解離性同一性障害を理解するのは、当事者か大切な人がDIDじゃないと、まず無理なんじゃないかと思う。わかってたまるかと思うくらいだ。



※おことわり:この文章はあくまで素人がDIDの人をパートナーに持ったことを綴っているものです。うまくその個性と付き合っていくために学んではいるつもりですが、決して専門家でも何でもないのでその点ご留意ください。


本当に理解に時間がかかる解離という名の個性

解離といわれても、どういうことなのかを知っている人がなかなかいないと思う。

僕も全然意識したことがなかったし、パートナーが解離性同一性が失われがちな人じゃなければ、今も何の意識もせずに普通に生きていると思う。
それぐらい、一般的な常識としては人間の意識や精神が一つの個として存在していることが当たり前という認識をしているんだと思う。
人間一人の個が別れたり、離れていくようなことがあるなんて思いもしない。

だからこそ、映画やドラマ、漫画アニメのようなフィクションでDIDがキャラ付けとしてよく使われるんだろう。だいたいリアルではないけど。

攻殻機動隊という漫画作品があり、映画やテレビシリーズでたくさん映像化もされているけど、冒頭に

「西暦2030年—あらゆるネットが眼根を巡らせ、光や電子となった意思をある一方向に向かわせたとしても“孤人”が複合体としての“個”になるほどには情報化されていない時代……。」

というくだりがあり、人間の脳も機械化されてネットで繋がっていくにつれ、だんだん記憶などのデータが共有化されることで個の存在が薄れていってしまう…ような世界観のSF作品なのだが、人間の意識というのは、ひとりにひとつというのは大きな誤解なのかもしれないなと思う。近い将来、複数の人間の個が一つの個になったりする世界もあるのかもしれない。

話を戻すと、それくらい解離という性質をきちんと理解するためには、こびりついた常識をいったんグルっとひっくり返さないときちんと理解できないんだろうなということだと思う。

初めて解離性同一性障害(診断が降りたわけではないので、解離性同一性にならない時あるくらい)だということをパートナーさんから聞かされた時は、やっぱりジキルとハイドのような側面的な知識だけでDIDを理解しようとしてしまっていた。

「交代するってどういうこと?他人がいっぱいいるの?今まで話してたのは誰?みんな僕のこと知ってるの?年齢は?名前は?」

実にしょうもなくて、すごく傷付けるような疑問がたくさん出てきた。

そして、聞きかじった精神科医が書いていた統合治療の記事や書籍を買って読んで”治療”しようとしてしまった。

あくまで解離は精神の個性なんだから、治療すること自体がおかしいと今は思っている。

解離性で同一性に障害が出てしまって、社会生活に大きな支障が出てしまった場合にはなんらかの手立てが必要だと思うし、それが”治療”という形で医師に診察してもらうということなんだと思うが、ほんとは治療するべきことじゃないような気がするようになった。

車電車に乗って少しボーッとしてしまって、はっと気づいたら乗り過ごしてしまったり、みんなあるように、ちょっとの記憶が解離で飛ぶことなんて誰にでもある。その度合いの違いなんだと思う。

それをもっと早く理解できていたらよかったなと思う。

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