。『耳』『手』『足』も同様です。障害等級表にも、一対であることを前提とした表現がされています。
①先発も後発も障害等級第7級以上(つまり、年金→年金)の場合
加重前後の身体障害の該当する障害等級がともに第7級以上の場合は、(加重の結果、重くなった)現在の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害(補償)等年金の額から、既にあった身体障害の該当する障害等級に応ずる障害(補償)等年金の額を控除した額が支給されます。結果、後発の障害において新たに差額相当額の障害(補償)等年金の受給権を取得することになりますので、この労働者は、2つの障害(補償)等年金の受給権者となります。
一見すると、全体から以前の支給額を引いて、引いた結果残った額を支給するのだから、足したら元の全体に戻るので、最初から、『日数』の方を変更して、後発の障害(補償)等年金の1年間の給付日数分の給付をすることに変更すればいいような気がしますが、この計算の意義は、労災事故が起こった時期が違うので、その時期によって被災労働者の給付基礎日額が異なりますから、単純に支給日数を変更したらいいとすると、先発の給付基礎日額がそのまま後発の障害給付に反映されてしまうからです。
・加重後の障害等級に応ずる年金額-加重前の障害等級に応ずる年金額
規定では加重前の年金額は『支給されていた』とはなっていないので、権利としてもっていても支給を受けていない場合も含まれます。
②先発も後発も障害等級第8級以下(つまり、一時金→一時金)の場合
加重前後の身体障害の該当する障害等級がともに第8級以下である場合は、現在の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害(補償)等一時金の額から、既にあった身体障害の該当する障害等級に応ずる障害(補償)等一時金の額を控除した額が支給されます。
・加重後の障害等級に応ずる一時金の額-加重前の障害等級に応ずる一時金の額
③先発が第8級以下、後発が第7級以上(つまり、一時金→年金)の場合
既にあった身体障害の該当する障害等級が第8級以下であり、現在の身体障害の該当する障害等級が第7級以上である場合は、現在の身体障害の該当する障害等級に応ずる障害(補償)等年金の額から既にあった身体障害の該当する障害等級に応ずる障害(補償)等一時金の額の25分の1を控除した額が、毎年、支給されます。
なぜ、一時金の額を25分の1にするのかといえば、障害(補償)等年金の平均受給期間が概ね25年間なので、一時金を年金とみなした場合の1年間の受給額を控除するということです。
・加重後の障害等級に応ずる年金の額-加重前の障害等級に応ずる一時金の額の25分の1
なお、加重は必ず障害等級が上がることが前提なので、年金→一時金のパターンはありません。
【重複】(多分、試験には出ません。)
また、『同一部位ではない』場合は、『重複』という取り扱いになり、障害等級第1級(18点)~第7級(0.5点)までに与えられた『指数』の合計の指数が該当する障害等級となります(ただし、障害の状況(例えば、上肢の全指の機能が元々失われていた人が、後発事故で同一上肢の肘関節から先を失った場合など)によっては、最大等級の制限が適用される場合があります。)。先発障害が労災事故によるものでなくても同様です。
この重複の取り扱いは、実務上は重要な論点ですが、科目間(労災保険法と厚生年金法等)を横断する問題になるので、多分、試験には出ません。恐らく、科目ごとに試験委員の先生も違うだろうし、試験問題を試験前に擦り合わせることもないでしょうから、万が一、両方の科目で出題されたら、実質『2点』の問題となってしまうためです(筆者推定)。この重複の論点を予備校のテキストや外販教材で見たこともありません。(社会保険科目で、さらっとは触れてます。)例えば、第3級(7点)が2つあれば(合計14点)、第2級(11点以上)になりますし、第3級と第2級(11点)があれば(合計18点)、第1級(18点以上)になりますが、『どうしてこの等級になるのか』はテキスト等では触れていません。

4)変更

障害(補償)等年金を受ける労働者の当該障害の程度に『変更』があったため、新たに他の障害等級に該当するに至った場合には、新たに該当するに至った障害等級に応ずる障害(補償)等年金又は障害(補償)等一時金が支給され、その後は、従前の障害(補償)等年金は、支給されません。新たな障害等級に『上書き』されてしまうというイメージです。ですから、障害の程度が軽減して、年金から一時金の障害等級(第8級以下)になったら、その一時金の給付をもって給付が終了となります。
加重のときのような『差額支給』ではないのは、給付基礎日額は元のまま変更がないからです。
条件をまとめると、
・元々が『年金』であること。
『一時金』だった場合は、その一時金の給付で完結しているので、その後に障害の程度が変わって(増悪又は軽減)も変更という取り扱いはありません。たとえ、障害等級が第7級以上になっても障害(補償)等年金の給付はされないということです。
・元々の傷病(補償)等年金の支給事由となっている障害の程度が、新たな傷病によらず(つまり、前項の『加重』に該当しないこと)、又は傷病の再発によらず(つまり、次項の『再発』に該当しないこと)、自然的に変更(増悪又は軽減)した場合であること。

5)再発

障害(補償)等年金の受給権者の負傷又は疾病が再発した場合は、従前の障害(補償)等年金の支給は、一旦、打ち切られます。(再発による療養の期間中は、支給要件に該当する限り、休業(補償)等給付、傷病(補償)等給付、又は療養(補償)等給付を受給することができます。)
そして、再治癒後の身体障害については、その該当する障害等級に応ずる障害(補償)等年金又は障害(補償)等一時金が支給されます。つまり、再治癒後の障害等級が第8級以下になれば、その障害等級に該当する一時金が給付されて、それで給付は終了となります。
一度治癒した傷病が再発するというイメージがしにくいのですが、内臓や神経系統の障害は外から見えないので『治癒した』という判断が難しく、よくあるそうです。
また、元の障害により一時金を受給している者も、再発と認められれば、『実は治癒していなかった』と判断され、再治癒後に残った障害の程度が悪化したときのみ障害(補償)等給付が行われ、具体的には、『加重』の取り扱いに準じて差額支給が行われます。この『準じて』は給付金額の計算方法のことを指していますが、給付基礎日額は再発の前後で同じです。イメージとしては、『当初の給付金額の修正』という感じです。また、『悪化したときのみ』なので、たとえ再治癒後の障害の程度が軽減したとしても、給付金の差額返還ということはありません。

②障害(補償)等年金前払一時金

障害(補償)等年金は、一定の支払期日ごとに支払われることとされていますが、障害の残った労働者が社会復帰するには、自宅の改装や障害者仕様の車の購入(改造)、車椅子や補助器具の購入など、一時的にまとまった資金が必要となる場合があります。そこで、一定の範囲内の年額を一括し一時金として前払いする制度が設けられています。
『政府は、当分の間、労働者が業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかり、治ったときに身体に障害が存する場合における当該障害に関しては、障害(補償)等年金を受ける権利を有する者に対し、その請求に基づき、保険給付として、障害(補償)等年金前払一時金を支給する。』
つまり、請求しないともらえません。これを必要としない人もいますし、ケチ臭い話をしますと、前払分の繰上げ日数に応ずる利息(1年経過後分について年5分の単利)が付きますので。。。

1)支給額

障害(補償)等年金前払一時金の額は、障害等級に応じて次の額から受給権者が選択した額となります。(詳細略)
基本は、200日分の倍数です。したがって、各等級の『最大給付日数』を覚えておけば大丈夫です。とはいえ、年金が第7級までなので、当然、7つの最大値がありますが、全部覚えるのはコストパフォーマンスが悪すぎで、試験対策としては、『1000日分以上』の第1級~第3級だけで十分かと思います。
第1級…200日分~1340日分
第2級…200日分~1190日分
第3級…200日分~1050日分

2)請求

『障害(補償)等年金前払一時金の請求は、同一の事由に関し、1回に限り行うことができる。』
手続きや利息分の計算がめんどくさいので何回にも分けて請求しないでね。。。ってことです。
『障害(補償)等年金前払一時金の請求は、障害(補償)等年金の請求と同時に行わなければならない。ただし、障害(補償)等年金の支給決定の通知のあった日の翌日から起算して1年を経過する日までの間は、当該障害(補償)等年金前払一時金を請求することができる。』
障害を負った直後は、いろいろと対応することが多く、また、この制度を知らなかったりして、すぐに障害(補償)等年金前払一時金の請求をしなかった場合でも、(手続きがめんどくさいから障害(補償)等年金の請求と一緒にしてほしいけど)1年以内だったら請求できることになっています。ただし、この『1年』の起算日が『支給決定の通知のあった日の翌日』ですが、この日は当然ながら障害事故が発生した日から日にちが経過していますので、最長期間を短期債権の時効の『これを行使することができるときから2年』としています。つまり、治癒した日から権利行使できますので、
・支給決定通知日の翌日から1年
・治癒した日の翌日から2年
のいずれか早い日までに請求しなければなりません。
【支給月】
前払一時金の請求が年金の請求と同時ではない場合は、前払一時金は、1月、3月、5月、7月、9月又は11月のうち前払一時金の請求が行われた月後の最初の月に支給されます。つまり、11月24日に請求したら、翌年1月に支給されます。
厚生年金などもそうですが、『月末24時にスイッチがある』というイメージで、権利が発生したり消滅したりします。私の受験勉強中、この『月末24時のスイッチ』の例外はなかったと思います。

3)支給停止

障害(補償)等前払一時金が支給される場合には、当該労働者の障害に係る障害(補償)等年金は、各月に支給されるべき顎の合計数額(1年を経過したものについては、年5分(※下記注)の単利で計算した額を控除した額)の合計額が当該障害(補償)等年金前払一時金の額に到達するまでの間、その支給が停止されます。利息相当額が引かれますので、1000日分を一時金で受け取った場合、1000日を何日か経過した日分から支給が再開されることになります。『1000日を何日か超える』という事実は実務上大事ですが、試験では、この『何日』は問われませんので大丈夫です。
(注)利率の『年5分』ですが、今後、法定利率が変更されることがあり得るので、その変更があった場合に、いちいち改正をせずにそれに応じた率とすることができるように、固定化した率ではなく、『算定事由発生日における法定利率』と改正されました。

③障害(補償)等年金差額一時金

1)支給要件及び支給額

障害(補償)等年金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者に支給された当該障害(補償)等年金の額及び当該障害(補償)等年金に係る障害(補償)等前払一時金の額の合計額が、当該障害(補償)等年金に係る障害等級に応じ、障害(補償)等前払一時金の最高限度額(上記でいう第1級の1340日分等のことを指します。)に満たないときは、その者の遺族に対し、その請求に基づき、その差額に相当する額の障害(補償)等年金差額一時金が支給されます。
死亡した労働者が、障害(補償)等前払一時金を最高限度額まで受給した場合と受給しなかった場合との均衡をとるための制度です。この制度は、残された遺族のための制度といってよく、仮に死亡前日に限度額いっぱいまで受給した場合は、その全額が相続財産となりますので、それとの均衡を取るということです。また、障害(補償)等年金差額一時金も被相続人の相続財産となりますので、どちらの一時金も、相続税が課せられます。(相続税の対象となるという論点は、税理士試験(相続税法)では出るかもしれませんが、社労士試験では出ないと思います。)

2)受給権者

障害(補償)等年金差額一時金の受給権者となるのは、次の①②の受給資格者(全体としての受給する資格を有する者のこと)のうちの最先順位者(①→②の順序で、①②の中では掲げた順序による者)です。
この順位は、他の年金等も含めて、実務上も試験上も重要です。試験では、事例を出してきて、『誰が受給権者か?』という問題になるかと思います。
①労働者の死亡の当時その者と『生計を同じくしていた』
配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹(ケイテイシマイと読みます。)
②上記①に該当しない(つまり、生計を同じくしていない)
配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
相続税上の考え方には、常に配偶者最優先、以下血縁順位で、生計を同じくしているかどうかの考え方はないのですが、この障害(補償)等年金差額一時金は、『誰が一番、その一時金を必要としているか』という観点で順位が決まってるということです。社労士試験上の他の遺族給付金の順位も、概ね、同じです。
全くの蛇足ですが、相続税の考え方で、『常に配偶者最優先』というのは、その被相続人の財産形成にその配偶者の寄与が相当に大きいということと、概ね、亡くなった被相続人とその配偶者は年齢が近いので、すぐに次の相続が発生するだろうから、結局は、子以下は、その時に回り回って、その被相続人の財産をその配偶者の相続財産として受けるからという理由です。ちなみに、配偶者が法定相続分の相続財産を相続する限りは、配偶者の相続税軽減の規定が適用されて、相続税は課されません。これも、配偶者の財産形成への寄与(実質、法定相続分は配偶者の財産だろうということ)という意味と、近く発生するであろう次の相続発生時に、相続税を課すことができるからという理由です。
なお、最先順位者が2人以上あるときは、そのすべての者が受給権者となり、1人当たりの支給額はその人数で除して得た額になります。。。という観点で、下記の『欠格』を読んでみてください。
【受給資格の欠格】
『労働者を故意に死亡させた者は、障害(補償)等年金差額一時金を受けることができる遺族としない。労働者の死亡前に、当該労働者の死亡によって障害(補償)等差額一時金を受けることができる先順位又は同順位の遺族となるぺき者を故意に死亡させた者は、障害(補償)等年金差額一時金を受けることができる遺族としない。』
要は、『故意に』
・一時金の発生事由を生じさせた者
・先順位をなくして自分を最先順位とした者
・頭割りとなる同順位の者をなくして自分の取り分を増やそうとした者
が欠格となります。
試験上のポイントは、
・いずれのケースも『故意に』死亡させたことであること。(『重大な過失』等の表現で引っ掛けてきます。他の規定で『故意又は重大な過失』という表現があるので、そことの引っ掛けです。)
・故意であっても、『後順位者』を死亡させた場合。(倫理上の問題は問われません。)
は、欠格とはなりません。

④介護(補償)等給付

1)支給要件

『介護(補償)等給付は、障害(補償)等年金又は傷病(補償)等年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害(補償)等年金又は傷病(補償)等年金の支給事由となる障害であって、一定の程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間、(次の①~③に掲げる間を除く。)、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。』
①障害者支援施設に入所している間(生活介護を受けている場合に限る。)
②障害者支援施設(生活介護を行うものに限る)に準ずる施設として厚生労働大臣が定めるものに入所している間
③病院又は診療所に入院している間
いずれも療養の給付その他の給付を受けることができるからです。
【障害であって、一定程度のもの】
次のいずれかに該当する場合です。
・障害等級が第1級
・障害等級が第2級(精神神経障害又は胸腹部臓器障害に限る。)
【障害者支援施設に準ずる施設】
・特別養護老人ホーム
・原子爆弾被爆者特別養護ホーム
のことです。

2)支給額

最初に断っておきますが、金額は毎年変わるので、細かな数字は覚える必要はありません。
介護(補償)等給付は、月を単位として、その月に支出された介護費用の額が実費支給されます。ただし、上限額が定められており、常時介護を要する状態にある場合は172,550円を、随時介護を要する状態にある場合は86,280円(常時の場合のほぼ半額)を、それぞれ超えては支給されません。(つまり、この金額が『上限』ということです。)
また、その月に『家族等による介護を受けた日』がある場合は、その月が支給事由が生じた月(介護を始めた最初の月)である場合を除き、最低補償額の適用(常時介護の場合は77,890円、随時介護の場合は38,900円)があります。具体的には、たとえ介護費用を実費支出した日がない月であっても、家族により介護を受けた日が1日でもあれば最低補償額が支給されます。
介護を始めた最初の月に最低補償額の適用がないのは、前述した『月末24時にスイッチがある』という考え方です。ただし、実費支給分は領収証があるので、その額が上限を超えない限り、全額支給されます。

3)請求

『障害(補償)等年金を受ける権利を有する者が介護(補償)等給付を請求する場合における当該請求は、当該障害(補償)等年金の請求と同時に、又は請求をした後にしなければならない。』
『請求をした後』というのは2月目以降の請求のことで、要は、
『障害(補償)等年金の手続きをしない者には支給しません。』
『介護(補償)等給付だけの支給はしません。』
ということです。
また、傷病(補償)等年金の受給権者の場合は、労働基準監督署長の職権で支給が開始されるので、当該傷病(補償)等年金の支給決定を受けた後に請求を行うことになります。


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