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【入社1年目の悩み】自分の考えに自信が持てず、会議などで発言できません。どうすればいいですか?

社会人になって約2か月。会議などで発言を求められる機会も徐々に増えてくるころではないでしょうか。そんな時、堂々と意見を表明している先輩社員を見て、気後れしてしまうことはありませんか?
「自分の意見はそんなに立派なものじゃないから」と、つい遠慮してしまうことはありませんか?
本記事では『社会人1年目からの読む・書く・考える・伝える技術』(木山)から、「自分の意見をかためる技術」について学んでいきます。

自分の意見をかためる技術

入社して間もないうちは、会社で発言するときに、自分の意見に自信を持つことは、なかなか難しいものです。

経験が圧倒的に不足しているのに、経験豊富な百戦錬磨の上司や先輩の意見を差し置いて、自分の意見を堂々と述べる。多数が支持して進めようとしている企画に真っ向から反対意見を述べる。そんなことをすれば、周囲のことを考えない、独りよがりな意見を吐き出すだけのわがままな人とみられるでしょう。

とはいえ、ずっと発言しないと「やる気がない」と思われたり、「なんでもいいから意見を言って」と促されることもよくあります。

「会社をよくするための意見」という観点をずらさない

 社会人として自分の意見を言うときに、心がけなければならないことがあります。それは、仕事であなたが述べる意見は、あなた個人の価値観の体現ではない、ということです。あくまで、あなたというフィルターから見たときに出てきた「会社をよくするための一つの方法」でなければなりません。

いくらなんでもいいと言っても、「個人的にはこっちが好きです」「Aの商品がわたしは売りやすいです」などといった、個人の価値観や、それに基づく個人の意見をそのままぶつけるのは、間違いです。もしこれを仕事の場で行えば、価値観・意見がぶつかり合う人から反論され、採用されなかったときに、あなた個人の価値観はとても傷つくでしょう。そうなると、「やはり自分の意見には、自信を持てない」ということが起きてしまいます。

求められているのは、あなたの個人の価値観ではなく、「会社をよくするためにどうしたらいいか」という観点から導かれた意見です。

そのようなスタンスであれば、「会社をよくするための別の意見」があり、その意見が採用されても、それは正しいということになるでしょう。会社をよくするという目的では一致しているからです。反対の意見があったとしても個人の価値観のぶつかり合いではありません。自社をよくするための意見であることが前提になるからです。

そうすると、そもそも会社のために意見を述べているだけなのですから、あなたの意見が採用されても、同じ社の一部である別の意見が採用されても、それは自信を持てるか、持てないかの問題ではないことがわかるでしょう。相手の意見の方が「会社をよくする」ために説得力があるのであれば、「なるほど。その意見の方がよいな」と思えるはずだからです。

朝まで生テレビで個人の立場で議論をするわけではない以上、職場で働く社会人には、そもそも個人の価値観や個人の本音をぶつける機会はないのです。あくまで「当社をよくするために考えたら、こうなりました」という意見を示せばよいのです。

提案に必要な二つの視点

このような会社をよくする立場から考えたパブリックな意見でも、社内で力を持った人や、話が上手で説得力のある先輩の反対意見に潰される可能性はあります。

次に、こうした場面で重要なのは、理論武装です。理論武装とは、ロジックの力です。ロジックとは、論理です。

提案においては、「必要性」と「許容性」という二つの視点を持つことです。

なぜ必要なのか(必要性)だけを強調すると、「それはわかるけれど、現実に実行可能なのですか?」と反論されます。必要な理由を述べるだけでなく、現実に実行可能である(許容性)という視点も述べましょう。

過去の実績、類似商品における他社の実績、予算との関係、数字の問題、他部署との調整、上司から決裁を得る可能性など、企画を通す際に必ずクリアすべきものがあります。

これらは、それぞれの会社や部署ごとに独特のポイントがあるはずです。それらの一つひとつも十分にクリアできることを、順序立てて説明するのです。これが、許容性です。

 

自分の意見を通すことが目的ではない

最後に、そもそも「どんなことにも、両論ある」ということを知っておくことも大事です。そうすれば、自分の立場が「絶対に正しい」という発想にはならなくなります。そして、相手の立場なら、どんなことを言ってくるだろうかと事前に予測し、その相手の立場を自分の立場から反論していくためには何を指摘したらよいかも考えることができるようになります。

論理で相手を説得するためには、ディベートの技術が参考になります。ディベートは、ある特定のテーマの是非について、賛成・反対の立場に分れて、第三者を説得する形で議論を行うゲームです。それらの意見は自己の価値観ではないので、ディベートで鍛えた人は、立場そのものにこだわらなくなり、与えられた立場から論理的に反対の立場の主張を見抜き、的確な反論をすることができるようになります。

相手の立場に立って考えてみることは、とても大事です。反対説にも説得力がある部分があるはずです。そこは尊重しながらも、反対説の弱い部分も考えてみるのです。

この際、自説はあくまで会社のためです。そうすると、自説から反対説を潰してやろう、という発想ではなくなります。相手の価値観を潰すためではなく、「会社のために」、論理的にそれぞれの意見の正当性を分析していけるようになれば、あなたはきっと評価されるでしょう

そうなれば、「自分の考えに自信が持てない」という状況はなくなります。議論もおもしろくなるでしょう。相手も、同じ「会社のために」意見を提示している同志だとわかるからです。

POINT

自分の意見≠自分の価値観。
自社の利益のために議論する。

社会人1年目のよくある悩み

「自分の意見に自信を持てない」は社会人1年目の誰しもが考える悩みなのではないでしょうか。
その他にも

  • 話についていけない

  • 話をするときにあがってしまう

  • 「察しが悪い」といわれる

等、社会人1年目に悩みはつきものです。

『社会人1年目からの読む・書く・考える・伝える技術』では
上司・先輩のダメ出しに「どうすればいいの」? と悩む新社会人48の質問にお答えしています。
今悩んでいることがある人は、ぜひ読んでみてください!

〈目次〉
第1章 効率的にインプットする技術
01 センスに頼らず読み解く技術
02 読解力を高める意識の技術
03 効率よく文章を読む技術
04 大量の情報を読む技術
05 読む速さと正確さを両立させる技術
06 説明を注意深く聞く技術
07 大事なことをメモに残す技術
08 録音に頼らず耳を使って聞く技術
09 情報をタイムリーに取得し続ける技術
10 トレンドや時代の空気に敏感になる技術
11 SNSで有益な情報を得る技術
12 必要な情報源を発見し基地化する技術

第2章 ロジカルに考える技術
13 議論を視覚化し整理する技術
14 目の前にある情報を瞬時に整理・分析する技術
15 分類視点のひらめきを磨く技術
16 直感を磨き察知する技術
17 目に見えない他人の心を察知する技術
18 すぐに人を見抜く技術
19 相手に疑問の余地を残さない技術
20 抽象思考と具体思考を行き来する技術
21 世にある原則・法則をインストールする技術
22 狭い世界にいながら広い視野を持つ技術
23 感覚思考のスピードを高める技術
24 自分の意見をかためる技術
25 自分なりの仕事観と人生観を育む技術
26 メンターを探す技術

第3章 効果的にアウトプットする技術
27 上手に話せるようになる技術
28 プレゼンで緊張しない技術
29 オンライン会議に適応する技術
30 マイクを効果的に使う技術
31 文章作成を雑談感覚で行う技術
32 メールの文章をすっきり端的にする技術
33 書くスピードを上げる技術
34 読み手に信頼と安心を与える文章形式の技術
35 センスを感じさせる文章執筆の技術

第4章 成長し続ける社会人の習慣
36 情報源を単一化させない習慣
37 できる人の情報源を体得する習慣
38 小説やエッセイから毎日の活力を得る習慣
39 ビジネス書の知的教養を軽視しない習慣
40 大量の情報を眺める習慣
41 伝わりやすい説明の方法論を追求する習慣
42 主観的感情を抑え客観的見地から述べる習慣
43 他人を説得する幻想を捨てる習慣
44 指摘や反論を次のプレゼンに活かす習慣
45 気分や感情に流されない習慣
46 学生と社会人の違いを意識し成長する習慣
47 仕事とプライベートを総合的に充実させる人生の習慣
48 他者との比較や評価を気にせず自己肯定感を得る習慣

著者について

木山泰嗣(きやま ひろつぐ)
1974年横浜生まれ。青山学院大学法学部教授(税法)。同大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻主任。上智大学法学部法律学科卒。2001年に旧司法試験に合格し、2003年に弁護士登録(第二東京弁護士会)。鳥飼総合法律事務所で、2015年3月まで税務訴訟及び税務に関する法律問題を扱う(著名担当事件に、ストック・オプション訴訟がある)。2011年に、『税務訴訟の法律実務』(弘文堂)で、第34回日税研究賞(奨励賞)を受賞。2015年4月に大学教員に転身(上記法律事務所では客員弁護士)。現在は、法学教育及び税法研究に専念(ゼミでは、説得力のある表現技法を身に着けるため「ディベート」を中心にする)。著書には、『小説で読む民事訴訟法』(法学書院)、『教養としての「税法」入門』(日本実業出版社)、『もしも世界に法律がなかったら』(同)などの法律系のほか、『究極の思考術』(法学書院)、『もっと論理的な文章を書く』(実務教育出版)、『反論する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『新・センスのよい法律文章の書き方』(中央経済社)、『熟考する力』(大和書房)、『読書の技術』(日本実業出版社)など「読む・書く・聞く・話す」の技術系も多数ある(単著の合計は、本書で60冊)。
Twitter:@kiyamahirotsugu

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