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開発者からの便り② コーヒーの科学①

ディレカの開発者である田村喜久雄が生前、HPに掲載していたコラムを
noteにて再掲いたします。

科学を知ればコーヒーが変わる!
田村 喜久雄のコーヒー愛が止まらない!

(2020年5月HP掲載)

あなたにとってコーヒーとは「なんですか」・・・、
「ほっと一息つくための嗜好品・目覚めの一杯が1日のはじまり・ケーキのお供」など色々ありますね。コーヒーを淹れるには水が必要です。
淹れる水が美味しい水ならコーヒーも勿論美味しくなりますね。
僕にとってコーヒーとは“生活の糧”です。
多数の方に聞く中、コーヒーはコーヒー以外の何物でもない・・・となんだか哲学的な回答まで、いろんな視点から見た答えが返ってきました。

視点が変われば、ものの見え方が変わる「科学の視点」もその一つです。
特に化学、医学、生物学、工学といった自然科学分野では、多くの研究者が「味や香りの正体はなんだろう?」「健康への影響は?」と日々研究をしています。

日頃コーヒーに感じている疑問への答えやヒントが、日常的な飲み物にこんなに多くの「身近な科学の種」が潜んでいたのかと驚きです。色々な角度から「科学の視点で見たコーヒー」とその魅力について話しを進めます。
まずは、動物の○○から採る最高級コーヒー。

インドネシアに「コピ・ルアク」という一風変わった、時に100g/1万円以上もする、高価なコーヒーがあります。「コピ」はコーヒー、「ルアク」はジャコウネコを意味する現地語です。
じつはこのコピ・ルアク、コーヒーの果実を食べたジャコウネコの糞から末消化の生豆だけを集めたものです。

「なぜわざわざそんなものを」と思うかもしれませんが、その歴史は古く、19世紀後半のフランスの文献にも紹介されています。当時から「知る人ぞ知る」珍品として、高値で取引されていたのですが、「動物の糞から採る、世界で最も高価なコーヒー」として1995年にイグノーベル賞を受賞したり、映画に取り上げられたりして、一躍有名になりました。

動物に果肉を消化させて生豆だけを取り出すと考えれば、これも精製法の一種だと言えるでしょう。気になる味の方も、そのプロセスを経てまろやかで深みのある味になる、ということで世界中にファンが居ることも確かです。

汚いと思うかもしれませんが、生豆はパーチメントに覆われたまま出てくるので、中身は「一応」汚れていませんし、雑菌が付いていても焙煎すれば全部死ぬので「一応」衛生的にも問題ありません。
もちろん、気分的にどうかは人それぞれなので、無理にはお薦めしませんが。

そしてあまりに高値で売れるものだからか、近年ではサルの糞から集めるインドの「モンキーコーヒー」や、ジャクーという鳥糞から集めるブラジルの「ジャクーコーヒー」、タイではなんとゾウに果実を食べさせて作る「ブラックアイボリー」という類似品も出てきています。
また本家の「コピ・ルアク」では、森の中のジャコウネコの糞を拾い集める天然品ではなく、狭い檻に閉じ込めたジャコウネコにコーヒー豆を無理矢理食べさせて作る業者もいて、動物虐待ではないかと社会問題化もしつつあるようです。

こういった製法による、とてもユニークなコーヒーですが、あまり話題になりすぎて過熱するのも考えものです。これって自然科学なんだろうか?

・・・・次回はほんとうのコーヒーの科学に入ります。
               本日の授業はこれまで!


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