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産前産後ピラティスってどんな運動?ママと子供とピラティスインストラクター

注目度がどんどん高まってきているピラティス。

その中で、産前産後のピラティスに注力するインストラクターでありながら、ママさんの「日々」をサポートするプライベートスタジオhibiの代表を務める西岡千尋さんに、産前産後のピラティスとはどういったエクササイズになるのか、詳しくお話をうかがいました。


ピラティスの中でも、”産前産後”に特に力を入れているのにはどういった経緯があるんでしょうか?

パーソナルピラティススタジオhibi
代表 西岡千尋氏

キッカケはたまたまで、初めてインストラクターとして所属したピラティススタジオが、産前産後のトレーニングスタジオだったんです。

出産後だと赤ちゃんと一緒にスタジオへ来るママさんもいらっしゃるんですけど、実際に関わってみると、本来であればお母さんと赤ちゃん2人だけの時間に自分が入らせてもらっているような感覚になるんですね。

私がお子さんを抱っこしながらレッスンする時もありますし、泣いちゃったら「どうしますか?」ってママさんと相談したり、あやしながらレッスンを続けたり、「少し休憩しましょう」って調整したり。

”間を取り持つ”じゃないですけど、2人だけの時間が長すぎると、ママさんも楽しいはずの時間なのに、楽しくなくなっちゃうみたいな辛さがあったりして…それが私がいることによって、少しだけほぐしてあげることができるんです。

スタジオhibiにはお子さん用の
おもちゃや本が置いてある

産前のピラティスでは、「出産」というゴールに向かって一緒に走っていくという感覚もあります。「先生とレッスンするとすごく体が軽くなる」って言ってくださるなど、ピラティスで身体を整える+ママさんのお役に立てていると感じますし、解決したい課題はやっぱり産前産後のピラティスの方にありますね。

課題とは例えばどんなものでしょうか?

妊婦さんが定期的に検診へ行くなかで、病院からもできるだけ運動してくださいねとアドバイスをもらえるものの、病院側もかなり忙しいので、なかなかそれぞれの妊婦さんに合わせた運動の詳細までは伝えるのが難しいんですね。

そういった際には、病院とママさんの間でお役に立てることってたくさんあるんだなと感じます。

線引きが難しそうと感じたのが、ピラティスは医療行為ではないという点。

西岡さんのレッスンで、事実ママさんの心のケアや体調改善につながっていると思いますが、「効果がある」とか「直る」と自ら言うのは難しいと思います。お客さんへの説明で言い方に気を付けていることはありますか?

確かにそういった直接的な言い方はしないですね。

そもそも、私はお客さんには「自分が頑張って身体を変えるんだ」っていう意志を持っていて欲しいと思っています。なので、レッスン中のコミュニケーションもそのように心がけていますね。赤ちゃんを産むのは自分だし、身体を変えるのも自分。

最初から「先生に直してもらえるんだ」というつもりで来てもらっては困ると。

もちろんその手助けはさせてもらうんですけど、基本的には自分の意思で、自分の心身を整えようという気持ちでいて欲しいですね。パーソナルスタジオなので、依存性が高まってしまうことは起こり得ますけど、極力そうならないようにと意識しています。

「先生じゃないとダメ」って言ってくださるのも、とてもありがたいんですけど、もし仮に私ができなくなったら「その方はどうするの」って話になっちゃうので。

サイトを拝見すると、出産予定月にレッスンを受けている方がいて驚きました。すごい大きなお腹だと思うんですけど、いつまでレッスンをして大丈夫なんですか?

お医者様からの許可が出ていたらご希望のお日にちまでレッスンに来ていただいています。とくに正期産37週以降は動いた方がお産が始まりやすいという確かな効果は今のところ確かめられていませんが(※1)、運動を推奨している病院も多いです。

このスタジオでも、やった方が身体が軽くなるっていうお客さんが多いですね。

いつまで来たい・やりたいかは、お客さんにおまかせしています。ママさんはそれまでの長い間、自分の身体と、そして赤ちゃんに向き合ってきているので、ご自身の良いタイミングでストップの判断をされています。

お産の直前ではどんな動きのレッスンなんですか?

妊娠の後期になると、あお向けは危険性があって避けた方が良いので、hibiではリフォーマーというピラティスマシンを使って、こういう分娩をイメージしたトレーニングをしていきます。

こんな感じで、分娩台での姿勢を意識します。背中が反ってしまわないように、ピラティスの基本動作の1つCカーブの姿勢をとります。このおかげで、例えばお産の時に助産師さんから「お尻の穴をこっちへ向けて」って言われたときなど、それが上手くできたというお客さまもいらっしゃいました。

凄い。出産のトレーニングにもなるんですね。

それに骨盤を動かすのが結構むずかしいんです。16週くらいの方だとまだそんなにお腹が大きくないので、割と動けるその時期からCカーブの練習をしておくのがオススメです。

あとは呼吸の練習ですね。もうお産の時はどうしても「その時できる呼吸」になってしまうんですけど、事前に練習をしているのとしていないのとではやっぱり全然違います。

いろんな妊婦さんと話をさせてもらって感じたんですけど、赤ちゃんに意識向けられている方は、落ち着いて出産ができる印象があります。

なので本を一緒に見ながら「赤ちゃんは今これくらいの大きさですね」という話をしたり、レッスンの声かけも、「赤ちゃんを背骨の方に寄せてください」とか「赤ちゃんを少しリフトしてください」とか、ママさんが赤ちゃんを意識できるような声かけにしているんです。

その工夫は素敵ですね!

あとは妊娠後期には、マイナートラブルと言って首・肩・腰の痛みが出てくるなどエラーが増えてくるので、可能な限りそういった個別のお悩みにも対処していきます。

お話を聞いていると、医療に近い知識が必要なんだなと感じます。

助産師さんが見るような参考書とかを眺めるのが好きで、よく読んでます。

でも症状ってホントに人それぞれで、それらに合わせた情報が巷には少ないんですよ。ベースになる”やってはいけないこと”だけはしっかりと理解しておいて、あとはケースバイケースで身体を見ながらその人に合わせて調整していくという流れになります。

それこそ、西岡さんが本を出したら良いんじゃないですかね(笑)。

そうかもしれないですね(笑)。

妊婦さん1人1人の身体は全然違います。調べながら手探りの作業です。

同業者さんと情報交換し合う機会ってないんですか?

産前産後ピラティスを専門で教えているインストラクターって少ないんです。でも助産師さんの知り合いが何人かいるので、困った時は頼りにさせてもらっていますし、hibiのスタッフのみんなとこまめに情報交換しながら、よりよいアプローチを研究しています。

産後のピラティスはどんな内容になるんでしょうか?

赤ちゃんが大きくなるにつれて肋骨が広がって、出産の時には骨盤と股関節のアライメントが崩れるなどの変化が起こります。そういった変化が産後も残るので、産後のピラティスはそれをもとに戻していくというのがメインです。

それが直ってくると、今度は子供がどんどん大きくなって抱っこなどの負荷がやってきます。そうすると今度はそっちを整えてあげるというようなイメージですね。

成長は喜ばしいですけど、どんどん重くなっていきますもんね。

そして産後のママさんはメンタルケアが非常に重要です。常に母であり妻であるみたいな、それに加えて仕事してる方だともう自分が置いてきぼりすぎちゃって…ということが起こってしまうんです。

レッスンに来ることが、唯一の自分の時間という方もいらっしゃいます。「今週は大変だったんだけど、今日のピラティスがあるから大丈夫だと思って頑張りました!」と言ってくださる方もいて、力になれてるんだなっていう実感がわいてホントに嬉しいです。

壮絶だ…

壮絶な生活をしているママさんたちを、少しでも癒してあげたいですね。


▼ピラティスやインストラクターという仕事についてのより詳しい話はこちら


(写真:若槇由紀)

(※1)高畑香織:分娩前7日間に妊婦が行った陣痛発来への取り組み, 日本助産学会誌, 29(2), p251-61, 2015.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/29/2/29_251/_pdf

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