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にっこり、2個

1年ほど前、遠方に行って疎遠になっていた幼馴染が突然、産まれたばかりの赤ちゃんの画像を公開していた。
そっと連絡先を変えて、誰も知らない土地に旅立ったということは、今は何も言うべきでないと思った。
今、久しぶりに更新された幼馴染のページには、幼馴染にそっくりの、大きな目をした子供が立っている。

恋人がわたしの人生に現れて、丸2年が経過した。
手を取り合って2年。ともに暮らし始めて1年。
知れば知るほど、出会えて、そしてこの人に良いなと思ってもらえて本当に良かった、というあたたかい気持ちになる。

出会った頃は、驚きの連続だった。
口癖のように「ごめんね」と言うわたしに、彼女は毎回、ごめんねじゃなくてありがとうって言って、と言った。〇〇ができず、迷惑をかけてごめんなさい。それが誠意の表現だと思っていたので、なんだそれは、と目から鱗が落ちる思いがした。
気遣いや遠慮をして、体調不良や不満を隠すと、それは優しさじゃないよ、と言われた。あなたのことをなんでも知りたいよ、と何度も何度も伝えてくれた。体調を崩して、面倒な顔をするどころか、看病できて嬉しいふふふ、と笑う人がいるなんて。なけなしの勇気を振り絞って、これは嫌だと伝えると、不機嫌になるどころか、にんまり笑う人がいるなんて。自虐的なことを言うと、むっとした顔で、やめて、わたしの好きな人の悪口言わないで、なんて言ってくれる人がいるなんて。好きだよと伝えると、すかさずわたしの方が好き、勝ち~と言ってくれる人がいるなんて。

表情が柔らかくなったよねと言われた。〇〇ちゃんが大笑いしてる時が、いちばん嬉しいんだぁ。そんなふうににこにこされると、時折胸がいっぱいになる。


彼女に出会って、わたしは、よく泣くようになった。
それまで、年に1~2回しか涙を通さなかった涙腺が、些細なことでゆるむようになった。
強くいないと、賢くいないと、しっかりしないと。何年間も無意識に張っていた気持ちが徐々に解れて、うれしいも悲しいも豊かに感じるようになった。よく笑ってよく泣くようになった。綺麗に取り繕った部分以外の、真っ暗な自分をさらけだすのは怖くてたまらなかったけれど、なにを言ってもわたしの感情を絶対に否定せず、まるっと受け止めてくれる彼女のおかげで、このままの自分でもいいのだと思えるようになった。

毎日作ってくれる食事が本当に美味しいから、外食よりも自宅でごはんが食べたいなぁと思うようになった。
毎週日曜日に作り置きしてくれるお弁当のおかずを見ると、職場に行くのが楽しみになる。
いつもお弁当ありがとう、と言うと、作らせてくれてありがとうね~なんて言われて、敵わないなぁと思う。

ねぇ、〇〇ちゃん~きょうもありがとね~
あしたも会える?
寝る前、ふとそんな言葉をかけてくれる彼女が本当に本当に愛おしい。
あの日、恋人になろうという申し出にすぐには頷けないでいたわたしに、彼女は大真面目に「じゃあ今から正座してわたしと付き合う良さをプレゼンする」「絶対に楽しいよ、幸せにする、騙されたと思って私のところに来ない?」と言ってくれたけれど、今のところわたしは彼女に騙されっぱなしだ。

ひとりで充分に生きていける強さがあるのに、わたしを必要として、傍に置いてくれることが嬉しい。重いものを絶対に持ってくれるところ。不意のアクシデントにも、あらま~と笑って対処するところ。生活の細々した場面で、逞しさを感じる。こころと身体が健康なところが好きだ。これからも健康でいて欲しい。でも、あなたも時々は安心して調子を崩せるように、もっともっと頼りがいのあるわたしでいたいなぁと思う。


1年で、幼馴染の子供はあんなに大きくなった。あの子はどんな声で、どんな顔で、なにを話すのだろうか。
彼女と、2歳おめでとう~3歳もよろしくね~と言い合った。まだ2年、されど2年、今年の思い出はなんですか?と聞くと、過去は振り返らない主義なので、と笑う彼女とともに、3年目も仲良く楽しく生きていこうと思う。


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