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【映画噺】エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス Everything everywhere all at once 2023年3月3日公開

マルチバースとカンフーで世界を救え?!

ハリウッドでも活躍する大スターのミシェル・ヨー主演、さらには覚えていますか?キー・ホイ・クアン!予告編を見てもどんな話か全く見当がつかなかったのですが、役者の顔ぶれと「マルチバースものなんだから面白いに違いない。」と見てみることにしました。試写だったので、ポジティブめの映画レビューを心がけていますが、今回は好きなところ・そうでないところがはっきりしていたので、ポイント分けて書きます。


ストーリー(予告編)

予告編をまずどうぞ!

↓こちらは試写状にあったあらすじ。

STORY
経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン(ミシェル・ヨー)。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにシャンプ!カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、今、聞いが幕を開ける! 

試写状より。


感想

冒頭に書いたように「マルチバースものはきっと面白い。」という経験則と、役者の顔ぶれ、そして海外の口コミも見る決め手になりました。総じて大変な高評価。日本でも先に見た皆さんの評判は上々、「ともかく話題作を!」という方、「A24好きなんだよね。」という方にはこの意欲作を見逃すわけにはいかないでしょう?という感じです。

〇〇映画のよう。

「ミュージカル映画みたいやな。」と思ったんですよ。
突然歌パートになって取り残されてしまった作品が過去にいくつかあるんですが、
逆にそこら辺が気にならずに没頭できたのもあったのを思い出して。

かっこいいアクションシーンがいっぱい。

今回マルチバースを行き来する「きっかけ」となるアクション・トリガーが設定されているんですが、これが一発ギャグみたいで、その笑いどころがおもろい所はおもろいんですが、たまにわからずちょっと取り残されてしまったりもしました。一応原語でも意識してみたんですが、よくわからず…でもわかろうとしなくていいんですよね、多分。ナンセンスさをツボって笑えると、そのままマルチバースの存在にも、その先の別人格や別人生にも没頭できるんじゃ無いかな?と。マルチバースものって伏線回収とか、綿密に練られたプロットが王道パターンですが、この作品においてはあくまでも演出の一つで、伝えたいメッセージはとってもシンプル。

哲学、俳優、エンディング、奇想天外さ。

移民・マイノリティとしてのアメリカでの苦労は当然のことながら、主人公エヴリンが駆け落ち同然で飛び込んだ人生は、薔薇色かと思いきや生活することで精一杯。自分を勘当したはずの老いた父親の面倒も見ることになり、税金、娘の反抗期、恋に落ちた頃とは変わってしまったたよりない夫…と、問題は山積み。もう、パンク寸前なくらい疲れ切っているんです。

そんなある日、「世界を滅ぼす強大な敵に立ち向かえるのは君だけだ!」といきなりヒロイン宣言を受け、マルチバースにいる全く別人生の自分に転移を繰り返しながら、「普通のおばちゃんエヴリン」はどんどん強く逞しくなっていくんですよ。

別のバースじゃ戦いの達人だったり…
これはもうまんまミシェル・ヨーだよね。スターでもある別バースのエヴリン。

ミシェル・ヨー七変化の様子は見事。スターである別バースの自分にうっとりしたりして、「あの時違う選択をしていたら…」と、きっと誰もが一度は思ったことがあるでしょう、そんな共感ポイントもくすぐります。

指がウィンナーのバースもあるよ。
ゴンちゃん!?

途中哲学的にもなったりしますが、基本は奇想天外でナンセンス。
バタバタとテンポのいいアクションは型が美しくて見どころのひとつ。

祝!ゴールデン・グローブ賞W受賞!!

そしてこの映画噺を書いている時に飛び込んできたビッグニュース!
エヴリンを演じたミシェル・ヨーが主演女優賞、そして、たよんない旦那役を演じたキー・ホイ・クァンが助演男優賞をW受賞!それぞれのスピーチがほんっとうに良かった!もうこれを見る前と後では作品の見方までまるで変わっちゃうんじゃないかというくらい!

キー・ホイ・クァン、感動の受賞スピーチを紹介。(簡単な訳付)

インディ・ジョーンズの子役としてデビューしたキー・ホイ・クァン、あのグーニーズのデータの子、で私は強烈に記憶に残っていました。
「自分に最初のチャンスをくれたスピルバーグ監督がこの会場にいることが本当に嬉しい。」と感謝を伝えてからのスピーチがもうこちらまで泣きそうになるくらい。「子役としてのキャリアはインディ・ジョーンズからはじまって、選ばれて本当にラッキーだと思った。でも、年を重ねるにつれて、あれっきりだったのかなと思うようになった。あれは運だったのかな。子役の自分を超えることはないんじゃないかと。でも30年以上経ってから、2人が私のことを思い出してくれた。あの時の、子役の私を覚えててくれて、そしてもう一度挑戦する機会をくれたんだ。」と監督2人にも感謝を伝えます。共演者、スタッフ、そしてスピーチの最後は奥様への感謝。映画をつくる制作チームとしてのファミリー、家族、と作品のメッセージとも重なって、素晴らしいなぁと。キー・ホイ・クァンは「ロキ シーズン2」の続編にも出演が決まっているそうです。
(※仕事じゃないので、無責任翻訳です。間違っていたらご指摘くださいませ。)

ミシェル・ヨーのスピーチもリンクをどうぞ!

ミシェル・ヨーのスピーチもいい塩梅のユーモアがあってすごくチャーミングでしたよね。途中「(時間を)まきで!」と促すピアノに「黙ってちょーだい笑!(役柄に重ねて)ボコボコにできるんだから!」とわかせたりして。60歳と聞いて驚いてしまいましたが、「年を重ねるにつれてチャンスも少なくなってくるように思った」と本音もちらり。自身もハリウッドに来た時の苦労や、これまでのキャリアを振り返ったのでしょう、後半につれてより熱さを帯びるスピーチだなと感じました。

まとめ

大枠のテーマが家族愛とか、家族としての再生みたいなところだと思うんですが、それに移民・マイノリティ・LGBTQ、ダイバーシティ…他、とたっくさん、でもうまく盛り込んだなと。

別バースの自分が全く別の人生を歩んでいて、それを転移で見聞きして経験したからこそ精神的にもより成長するし、アクション面でもリンクして敵と戦えるという発想もクリエイティブ!

ジェイミー・リー・カーティスもご覧の通り。それぞれの別バースの変貌ぶりにも注目を。

受賞スピーチを聞いていると、一線で活躍しているように見える役者さんですら人種や年齢だけじゃなくていろんなものと戦ってきたんだなぁと。突拍子もない設定にリアリティを持たせたのは俳優としてはもちろんのこと、ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァンらそれぞれの人生もリアルに反映されていたんじゃないかなと。
ネタバレはしませんが、「えぇ話やん。」と最後は素直な感想を持てた作品だったので、そのエンディングに繋がる約2時間(計140分の作品です。)はあまり深く考えず、「めちゃくちゃやなー!!」とたまに手を叩いて笑っちゃうくらいがちょうどいいかも。


スケール感もあるので、劇場でどうぞ。


日本公式サイト


クレジット

タイトル:『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
公開:2023年3月3日(金) TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
配給:ギャガ
コピーライト:© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.


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