ヨーロッパ人が口を揃える、日本の社員に対する違和感
日系企業の海外駐在員だった頃、ヨーロッパ人の同僚から、日本人の社員に関する愚痴というかジョークをよく聞きました。
そのなかでもとくに多かったものを紹介します。
日本人だけで事前会議を?
日本の親会社から大使節団がドイツの子会社に出張してきました。
10人くらい来てました。今思うと、当時日本人がやっていたことは中国人とそっくりです。
子会社側は、ドイツ人、オランダ人、イギリス人、ルーマニア人からなる、多国籍チームです。
大旅団は、出張の初日、日本人だけで会議をしていたそうです。
多国籍チームは、「彼らは何しに来たんだ?」と困惑していました。
私はこの件に関しては部外者だったのですが、ランチのときに多国籍チームから相談を受けるわけです。
オランダ人のクーンが言いました。
「日本から出張してきて、日本人だけでミーティングしてるんだけど、何か秘密の話でもしてるんだろうか?」
ドイツ人のミハエルが言いました。
「日本人のいつものやり方さ。”本番”会議の前に、日本人だけの会議をやるんだよ」
ミハエルは何度も同じ経験をしているようです。
私はミハエルに訊いてみました。
「何のためだと思う?」
「日本の組織はボトムアップ型だと聞いてる。日本人だけで行うプレミーティングは、下の意見を吸い上げて集約するプロセスなんじゃない?」
そりゃ良く言いすぎだよ。
そういう面がないとは言わないけど。
ルーマニア人のコンスタンティンが言いました。
「上席者のメンツを潰さないためだろ」
お? 鋭い見方かもしれないぞ。
「例えばどういうこと?」
「いきなりミーティングをやっちゃうと、上の者と下の者で意見が分かれるかもしれない。結果として下の者の意見が採用されたら、上の者のメンツは丸潰れだ」
なるほど、一理あるけど。
そもそも、日本人は上と違う意見なんか言わないよ。
私が答えを言いましょう。
日本人は英語で “discuss” できないからです。
discussとは、異なる意見をぶつけ合う作業ですが、日本人はそれが苦手です。
意見の相違があったときは、極力カドが立たないように、慎重に言葉を選んで発言します。
「おっしゃることはわかります」
「ええ、まあ、たしかに」
「なるほどですね」
「・・・・・・」(沈黙)
これらはなんと!相手の意見に同意していないときの言葉たちなのです。
超ハイコンテクストの日本人と日本語の為せる業。高等技術。伝統芸能。
これを英語でできるわけがありません。
多国籍チームを入れての “本番会議” が始まる前から、すでに日本人チームの結論は固まっています。前日の “日本人会議” によって。
日本人チームは英語で discuss できませんから、英語を話せる代表者が結論を述べるだけです。
かたや、多国籍チームは discuss するつもりで会議に参加しています。
当然、異論・反論がドシドシ出されます。
彼らのカルチャーでは、”devil's advocate” という、わざと反対意見を言う人もいるくらいですからね。
日本人チームは、反論するでもなく、歩み寄るのでもなく、多国籍チームの意見を聞きながら必死にノートをとってるだけ。
この会議の後、何が起こるでしょう?
日本人だけの “事後会議” が開かれるのです。
1 day leave を 30回とる気?
ドイツ企業の年次有給休暇 (annual leave) は 30日が標準です。
たいていのヨーロッパ人は、3週間の休暇を年 2回(7~8月と12月)とることで 30日を消化します。
日本の会社員は、長期休暇をとるのが苦手ですよね。
「1日だけ休む」という、ヨーロッパ人から見ればまったく意味不明な休暇のとり方を好む傾向があります。
日本の会社ではそもそも休暇がとれない方もいるそうですが、ドイツの会社では有給休暇日数(leave quota)を残すなど許されません。
そこで、ドイツの会社で働く日本人は、30日の有給休暇を消化するために、1日休暇を 30回とる、というパラノイアを疑われる行動に走ります。
1 Day Leave を 30回って・・・
1 Day Acuvue を 30日じゃなくて?
スイスのジュネーブでは、少なくとも年に 1回は連続2週間以上の休暇をとることが州の法律で義務付けられています。
法律で強制されて初めて、日本人はしぶしぶ 2週間の休暇をとります。
私は、日本で働いていたときでさえ、普通に 3週間の長期休暇をとっていましたので、それができない人の心理がイマイチわかりません。
日本人の元同僚から聞いたのはこんな理由でした。
✅ 周りに迷惑をかけたくないし、ヒンシュクを買いたくない
✅ 休暇中に仕事がマウンテンになるのが嫌
✅ 休暇中に何をしていいかわからない
✅ 休暇後、会社に復帰できる自信がない
✅ マックス 1週間で休暇に飽きるので、もったいない気がする
困りましたね。
ひとつもヨーロッパ人に説明できる自信がありません。
シンプルにこんなことを言った人がいました。
ヨーロッパ人は、休暇を楽しむために、働いている。
日本人は、仕事を頑張るために、休みをとっている。
いつまで返答を保留するの?
日本の会社員の特技に “wait and see” があります。
"hit and away" ではありませんよ。それは、蝶のように舞い蜂のように刺すモハメド・アリです。
wait and see とは、「様子を見る」みたいなニュアンスです。
状況が把握できるまでウカツに行動しない、といった軽挙を戒める意味もあれば、形勢をみて有利な側につく=日和見するという意味もあります。
ヨーロッパ人の同僚から、日本人はなぜレスポンスが遅いのか、という質問をよく受けました。
これもなあ・・・
レスが光より速い私に訊かれてもわからんよ。
日本人の同僚に、どうしてあなたはレスが遅いのですか?とはさすがに訊けないので、想像力を働かせるしかありません。
1) 自分で決められないことが多すぎる
2) 何もしなくて正解だった、という鉄板の経験則
3) クイックに動いて怒られた、という苦い思い出
どう考えても、本人ではなく、上の人間が悪いとしか思えないんだよね。
上の気まぐれで方針がコロコロ変わるから、ギリギリまで待ったほうが賢明って考えてるんじゃないかなあ。
なんとか日本人の尊厳を保つロジックで、ヨーロッパ人に説明できないだろうか。
日本には、「武士に二言なし」ってことわざがあるんだ。
日本人が一度口にした言葉を撤回するのは、ハラキリ覚悟の所業だ。
だから、日本人は自分の発言に命を賭けている。
「レスポンスが遅い」とか、簡単に言わないでくれ。
命を賭した行為が、そんな簡単にできるわけないだろ?
日本人が即レスしてたら、みんな腹を切って、今頃日本人なんかいなくなってるよ。
どうしてもすぐにレスポンスが欲しかったら、魔法の言葉がある。
「お上にもご慈悲はあるぞ」と言ってやればいい。