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288 育成就労


はじめに

人手不足は、日本の抱える大きな社会問題です。今日はバレンタインデーということですが、なんと人手不足の影響はこんなところにまで影響しています。物理的に仕事が多く、チョコレートを職場で渡すところまで手が回らないという事態になっているようです。また、流通業界の人手不足も顕著なため、チョコレートの宅配により、通常の業務が大変厳しい状況になっているとのことです。

2040年問題

今から約16年後の日本を想像してみます。この2040年と言う年は、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者になる年です。
このことによって起きる日本社会の課題を2040年問題と言います。日本の高齢化率は35.3%に達すると推計されていますが、これは同時に労働力不足や社会保障制度の崩壊、医療・福祉サービスが受けにくくなるなど、さまざまな問題を発生させます。
そこで、重要な労働力として考えられているのが外国人労働者ということになります。しかし日本が獲得できる外国からの労働者の数は、決して十分ではなく、むしろ働く場所としての日本の人気は下がりつつあるのです。ではなぜ、日本は外国の人々にとって魅力的な場所ではないのでしょうか。

労働者の確保が困難

入管庁がまとめた海外の移住労働者の統計があります。ベトナムの移住労働先は、台湾が日本を上回り、インドネシア、フィリピンも香港、サウジアラビア、UAEなどに押されて日本は5番目となっています。
この原因は、円安の影響もあり日本で臨める賃金は世界的に見ると大変低いわけです。日本を選ばない外国人労働者がすでに多くなっている現状なわけです。
JICA・国際協力機構がまとめた試算では、2040年に必要な外国人労働者は674万人と言われ、現在の約4倍にあたります。この大幅な不足をどのように埋めていくのかが重要な問題です。少子化と人口減少化社会が100%続いていく日本にとっては、100%直面する課題なわけです。もうすでに、製造業や農業、介護分野では、外国人労働者という労働力が無ければ成り立たない現場も出ています。

日本の人気が下がる原因

技能実習制度という言葉を耳にしたことのある方は多いかと思いますが、この制度を悪用した様々な事例も同時に有名です。政府はこうした問題を踏まえて、技能実習制度の問題を解決し、育成就労という名で外国人労働者の確保を考えています。
もともと外国人の技能実習制度は、人材育成を通じて国際貢献をするという考え方が理念でした。主にアジアからおよそ35万8000人の実習生を様々な職場で技能の習得を目的としながらも、日本人労働者と同じ賃金で働くという内容の物でした。また、数年前からは「特定技能」という新たな在留資格も始まっていました。
実習生は3年働けば無試験で特定技能へ移行することもでき、特定技能となれば食品製造・農業・建設などで最長5年、また更に2号になると永住も可能となる制度でした。
しかし、この理想は幻想ともいえる現実があるのです。そもそも、技能実習生を希望し、日本に来る時点で業者に対して、多額の借金をほとんどの実習生がしてきます。また、原則3年間は同じ職場にいなければいけませんので、転職もできません。借金があるのでさらに好条件の場所で働きたくとも転籍できないわけですから、パワハラや残業代の不払いなどが横行しても職場を変えられないのです。
そのため、法を破り失踪する実習生は続出しています。10000人を超える実習生が消息がつかめない状態になっているのです。実際に国から許可や認定を取り消された事業者などは、年間に120件を超えた年もあるほどです。
特定技能に移れば、転籍も自由です。ところが現在、特定技能1号は現在およそ17万人いますが、職種は12分野に限られ、衣類・繊維などは特定技能がありません。さらに特定技能2号は、いま新たに職種が増えているところですが、まだ全国わずか20人弱と実習生がキャリアを重ねづらくなっているわけです。

国際貢献から労働力確保へ

日本はもうすでに外国からの労働者にとってあこがれの国ではなくなっています。それは、外国人の就労希望国の統計をみれば明らかです。
そうした意味でも、技能実習制度は開発途上国の経済発展を担う「人づくり」を目的とした国際貢献のための制度でした。しかし、すでに賃金の格差もなくなりつつある東南アジアなどの国々と比較しても、日本にまで来て働くメリットは少ないでしょう。
その点、2024年度成立予定の育成就労では人材確保と人材育成が目的とされており、就労を目的とすることが明確に打ち出されています。それだけに就労環境や待遇改善は大切な課題なのです。
就労支援では、支援対象者の自己実現を大切にしようとしています。つまり収入を得ることだけが目的ではなく、就労をすることによって本人が社会とのつながりを持ち、生活や人生を豊かにする経験を持つことを重視しているわけです。日本の文化が好きで働きながらそうしたものにもふれてみるであるとか、数年間の生活の中で日本の工業技術や教育環境を利用しながら自己実現に向けて豊かに暮らすという視点が重要だということです。

制度と現実

外国人技能実習生の雇用形態は基本的に正社員です。 労働時間や給料水準、福利厚生、有給取得など細かな条件も決められています。 日本人労働者と同じ条件、もしくはそれ以上の待遇にしないと雇用できないことになっているのです。しかし、現実はそうなっていないから問題が生じているわけです。
私たちは、日本人だけの暮らしに慣れすぎているため移民政策に対して消極的な傾向があります。
その証拠に、日本には移民政策が存在しないと言われています。 政府は、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を、家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策を移民政策としています。その一方で現在おこなっているような専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れる、外国人技能実習生の受け入れは移民政策とは異なるとしています。
しかし、実際には日本に住む外国人はこの10年で約100万人増加し、約300万人以上となっています。日本人の生産年齢人口の減少ペースは加速していきます。今こそ、日本の政府も国民も移民政策について正面から議論するべきなのではないかと思う今日この頃です。


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