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太った王様

昔々あるところに、太った王様がいました。

ある日、王様は家来を集めて言いました。

「私は、痩せたいのだ」

家来達は黙って続きを待ちました。

「だから痩せようと思う」

家来たちは用心深く頷きました。

「誰か私が痩せるアイデアを出しなさい」

家来たちは顔をしかめました。

それほど王様は太っていたのです。

「良いアイデアを出した者には、2000万ドログバを与えよう」

家来たちの目は輝きました。

2000万ドログバといえば、都心に二世帯住宅が建つほどの大金です。

翌日、家来の一人が王様の前に出て言いました。

「王様、朝食にバナナを食べると痩せます」

「ふむ、やってみよう」

王様はそれから1ヶ月間、朝食にバナナを食べ続けました。

しかし、王様の体型には少しの変化も見られません。

王様は、朝食にバナナを一房食べていたのです。

バナナ案を出した家来は、エムボマ島へ島流しの刑にされてしまいました。

その翌日、家来の一人が王様の前に出て言いました。

「王様、鏡を見ながら食事をすれば痩せます」

鏡を見ながら食事をすることで、良く噛んで食事をするようになり、満腹中枢が刺激される。

そのうえ、自分の顔を長時間眺める事によって、食欲の低下に繋がるという、画期的なアイデアでした。

「うむ、やってみよう」

王様はそれから1ヶ月間、鏡の前で食事をとりました。

しかし王様の体型には、少しの変化も見られません。

王様は、極度の近視だったのです。

鏡案を出した家来は、炭鉱送りにされてしまいました。

その翌日、また別の家来が王様の前に出て言いました。

家来の中でも一番の高学歴で、リーダー的存在の男です。

「王様、こういうのはどうでしょう」

家来は王様の耳元に口を近づけ、なにやらゴニョゴニョとやりました

「うむ、それは名案だ。やってみなさい」

王様は笑顔で言いました。

翌日から、王国に新しい法律が出来ました。

“全ての国民は、1日2食、ちゃんこ鍋を苦しくなるまで食べ、ビールを5リットル以上飲み、食後は直ぐに横になる事”

1年後、国民の殆どは、王様と同じくらい肥満体型になっていました。

痩せている/太っているというのは、あくまで比較の問題なので、国民全てが王様レベル、もしくはそれ以上に太れば、王様は太っている事にはなりません。

その家来は、2000万ドログバを与えられ、都心に二世帯住宅を購入しました。

それからさらに1年後、国民の大半が糖尿病、痛風、肝硬変を患い、王国の農業/工業に支障をきたし始めました。

国力は弱まり、弱体化した王国は、隣国からの侵略を受けたのです。

肥満児だらけの王国軍兵士たちは、スマートな体型の侵略軍に必死の抵抗を見せましたが、あえなく敗北。

王様は侵略軍によってエムボマ島に島流しの刑にあい、ストレスと粗食のおかげで、みるみる痩せていきましたとさ。

めでたしめでたし

今アナタは大変なモノを盗もうとしています。私の、心です。