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美しい世界と、耐えがたい現実

沖縄のリゾートホテルでリラックスしながら仕事できるか?
 
1ヵ月前の記事にて、Work Abroad の過ごし方をシミュレーションしてみたわけですが。

結論から言いますと、想定していたとおりに過ごせていません。
いったい何が想定外だったのでしょうか。
 
私のリゾートの過ごし方はまったくアクティブでなく、ホテル内でダラダラ過ごす派です。
基本的にどこにも出かけません。マリンスポーツもしません。
子供たちはホテル内のアクティビティに参加することもありますが、私自身は食べて飲んで読書して寝る以外のことはしません。
 
ホテルのプライベートビーチでデッキチェアに横たわり、読みかけの本を開くも、少し読み進んでは寝落ちし、起きたらあれどこまで読んだっけ?
沖縄の青い空。白い雲。光のシャワー。エメラルド色の透き通った海。
ふと見ると、10歳の長女が浮き輪に乗って悠然と波に弄ばれています。
この子もノンアクティブ派らしい。さっきからずーっと同じことをしていて飽きることがない。
髪が伸びたな、と思いつつ、波に揺られて愉快げな長女を私はボーっと眺めています。
現在まで「今が一番かわいい時期」を 10年連続で更新し続けてきたけれど、それも今年が最後だろうか。そろそろ子供扱いできなくなってきた。
 
白い砂浜に視線を移すと、5歳の次女が子犬のように走り回っています。
な、なんとまあ・・・
子犬よりかわいいじゃないか。
ママに呼ばれて、次女はママと一緒に砂のお城を作り始めました。
世界で一番微笑ましい母娘の絵だ。
 
そのとき、テーブルに置いてある iPhone がブブッと鳴った。
この期間は「ミーティングを入れるな」と関係者に伝えてあります。無論、直電など論外です。なので、メールを受信したのでしょう。
無視しようかと思いましたが、どうしても気になって iPhone を手に取りました。
中国深圳の製造委託先 M社からのメールだ。
読みながら、胃がキリキリと痛み始める。
コロナで深圳の一部地域がロックダウン・・・
M社の工場も封鎖されるのは時間の問題・・・
当面は 2シフト対応するが、受注した製造数量は達成できない見込み・・・
 
クソッ・・・
いったいいつまで中国の工場に依存するつもりなんだ、俺たちは。
このメールで、気分は天国から地獄へと突き落とされました。
M社が封鎖されたら手の打ちようがないな、と途方に暮れる中、またメールが来た。今度は中国東莞の S社からか。
去る 2月に戦争を始めた国で新製品のローンチが中止となったことで、S社の工場で大量のレイオフが発生したため、賠償を請求する、だとぉ?
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・・なんじゃーこの金額は!
地獄ではすまなくなってきた。煉獄か。
 
ちょっと待て。ローンチの中止はうちのせいじゃないだろーが。
戦争だぞ? Force Majeure という言葉を知らんのか?
あの国のせいで、すでに当社でどんだけ損失が出てると思ってんだ。
そのうえ、製造委託先の損失をなんで当社が補填せなあかんのだ。
 
てゆーか、そもそもだ。
世の中どーなっちゃってるの?
世界は終わるの?
いま目の前に見える光景と、メールで送られてくる情報は、同じ世界なの?
どっちを信じればいいの? 悪い夢でも見てるの?
 
そして私は悟りました。
どこまで遠くに逃げても、悪い報せからは逃げられない。
コロナが悪いのか。戦争が悪いのか。どこかの国が悪いのか。仕事が悪いのか。iPhone が悪いのか。
いま、人は皆このような不幸の連続と戦っていらっしゃるのでしょうか。