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遠回りとパスタ

恋人のうちで1週間弱の年末年始を過ごした帰り、飛行機の中で色々と思い出しながらメモに日記をつけていたら、とんでもない長さになってしまった。
印象的なことだけを残しておこうと思う。


・1月2日
朝、恋人を見送る。洗濯、お茶作り。とろろの残りに茹でた蕎麦を入れて、朝ごはんを食べた。美味しかった。
恋人が帰宅したら初詣に行こうねと言ってくれていたので、シャワーに入って、お化粧して待っていた。お腹がすいたと言っていたので、帰る頃を見計らってお蕎麦のつゆをあたためて、蕎麦を茹でたら美味しそうに食べてくれた。嬉しかった。
近くの神社へ行った。ものすごく混みあっていた。
行列と騒音が何より苦手なわたしたちだが、カラフルな髪の毛のお姉さんや、後ろの男の人が話すつまらない話、些細なあれこれに楽しく並ぶことができた。道の端に、いい匂いのする屋台がたくさん並んでいたのもよかった。「行列は嫌いだけど、○○ちゃんとならネズミの国にも並べる」と言ってくれて嬉しかった。わたしもそう思う。
お参りをして、心の中でお願いごとを唱えた。
「去年はたくさん楽しいことがあって成長させていただけました、今年も強く優しく素敵な人になれるよう努力しますので、どうかよろしくお願いします。わたしとわたしの大切な人たちが幸せで健康で無事でありますように」
お参りをしている最中、なにかが鼻から抜けるような感覚がして、肩の荷が降りたような気がした。ね、なんか肩が軽くなってない?あ、確かにそんな気がする!ひとしきり盛り上がった。
御籤を引いた。「わたしが恋人よりも良い運勢か、恋人と同じ運勢なら恋人が屋台のご飯を奢り、恋人は何も無くてもたこ焼きが食べたいのでわたしは恋人にたこ焼きを奢り、また恋人がわたしよりもいい運勢のときもなにか奢る」という約束をしていた。
開くと、恋人は吉、わたしは大吉であった。
やった!!!!!!幸先良い。
屋台に行くと、わたしは恋人が食べたいというたこ焼きと唐揚げを買って、恋人は、私の食べたい肉まんと、焼き鳥を買った。お会計はピッタリ同じ額になって、賭けはなんだったんだろうね、と笑った。
帰って、一緒にクリームブリュレを作った。わたしが一番好きな食べ物。
明日わたしがレンジで温めたらすぐに食べられるようにと、クリームソースのパスタグラタンの用意をしてくれていた。
何気なく、「パスタって、一晩ソースに入れていたら、伸びるのかな?(冷やしていたらそんなことないのかもしれない、?もし伸びるなら、食べる時に麺は自分で茹でようかな)」と言うと、恋人がフリーズした。すぐに大粒の涙がポロポロと流れて、あ、余計なことを言ってしまったと後悔した。お互いに黙ってしまい、少しあとで、向かい合って座り顔をのぞき込むと、「いつも、、遠回しに言うのやめて、なんか誘導されてるみたいな気分になる」と言われた。
はじめに浮かんだのは、「なんでよ、付き合いたてのころ、NOをはっきりNOと言わないでほしい、傷つくから、と言ったじゃん」ということだった。
同時に「いつも」そんな伝え方しかできていないなんて、と、自分に嫌気がさした。

結局、恋人が言いたかったのは、「これは嫌だという否定じゃなく、こっちがいい、という明確な意思表示が欲しい」ということだった。
うわぁ、なるほど、と思った。
わたしは、それなら、「パスタ伸びちゃうから、今茹でないで欲しい」と言えばよかったのかな、と思ってしまったけど、そうじゃなく、「もしかしたら麺が伸びるかもしれないのなら、食べる時に自分で茹でるよ」と言えばよかったんだ。



2週間くらい前に、衝動的にとった飛行機。
本当に行ってよかったな。楽しかったな。
恋人が作ってくれるごはんも毎回本当にぜんぶうれしくて美味しかった。左手を突っ込んだ左ポケットに右手を突っ込んで来るところとか、駅で突然「なんの競技でしょう!」ってバレーボール選手の真似するところとか、スーパーで、1度前を通過した稲荷寿司が食べたくて持ってくるところとか、全部全部愛おしかった。
一緒に2022年に来てくれてありがとう。


伝え方ひとつで人と人は簡単に拗れるし、同時に、言葉ひとつでつながることができる。相手が大切な人であればあるほど、言葉は絡まってどうしようもなく扱いづらくなるけれども、丁寧にこねくり回して少しずつ言葉を編む時間が、わたしは嫌いではない。川辺の石ころも、お互いぶつかり合ううちに角が取れて丸くなるわけだし、これからもぶつかり合いながら、価値観をすり合わせて、お互いにまあるい心を作れたらいいな、と思う。

 

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