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『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

映画『オッペンハイマー』において、登場シーンは少ないものの極めて重要な存在なのが「一般相対性理論」の提唱者、理論物理学者のアインシュタインだ。

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原子力委員会による聴聞会へ参加するオッペンハイマーに対して、アインシュタインが話しかける。自分は国から逃げてきた身だが、オッペンハイマーは国に尽くしてきた。そんな君に対する国の仕打ちがこれかと。

アインシュタインはドイツ生まれのユダヤ人で、1933年にナチスが政権を獲得し、ユダヤ人への迫害が激化するとアメリカへと逃亡してきたという経緯がある。アメリカに到着すると、プリンストン高等学術研究所の教授に就任(上記写真は同研究所の敷地内にあるインスティテュート池)。その結果、アインシュタインはドイツの国家反逆者扱いをされ、2万マルクの懸賞金がかかり、そして二度とドイツには戻らなかった。

『オッペンハイマー』の本編とは直接的な関係はないが、アインシュタインを通したサイドストーリーとして、その歴史的背景を知るのにとても良いのが『アインシュタインと原爆』というNetflixで配信中のドキュメンタリー映画である。

アインシュタインがドイツを出てアメリカへと行く前に立ち寄った、イギリスのラフトンにある別荘地に到着するシーンからこの映画は始まる。再現ドラマと実際の映像や写真を挟みながら歴史を解説するドキュメンタリーになっており、非常に分かりやすい。尺も76分と非常にコンパクトだ。

映画『オッペンハイマー』の中で、アインシュタインとオッペンハイマーを繋ぐもう一つの重要な要素が「ルーズベルト大統領への手紙」である。

マンハッタン計画が立ち上がり、その責任者としてグローブス将軍、ロスアラモス研究所の所長にオッペンハイマーが任命されたが、そもそもそれ以前にこのプロジェクトのきっかけを作った1人がアインシュタインなのだ。

1939年、ナチスドイツが原爆の開発に成功する可能性があると考えた科学者らは「原子力とその軍事利用の可能性」について触れた手紙を大統領に送付した。アインシュタインはこの手紙に署名したのである。

ドキュメンタリーでは、そんなアインシュタインが戦後、日本人ジャーナリストを前に、手紙への署名という形で「原爆」に関わったことを後悔していると言うシーンがあり、『オッペンハイマー』ともオーバーラップする。ここにもパンドラの箱を開けるべきではなかったと考える人間がいたのだ。

またロスアラモスにおけるトリニティ実験の映像も使われているなど、『オッペンハイマー』を視覚的にも補う側面があるのもおすすめしたいポイントである。両作とも「未だに世界が平和になっているとは言えない」という共通したメッセージを持っていることも重要だ。

『オッペンハイマー』とは違い、原爆被害にあった日本の映像や写真も使われている。映画から何かを感じたという方は、双方の理解を深めるためにぜひこちらもご覧になってはどうだろうか。

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