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僕の過去と現在をつなぐ歌


つらい夜を過ごした
朝を待ち続けた
くらいニュースばかり
耳に飛び込んでくる

残酷なこの世界の片隅で
君のその目に映るものは

Oh, My Friends 
君は僕の夢を走らせる
こんなにも思いつめた灰色の空の下でさえ
 
Again
輝きを失いかけた心に
もう一度取り戻せ あの夏の翼を

君を思い出した
あの空の下で
涙があふれた
あの歌を歌おう

絶望なんて言葉の意味は知らない
君のその目に映るものは

Oh, My Friends
君は僕の心を動かした
こんなにも傷ついた僕のプライドがよみがえる

Again
悲しみに沈みかけてた瞳に
もう一度取り戻せ あの夏の記憶を 

       ー Friends Again(2019)
         Lyrics by Hagane (Division15)


ーーーーーー

と、ある休日のこと

僕はスタジオでギターを弾いていた。

ーーーーーー

2018年2月のこと。

NPO法人あおぞらという
国際支援に関わる団体の代表である葉田くんに誘われ
カンボジアの僻地、サンブール保健センターというところで
新生児蘇生法のシミュレーション講習をさせてもらった。

自分で言うのもなんだが
現地のスタッフと
言葉とか国籍とかを超えて
心から理解し合えた気がする
とても良い講習だった

終了後に街に戻り
夕食を終えた後
葉田くんと同行しているみんなと
ブルーハーツの青空という歌を何度も歌った。

ああ、このシンプルな歌が
こんなにも自分の心に響くなんて

なんどもなんども
調子っ外れな歌声で
僕らは歌った

ーーーーーーー

帰国してずいぶん時が過ぎていたのだけれど
僕の心にヒリヒリと残っているあの感情

うまく説明できないのだけれど
心の一番深いところから
何かが湧き出てきている、そんな感覚

カンボジアで見たたくさんの光景を
思い出しながらギターを弾いていた。

キラキラした現地のスタッフや住民の笑顔
感動して涙する日本からの支援者

僕たちの世界はたくさんの人の思いと
努力できっと成り立っている。

誰かを心から思いながら仲間たちと歌う
そんな歌を作りたいと思いながらギターを弾いていた。

ーーーーー

僕の脳裏に
突然フラッシュバックのように蘇ったのは
30年くらい前、
ボストンにいた時に作ったメロディと言葉だった。

「Oh, My Friends 君は僕の夢を走らせる
 こんなにも思いつめた灰色の空の下でさえ」

ほぼ30年間 全く思い出すことのなかったメロディが
今 僕の脳の中でぐるぐると回り始め
網膜にイメージを結び 鼓膜を揺らし始めた。

どうしてもサビの部分しか思い出せない。
どうだったかな。

記憶の錆びついたドアの奥に眠っているメロディ
そのドアを開ける鍵を
僕はどこかに置き忘れてきたようだった。

本当に思い出せない。

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......G  C G G on F#  Em  Am7  D........

メロディはない
Aパートはベースラインの動きを大切に
コードの流れを延々と繰り返す。

.......Bm7   Em   C    Cm     D7.......

変化が欲しくて
Bパートのコードはマイナーから

延々と繰り返す
自分の内側に
コードの流れがフィットするまで
延々と引き続ける

突然に

新しいメロディは
歌詞と一緒に
僕の上に降ってきた。

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「つらい夜を過ごした
 朝を待ち続けた
 くらいニュースばかり
 耳に飛び込んでくる」

思いの外 平凡な単語で
思いの外 隙間のあるメロディで

触れたら消えてしまいそうな繊細な音と言葉を
慎重に紡いで曲を構成していく。

ーーーーーーーーー

Bパートは少しドキッとする単語を入れたい
ネガティブな単語を使うのは
いつもの僕のやり方

「残酷なこの世界の片隅で
 君のその目に映るものは」

繋がった

今の僕の言葉とメロディと
あの頃の僕の言葉とメロディが

綺麗に
スムースに

繋がって一つの歌になった。

自分の価値を
ひたすらに探求していたあの頃の僕の清冽な思いと
どこかで戦う誰かを
励まそうと頑張る今の僕の穏やかな願いが

時を超えて繋がる奇跡

もしかしたら僕の自己満足なのかもしれない

それでもこの奇跡を
僕は噛み締めて

なんどもなんども歌った。

僕自身の過去と現在をつなぐように

なんども

世界の果てで戦う仲間たちを思いながら

なんども

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