見出し画像

働かない 50代、戦わない 30代

Yuitaさんの記事👇を読んで、私なりの答えを書くことにします。

そのためには、会社組織の上のほうにいる 50歳前後の人間の本音を暴露する必要があります。
誰も言わないようなことですが、誰かが言わなければならないと思います。
若い世代に言わないほうがいい話かもしれません。
しかし、本音を隠して綺麗事ばかり言うのもよくないと思うので。

会社員はなぜ、ある年齢を過ぎるとやる気を失うのか?

会社員の 40代は働き盛りなどと言われますね。
ところが、なぜか 50歳を過ぎたあたりから、”働かない給料泥棒” のように言われることがあります。
これ、おかしいと思いませんか?
同じ人間が、40代のときはバリバリ働き、50を過ぎたら急に働かなくなるの? たった 10年で働き方が 180度変わっちゃうの?
そんなわけないじゃん、と言いたいところですが、そんなわけあるのですよ。

ほとんどの会社員は、ある年齢を境に徐々にやる気がなくなるようにできています。その理由は主に 2つあると考えています。

一つは、役職が上がって仕事がつまらなくなるからです。
会社という組織は、上に行けば行くほど、くだらない仕事ばかりになります。
例えば、ステアリングコミッティの会議に出席し、クソみたいな話を聞き、クソみたいな意見を述べる。
"来年度予算の策定" という依頼メールを送る。(👈去年のメールのコピペ)
部下が作成した提案書のレビュー。(という名の ”てにをは” 添削)
“意思決定” という名のメ●ラ判。
“問題解決” という名の火消し。

若いころなどは、中間管理職の悲哀を間近に見ながらも、もっと上に行けば別の世界が待っているとか思いがちですよね。
はっきり言いましょう。それは幻想です。
もっと上に行けば、もっとくだらない仕事が待っているだけなのです。

このような仕事をしている役職者の関心はどこにあるのか。
それは、自分のポジションを守ること。その一点のみです。

もう一つは、一つめの理由と似ているようで、本質的に異なる理由なのですが、いろんなことがどうでもいいと思えてくるからです。
社会に出て、20年も働いていれば、世の中のカラクリが見えてきます。
ヒマな時間を埋めるためにクソ仕事をクリエイトする人たち。
会議でスケジュールを埋めないと落ち着かない人たち。
忖度まみれの仲良しごっこ。
社内会議の保身ゲーム感。
人事異動の出来レース感。
そういったことが全部わかってしまうと、一気にシラけるんですね。
この “悟りの境地” に達する年齢は、個人差があるものの、40代の後半から50代だと思われます。
役職の上下にかかわらず、ある程度の年齢に達すると誰もがそこに辿り着くのです。

要するに、50歳を過ぎた会社員は 3つのタイプに大別されるわけですよ。
1) 地位を守るという目的で働き続ける人
2) アホらしさに気づいて働かなくなる人
3) アホらしさにまだ気づいていない人

1) のタイプは、役職定年で地位を解かれると、働き続ける目的がなくなるので、辞めるしかありません。
2) のタイプは、もっと早く辞めるか、定年まで居続けるかのどちらかです。
3) のタイプは、10%もいないと思われます。

役職定年制度は必要か?

60歳定年制度や、55歳役職定年制度について、以前の私はヒドい制度だと思っていました。
年齢で一律に線を引く、という発想は個々の社員の違いを無視しているし、そもそも年齢差別以外の何物でもありませんからね。

しかし、今の私はどちらも必要な制度だと考えています。
理由は前節に書いたとおり、加齢にともなうやる気の喪失は、ほぼ例外なく起こることだからです。
それくらいの歳になると体力が落ちてくるからだとか、ボケてくるからだと思っている人がいるかもしれませんが、それはとんでもない誤解ですよ。
体力なんてのは、普通の人間は 20歳を過ぎた頃からすでに落ちてきていて、逆に 40歳と 60歳はそんなに変わらないものです。それに、もう体力で仕事する時代でもありません。
頭の能力のほうはまだまだ成長します。50歳は 40歳に負ける気がしないし、60歳は 50歳に負ける気がしないでしょうね。
むしろ、頭の能力が成長しすぎた結果、いろんなことがわかりすぎてしまい、何もかもアホらしく思えてしまうことが問題なのです。

で、そういう “悟り社員” が会社に居続けるのは健全でないと思います。
まだやる気を維持している人たちの士気にもかかわりますしね。
なので、55歳や 60歳で一律に線を引くのは、一定の合理性があります。
当然、定年になっても辞めてもらいたくない人材は少数ながらいます。
そういう人材に対しては、定年延長契約などの例外条項をつくって、個別に対応すればいいのです。
それこそ差別じゃないか、と思われますか?
大企業といえども、1対1 の主従関係を基礎としているんですよ。
個人事業主が従業員の採用・不採用を決めるのと本質的に変わりません。
それを社長に代わって部長がやるだけの違いです。

定年年齢を一律に延長するのは悪手だと思います。
すでにやる気のない悟り社員に、再びやる気を持たせるのは不可能です。
悟り社員は、処遇への不満などでやる気をなくしたわけではありません。
会社ごっこがアホらしいのです。
仕事の無意味さや虚しさに気づいてしまっているのです。
社長から新入社員に至るまですべての社員が、回し車の中を走るハムスターにしか見えないのです。

定年を延長し、シニア社員にやりがいを持ってもらおうと様々な施策を打つ会社もあるようですね。
アドバイザー職を新設したり、社外に出して再教育したり。
全くの的外れとしか思えません。
もう回し車を走る気がない人に、新しい回し車を与えても、呆れられるだけでしょう。

人材サービス業やコンサルタントなど、現場を知らない人たちはシニア社員にステレオタイプなイメージを持っていませんか?
ITスキルがない。専門性がない。アップデイトが必要、等々。
あのねぇ・・・いつの時代の話をしているのですか?
今どきの 50代や 60代は、新手の ICT 機器やソフトをバリバリ使いこなし、誰にも負けない専門知識を有し、世界情勢や最新のテクノロジー情報を日々チェックしているような人たちですよ。
彼らは能力がないのではない。くだらない仕事に能力を使うことがアホ臭いと悟っているのです。悟り社員なのですよ。
だからこそ、辞めていただくのが一番なのです。

技術者上がりのマネジメントと生涯技術者

定年でも辞めてもらいたくない人材は主に 2種類だと思います。
A) くだらないと悟りつつも、ごっごに徹するタフなメンタルの持ち主
B) くだらない、と思っていない人

B タイプの人材は稀少です。
日本の会社に勤務していた頃、Yさんという技術系社員がいましてね。
技術者には研究系・開発系・製造系がいて、Yさんは開発系の人でした。
50 を過ぎてなお一開発者みたいな人で、新製品開発プロジェクトのリーダーなどを歴任されていましたが、プロジェクトメンバーの連中に話を聞くと、新製品のコンセプトも、新しい技術も、全部 Yさんが独自に考案したものらしい。
「マイっちゃうよな。俺たちの出る幕ないんだもん(苦笑)」
と、中堅クラスの開発者たちが畏敬の眼差しで言っていたものです。

その後、Yさんは技術開発センターの所長に任命されました。
Yさん、おめでとうございます!とか言ってた当時 30代の私は何もわかってなかったよね。
Yさんは、それから 1年もたたずに自ら会社をお辞めになりました。
その会社は、愚策人事によって一人の超優秀な技術者を失ったのです。

技術者がマネジメントとして成功するのは容易ではありません。
マネジメントは技術を語ってはいけない、と言われます。
経営会議のような技術オンチが集まる場では、技術について語っても、誰も理解できないからです。
技術系のマネジメントは、技術のコトバを使わずに技術的見地で意見を述べる高等スキルが求められます。
これができる人も何人か見てきました。いわゆる出世するタイプですね。
ただ、そういう人たちには残念な変化を見ることになります。
技術者というのは、クリエイティブでイノベイティブな、とんがった人たちが多いのですが、マネジメントの道を進むと、とんがった部分をことごとくへし折られ、面白味のない人間に飼い慣らされてしまうのです。
それが Aのタイプになります。

技術者がマネジメントとして上を目指すか、生涯技術者としてやっていくかは、概ね 30代で決まるようです。本人の資質と性格によるところが大きく、往々にして、なるようになっているケースがほとんどです。
つまり、どちらの道に進んだとしても、自分が望んだ場所に落ち着くことに変わりはないのだと思います。

椅子4

結びとして

定年を延長し、役職定年を廃止する会社に絶望する気持ちはよくわかりますが、あまり悲観することもないと思います。
20年前、「若者が働かなくても食える時代が来る」と多くのコンサルタントが予言していました。でも、そんな時代は来ませんでした。
そのかわり、戦わなくても働ける時代が来ています。
出世に興味がないとか、マネジメントになりたくないと言いだした世代は、時代の風向きを鋭く見抜いているのだと思っています。

勝ち組・負け組という言葉は、死語になりそうでならないみたいですが、そもそも戦わなければ、勝ち組にも負け組にもなりません。
時代は、「スキルだキャリアだ」と常に不安に駆られてジタバタする不安組と、戦うのをやめた不戦組を生みつつあるように感じています。

先が読めない時代には、不安もプランも持たない構えが気楽でいいんじゃないでしょうか。
プラン 55は、私の場合あと 5年しかありませんが、全くのノープランです。
今の会社でまだ働いているか。何か新しいことをしているか。晴耕雨読か。

この記事が参加している募集

仕事について話そう