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ブログ:ぼくのアルバイト①

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

オットー・フォン・ビスマルク(1815年-1898年)

今の時代、SNSを通じて誰もが炎上するリスクを孕んでいると思いますが、
炎上しなければ後悔できない、過ちに気付かない愚者があまりに多いと感じます。

説教のような書き出しになりましたが、かくいう僕も心底「学生時代にTwitterが無くてマジでよかった(マジで)」というタイプの人間です。
流石に醤油をペロペロしたり親に見せられない行いをした事はありませんが、僕のアルバイト時代は今書いたらちょっとヤバいよな…というエピソードが結構多いです。主にバイト先がヤバかったという話ですが。

緊急事態宣言が明けアフターコロナのこの現代に、想いを馳せます。



2007年 春

当時高校に入学したばかりの僕は、恥ずかしさから駅でひったくるように手に入れた無料のアルバイト求人雑誌を家で眺めてウンウンうなっていました。

僕の高校は、メンズが非常に多い学校で女子が片手で数える程度しかなく出会いも絶望的な環境でした。
部活も特に運動部でも無いので他校との交流も持てず、クラスの陽キャが
「彼女ができた」「彼女と別れた」「告白された」という会話をエイトフォーを自分の脇にスプレーアートの挙動で振りかけながらしている場面を何度も見ては意気消沈していたのです。
あの人たちのバイタリティーとスピード感は3コマ漫画くらいの勢いで進んでいくので、ジャンプの連載作品よりも展開が早いレベルなのですが、
当時の僕はそんな「エイトフォーを香水だと思っている陽キャメンズ」に強い憧れを持っていました。

そんな自分が愚考して選んだ答えは「アルバイト先ならワンチャンあるんちゃうんけ?」ということでした。
さながら外の世界を知らない井の中の童貞が、自己分析も何もせず安易に「外出れば出会えるっしょ?付き合えるっしょ!」という答えを出してしまいました。

これは就職活動で例えるなら、「とりまエントリーしたら内定もらえるやろ?少子高齢化で人手不足っていうやん?^^」くらいのニュアンスで応募ボタンをポチるようなものです。まずは弊社にご相談ください。


シャカパチ陰キャ大学生によるネグレクト教育

求人誌を見ていた僕が選んだのは、和食を手掛けるお店でした。
和食と言っても料亭とか割烹とかじゃないですよ。
例えるなら和食さとみたいな気軽に入れるスタイルのお店です。

当時の僕はテレビ朝日のドラマ「相棒」に出てくる女将(※)になんとなく興味を持っていました。

(※高樹沙耶さん演じる宮部たまき役のこと。大体事件が解決したラスト5分くらいで出てくる)

ドラマのような杉下右京が事件解決後にしっぽりやるようなお店で高校生は働けないので、なんとなく近そうな和食レストランに応募しました。

ホール希望で応募した私は、白髪まじりでタバコと加齢臭の混じった独特なにおいのする店長に面接され、キッチン担当で採用されました。

ロボットが配膳することもある現代ですが、当時は
男はキッチン(厨房)、女はホール(接客)」みたいな文化が普通にありましたし、当然すぎて誰も意見を言うこともなかったと思います。
っていうか、この文化飲食店だといまだに現役ですよね?

入ったばかりである私の研修教育をしてくれたのは、今年で大学2年だという男性スタッフでした。
その先輩は、やや細めの体格に抑揚のないしゃべり方で一方通行な研修を行ってくださり、「あとは適当に学んで」と放任主義スタイルの方でした。
今でこそ入社にあたりアルバイトでもメンター制度やOJTの理解度テストの実施などが当たり前になりましたが、当時はそういう文化すらありません。

先輩は休憩時間にトレーディングカードゲームを嗜んでおり、私もしていましたので付き合わされることが頻繁にありました。
先輩は私のターンも頻繁に手札をシャカシャカパチパチと鳴らし、常に半笑いで目を細めていました。薄暗い蛍光灯でぼんやりと照らされる先輩の顔と小刻みにビートを刻むシャカシャカパチパチという音は、今思えば世にも奇妙な物語のシチュエーションチックでもありました。

ちなみに先輩のデッキはロックバーンという非常に癖の強いスタイルであり、この記事読んでいる方にはロックバーンのデッキを愛用する人もいらっしゃるでしょうから詳しくは述べませんが、そういう方でした。

Googleの検索候補を表示しています。他意はありません。

当時の僕はそれでも一応処世術を持っていたようで
「あー!!wwwwワイの氷帝メビウスがー!!!wwww」だとか
「波動キャノンはえぐいっすよーwwwwww」とか
そういうことをほざき続けることで先輩との関係性を構築しているつもりでした。

あれ、僕は彼女を作りにきたのでは…?

哀れ、井の中の蛙である愚者な私は彼女を作るどころか「いじられキャラ」という役割を演じることによってシャカパチ陰キャ大学生の太鼓持ちとなっていたのです。


しかし、そんな中であっても私は悠長にバイトの帰り道ゆずの夏色をipodで聞きながら「くー!彼女といつかアニメイト行きてえなー!」とか考えていました。
これが地獄のはじまりであるとも知らずに───

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