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大学日本代表候補合宿 ~松山観戦記~

 ドラフト会議も終わりアマチュア野球の集大成である明治神宮野球大会も終わってアマ野球ロスが続いていた私でしたが、2023年のアマ野球は終わらない(日本文理の夏は終わらない的なやつ)ということで来年のドラフト候補を見に今シーズン2度目の松山市・坊っちゃんスタジアムに行って参りました。本当にこれが2023年最後の野球です。


1.参加メンバー

表1 日本代表候補合宿 参加メンバー一覧

 上記のメンバーが今回の代表合宿参加メンバーになります。明治大学の宗山塁選手や大阪商業大学の渡部聖弥選手、青山学院大学の佐々木泰選手・西川史礁選手など今年の代表チームから引き続き選出された選手も居ますが、大半の選手が合宿初参加のフレッシュなメンバーが選出されました。
 特に3年生は来年の2024年ドラフトで指名が予想される有力選手が集まっており、その中でも投手で注目されている関西大学の金丸夢斗投手と愛知工業大学の中村優斗投手は非常に楽しみにしていました。

2.練習メニュー

表2 練習メニュー

 私は仕事の都合もあり合宿初日は参加出来ませんでしたが、初日はフリー打撃やシートノックを中心にメニューをこなしていたそうです。
 そして私が松山に到着した2日目は合宿の目玉である紅白戦が行われる予定でした。チーム分けは3チームで投手は各2イニングを投げ、1イニング中に投球数が25球に達した場合はイニング終了というルール。野手は各チーム2試合スタメンは固定(捕手と指名打者は試合ごとに入れ替え)して、試合が続く場合は継続打順で試合を行うルールで3試合とも6イニング制で行われました。
 まずは第1試合AチームとBチームの紅白戦が行われ、Aチーム先発は明治大学の浅利太門投手、Bチーム先発は注目の金丸投手で試合が始まりました。

2-1 第1試合 Aチーム VS Bチーム

表3 紅白戦 第1試合

 先攻はBチーム、先頭打者から24年ドラフト候補の注目のスラッガー・青山学院大学の西川選手が打席に立ち松山坊っちゃんスタジアムの観衆が沸きました。(恐らく100人強も居なかったので実際はざわ…くらいでした)
 早速西川選手は浅利投手からライト前ヒットを放ち、ドラフト上位候補の片鱗を見せてくれました。その後ランナーを背負いながらも浅利投手は冷静に後続を抑えて合宿最初の登板投手の大役をしっかり務めました。
 2回は少し制球に苦しみ球数が嵩んでしまい、明治大学対決となった小島大河選手との対戦は25球到達により打ち切りとなってしまいました。実際冬のこの時期に制球が定まらないのは仕方ないことであり、それでもMAX149キロ(球場ガン)を計測した浅利投手は来年も非常に楽しみです。
 後攻はAチーム、何といっても注目は3番に座る明治大学の宗山選手と関西大学の金丸投手の24年ドラフト投打の最注目選手同士の対戦に私はとても楽しみにしていました。
 金丸投手は先頭の立石選手を味方のエラーで出塁させてしまい、続く平野選手のタイムリーであっさり先制を許した後で迎える宗山選手。しかしここで崩れることなく宗山選手を3球三振に斬ったのは流石の一言でした。特に最後の3球目のストレートは151キロ(球場ガン)を計測し、宗山選手のバットが捕手の小出選手のミットに吸い込まれるのと同時にヘッドが出てるように見えるほど手元で来るストレートでした。力感の無いフォームから恐ろしいほど力強い速球が来るので打者も相当対応が難しいような気がします。
 その後中部大学の清水智裕選手のタイムリーツーベースでもう1点失い計2失点の金丸投手でしたが、失点している割に内容は悪くない印象を受けました。清水選手の打撃が素晴らしかったです。
 2回は打者3人をパーフェクトに抑える好投を見せ、これが金丸投手という姿を見せてくれました。2イニングだけでしたが、やはり金丸投手は良い投手だと再認識しました。
 3回からはAチームが法政大学の吉鶴翔瑛投手、Bチームは国際武道大学の山口塁投手が登板しました。
 吉鶴投手は今秋の東京六大学リーグ戦で投げてる姿を見て非常にいい投球を見せていたので、この日の登板も凄く楽しみにしていました。吉鶴投手も寒さの影響からか制球が定まっていない印象で2回投げて四球2つ与えてしまいましたが、投げているボールに力強さを感じたので春になったら非常に楽しみな存在だと思います。
 山口投手は2年生ながら代表合宿に呼ばれた投手なので注目していました。フォームを見ている感じとても投げっぷりが良く、ストレートも力強さを感じました。球場ガンでも152キロ出ていたので相当良いと思います。1イニング目は三者凡退に抑えましたが2イニング目は捕まってしまい、最終的に25球到達してイニング打ち切りになったのは残念でしたが、もう少し見たいなと思わせる投球でした。
 5回からはAチームが仙台大学の佐藤幻瑛投手、Bチームは法政大学の篠木健太郎投手が登板しました。
 佐藤投手は1年生ながら大学選手権初戦の桐蔭横浜大学戦でセンセーショナルな全国デビューを果たした怪物ルーキーであり、この日も球場ガンで150キロ以上を連発して早速怪物ぶりを発揮していました。ストレートもさることながら変化球もキレがあり、特に西川選手を三振に斬った時のスライダーは魔球のような変化量でした。これでまだ1年生なのが末恐ろしいレベルでした。
 篠木投手は今回の代表メンバーの中では最も早くから活躍している選手であり、この世代のトップランナーとして牽引してきましたが、秋のリーグ戦で右肩の故障があり途中で離脱していたのでまさか合宿で投げられるまでに回復してるとは思いませんでした。正直彼の実力を考えると松山での出来は30%も満たないような気がします。ストレートの最速も球場ガンで148キロを計測していましたが、数字以上の迫力を感じることはなかったので、状態はまだまだだと思います。それでも打者8人に相対してノーヒットに抑えた
のは流石の一言です。
 紅白戦第1試合の印象としては投手陣の出来が全体的に良く、打者が自分の打撃をさせてもらえてないように自分には映りました。その中でも金丸投手からタイムリーを含む2安打を放った中部大学の清水選手の打撃は素晴らしいと思いました。捕手はポジションが1つに対して候補選手が多い場所なのでなかなか正捕手を掴むには高いハードルですが、清水選手の打撃があれば指名打者での起用というのも面白いかもしれません。過去にも現オリックスの頓宮裕真選手(当時亜細亜大学)がそういう起用法でJAPANの4番を張っていたこともあるので、清水選手の打撃を生かした起用があることを愛知民の私としては願っています。

2-2 第2試合 Aチーム VS Cチーム

表4 紅白戦 第2試合

 紅白戦第2試合、Aチームは連戦になるので打順は継続打順となり、5番の清水選手で前の試合が終わっていたことからこの試合は6番の渡部海選手からのスタートとなりました。そしてCチームの先発投手は環太平洋大学の徳山一翔投手です。
 徳山投手は先日の明治神宮野球大会でも素晴らしい投球を見せ、特に気温が低く冷え込む神宮でのゲームで最速153キロ(スカウトガン)を記録し話題となっていました。
 徳山投手は初回を3者凡退に抑え、2回も先頭を抑えて順調な滑り出しでしたが、Aチーム1番の創価大学・立石正広選手にヒットを打たれ、この打球にレフトの横浜国立大学・藤澤涼介選手がダイビングするも後逸して結果的にスリーベースヒットとなってしまいます。そして次の打者・仙台大学の平野裕亮選手には打ち取ったものの、打球が弱く内野安打を許して1点を取られてしまいました。その後は宗山選手をゲッツーに打ち取ったのは流石でしたが、この回不運もあり失点をしてしまいました。しかし神宮大会同様に力強いボールを見せてくれた投球だったと思います。
 Aチームの先発は亜細亜大学の齋藤汰直投手でした。齊藤投手は先頭の藤澤選手に右中間を破るツーベースを許すとその後2死2,3塁のピンチで青山学院大の佐々木選手に先制の2点タイムリーヒットを許してしまいます。2回こそ3者凡退だったものの、この日登板した投手の中では球威が弱かった感が否めませんでした。亜細亜大はエースの草加勝投手がドラゴンズ入りするので次期エースを育てたい中で齊藤投手への期待は大きいと思います。一冬を越えた齊藤投手に期待したいです。
 3回からはAチームは筑波大学の国本航河投手、Cチームは日本体育大学の寺西成騎投手が登板しました。
 まず最初に出てきたのは寺西投手でした。星稜高校時代から素材は先輩の奥川恭伸投手(現東京ヤクルト)より上という潜在能力を買われたスケール感ある投手でしたが、2年夏に右肩を痛めた影響で日体大進学後も登板機会がありませんでした。しかし3年春になって故障から復帰し衝撃的な大学野球デビューをすると、秋の神宮大会でもその存在感は際立っており満を持して合宿に呼ばれた投手でした。
 内容の方は秋の横浜市長旗戦や神宮大会と比べると球の走りはイマイチでしたが、鋭い変化球が冴えておりボールコンタクトの上手い中央大学の櫻井享佑選手と仙台大学の平野選手から三振を奪うなど非常に良い部分も見せてくれました。その寺西投手からライト線へタイムリーツーベースを放った創価大学の立石選手、バッティングは本物でした。
 そしてAチームの国本投手、横浜市長旗戦では150キロを連発して話題になっていた投手で非常に楽しみでした。筑波大学の投手ということで自身のフォームの動作解析とかしてるのかなと思うくらい体重移動がしっかりとしているフォームで、リリース時に力を集約している感が何となくですが伝わるフォームなのかなと思いました。そして放たれた球はとても力強く150キロも球場ガンですが何球か計測していました。
 そして何より国本投手は2イニングを投げて打者6人を抑えるパーフェクトピッチングでした。今回の合宿参加投手で唯一のパーフェクトだったのはかなりのアピールになったのではないでしょうか、国本投手凄かったです。彼は名古屋高校出身ということで実際愛知に居る身の私も名前は聞いたことがありましたが、彼の世代はコロナ直撃で夏大が中止になってしまった世代なので彼が陽の目を浴びる場がありませんでした。一浪を経て筑波大学に進学し頭角を現したのを見ると、コロナの無かった世界線で国本投手を見たかったなと思いました。ただまだ彼は来年3年生なので首都大学野球リーグで見れるので、来年は首都大学リーグにも足を運びたいなと思いました。
 5回からはAチームは富士大学の佐藤柳之介投手、Cチームは日本大学の市川祐投手が登板しました。
 市川投手は秋の東都松山開幕戦でも坊っちゃんスタジアムで登板しており、その時は3球団競合となった国学院大学の武内夏暉投手(埼玉西武1位)との投げ合いを制して勝利投手になりました。しかしその日の最速は比較的ガンの精度が甘いと評される坊っちゃんスタジアムで141キロだったので、関東一高時代に150オーバーを記録した市川投手からすると少し寂しい数字でした。しかしこの日は最速147キロ(球場ガン)を記録し、ようやく市川投手らしさを見せたかなと思いました。投球フォームを見ていても日本大学の先輩の赤星優志投手(現読売)を彷彿とさせますので、あと2年市川投手がどんな姿を見せるのか楽しみです。
 佐藤投手は大学選手権の対創価大学戦を東京ドームで見た以来でした。その試合はドラフト候補だった富士大学の中岡大河投手が先発しましたが、今回の合宿参加メンバーでもある立石選手にホームランを浴びるなど調子が悪く、そのまま富士大学が負けてしまうのではという劣勢の場面で佐藤投手が登板し、見事なロングリリーフでチームの逆転勝利の立役者となりました。その試合の投球を見て私は佐藤投手の投げるボールに惚れ込み、またどこかで彼の投球を見たいと思い神宮大会に行きましたが、残念ながら佐藤投手の登板試合とは縁が無かったので、松山合宿で是非見たいと思ってました。
 実際の投球は四球と安打でピンチを作り、バント処理で自らの暴投があって1点を失ってしまいますが、その後の3人を3者連続三振に奪ったのは流石の投球でした。最後の佐々木選手との対戦で奪った三振は完全に佐藤投手の力が勝った投球でした。
 野手陣は第1試合と比べると安打も飛び出し点も入っていたので、全体的には振れている印象でした。特に良かったのが創価大学の立石選手でしょうか。この試合は2本の長打に最後は同点となる犠牲フライで2安打2打点の大活躍でした。スイングスピードもさることながら打球速度も速く、自分自身の間で捉える打球が多くとてもいい打者だと思いました。再来年のドラフト候補として名前が挙がるのは間違いなさそうです。
 もう一人良いなと思ったのが横浜国立大学の藤澤選手です。第1打席のツーベースを皮切りにマルチヒットを記録し、さらに走塁もかなりいい走りをしていてアスリート型外野手の風格を感じました。今年のドラフトで言う所の山梨学院大学の宮崎一樹選手のような雰囲気に近いのかなと思いました。

2-3 第3試合 Bチーム VS Cチーム

表5 紅白戦 第3試合

 第3試合の注目は何と言っても24年ドラフト候補の投げ合いとなった先発投手のマッチアップでしょう。Bチーム先発は國學院大学の坂口翔颯投手、Cチームの先発は愛知工業大学の中村優斗投手でした。
 どちらもドラフト候補、その中でも上位と評される2人なので紅白戦が始まる前から既に楽しみでした。まず最初にマウンドに登ったのは國學院大学の坂口投手でした。初回は少し制球を乱し2四死球を与え、最後の打者佐々木選手の打席が完了する前に25球到達となってしまいました。2回は三者凡退に抑えていただけに初回の四死球は勿体なかったかもしれません。しかし点を取られるどころか被安打も0の投球は流石の一言でした。この日の球速は149キロ(球場ガン)でこの気候の中では十分すぎる数字ですが、まだまだ能力値の高い投手だけに本領発揮では無さそうでした。春のリーグ戦が楽しみな投手の1人です。
 そして私が松山合宿に来た最大の目的、それが中村優斗投手の全国デビュー戦でした。戦国極める愛知大学野球連盟の中で中村投手の愛知工業大学はなかなかリーグ戦で優勝に届かず、中村投手は全国大会のマウンドに登ったことがありませんでした。それでも愛大連の中では彼の名前を知らない人は居ないほどの存在感を見せつけているため、1度は全日本の代表合宿に呼ばれてもいいだろうと思ながら気が付くと今年が終わりかけてました。そのタイミングでの代表合宿招集、絶対中村投手なら大学日本代表クラスの選手相手にも通用するし、圧倒的な存在感を放つ瞬間を見届けたいと思いはるばる松山の地に来たので、3試合目での登板にようやくかと心待ちにしていました。
 そして先頭の西川選手、打球は完全に詰まっていましたがセカンドの送球が浮いて一塁はセーフに。あくまで紅白戦なので公式記録は出ませんが、セカンドの失策だったと思います(内野安打でも良いと思いますが)。続く浦田俊輔選手の打球はサード正面へ、これを名手佐々木選手がボールをこぼしてしまし、これも一塁セーフ。連続失策で無死一二塁のピンチを迎え、大丈夫かなと見ている方がとても心配をしていましたが、次の1球でそれが杞憂に終わります。3番の吉納翼選手にはストレートで詰まらせてピッチャーゴロゲッツーを取り、4番の渡部選手にはこの日全投手最速の157キロを計測し松山が沸きました。この日のストレートは全て150キロを下回らないという驚異的なボールを投げていました。そして最後は変化球で詰まらせショートゴロに打ち取り結果的に0点に抑えました。上位打線なら最強と思われたBチームの面々を力勝負で圧倒する姿を見て、愛知からずっと彼の背中を追って松山に来て良かったと感じました。本当に素晴らしい投手だと思います。
 2イニング目は中村投手の代名詞であつ奪三振も奪い打者7人被安打0の衝撃的な全国デビューだったと思います。紅白戦後には松山合宿の視察に来ていた侍ジャパンの井端弘和監督から真っ先に名前の挙がった投手が中村投手であり、井端監督も絶賛していたので大学代表の首脳陣にも良いアピールが出来たと思います。
 3回からはBチームが東海大学静岡キャンパスの宮原駿介投手、Cチームが上武大学の木口永翔投手が登板しました。
 宮原投手は地方大学ながら代表合宿に呼ばれた投手ということもあり、どんな投手なのか非常に楽しみでした。初回は三者凡退に抑え、投球フォームも腕が少し遅れてくるような感じで球の出どころが見づらい打者にとっては打ちにくい投手な印象を受けました。球速はそこまでですがとても魅力的だと思って見ていました。残念ながら2イニング目に四球でピンチを作り、そこから集中打を浴びて5点取られてしまいましたので、セットでの投球が課題なのかなと少し思いました。
 そして木口投手は仙台大学の佐藤幻瑛投手と同じスーパー1年生としてこの松山合宿に招集されており、上武大学を神宮大会に導いた投球が見れると思い楽しみにしていました。全体的にまだまだボールがバラつく印象を受け、特に甘い球は代表候補選手は見逃してくれず痛打されたり、きわどい球は見極められている印象を受けました。それでも決まった時のボールは直球・変化球とも素晴らしいボールであり、まだ1年生であることを考慮すると伸び代しかない木口投手はロマンで溢れていました。非常に楽しみです。
 最後の2イニングはBチームが九州共立大学の稲川竜汰投手、Cチームが駒澤大学の東田健臣投手が登板しました。
 稲川投手は体格がガッチリしていることもあり投球フォームからリリーフエースみたいな風格が漂う投手で、ショートイニングということもあり150キロ以上を連発して非常に力強い投球を見せていました。特にストレートで空振りが取れるのは魅力的だなと思います。ただ稲川投手もまだボールにバラつきがあり2イニング目は制球が定まらず四球連発で25球到達し、クイックの甘さに付け込まれ盗塁を複数許すなどまだまだ課題もある投手かなと思いました。ただボール1つ1つの力強さとても魅力的でした。
 そしてオーラスは東田投手。この投手は東都の入れ替え戦で見た時は素晴らしいボールを投げ、なおかつ迫力のあるダイナミックなフォームが魅力的だなと思って見ていました。この日はあまりストレートが走っていなかったものの、相変わらずスライダーの精度は素晴らしいなと思って見ていました。東田投手も2イニング目に少し球数を使ってしまいましたが、これと言って痛打されるケースは少なく守備陣に足を引っ張られてしまって少し可哀想でした。あのスライダーはコース間違えなければまず打たれることは無いような気がします。
 野手陣は序盤はお互い好投手に抑えられ安打すら出ない状況でしたが、途中からCチームは振れてきており実際5点取ったのはすごいと思います。特に良いなと思ったのは前試合に続いて横浜国立大学の藤澤選手はこの試合自体は無安打だったものの、凡打の内容も良くとても振れていました。大阪経済大学の柴崎聖人選手もスイングに力があり、この試合ではタイムリーが飛び出すなど非常に良かったと思います。
 第3試合全体を振り返ると最初の中村投手のインパクトが強すぎて後半の試合内容が記憶から飛ぶレベルで脳裏に刻まれました。改めて本当に凄い投球が見れたなと思いました。

2-4 50m走

 紅白戦3試合が終わりこの日のメニューは全消化となりました。翌日はウォーミングアップ・キャッチボールからシートノック、フリー打撃と初日と同様なメニューが消化されていきましたが、初日と違う点はマニア必見の50m走タイム計測でした。
 これは6月の平塚でも行われている伝統メニューであり、大学JAPANの最速を決めるとても面白いメニューでした。

表6 50m走タイム一覧

 1位になったのは城西大学の松川玲央選手でした。松川選手は背が高く少し細身の体から後半にスピードが上がるまるで陸上選手のような走り方をしており、見ていてとても速さを感じました。
 2位の藤澤選手は紅白戦で魅せたスピードそのままに5秒台の大台に乗せました。こちらもアスリート型の素材を感じました。
 3位の浦田選手も納得の走りでした。遊撃守備の機敏さを見ていると俊足なんだろうなと感じていましたが、浦田選手も大台突破を果たして流石だなと思いました。
 その他で気になったのは7位の立石選手は結構大柄な体格からこのスピードが出るのは凄いなと思いました。豪快な打撃とこのスピードを兼ね備えているとなるとプロ側は欲しくなる選手じゃないでしょうか。こちらは25年ドラフト候補なのですが、今からもう楽しみですね。
 余談ですが注目の宗山選手は13位とだいたい真ん中くらいのタイムで、言ってしまうと走力に関しては可もなく不可もなくと言ったところでしょうか。まあ彼に関して言えば他が極めて素晴らしい選手なので特に走力でどうこう評することは無いですね。
 あとは國學院大学の神里陸選手、お兄さんが横浜DeNAの神里和毅選手ということで兄譲りの俊足かと思ったらタイムは下から3番目だったのが意外でした。なかなか捕手はタイムが出なかったですが、これも捕手の宿命と言ったところでしょうか。

3.気になる選手8人

 ここからは個人的に合宿期間中に気になった選手をピックアップしていきたいと思います。正直10人以上居るんですがあまりにも人数出すと長くなるので今回は8人にします。

3-1 中村 優斗(愛知工業大学)

今回招集の投手で最速の157キロを記録した愛知工業大学の中村優斗投手

 まず紹介するのは今回の合宿で最も注目を集めたと言っても過言ではない最速157キロを記録した愛知工業大学の中村優斗投手。私は愛知に住んでいる影響でアマチュア野球は愛知県・東海地方を中心に見ているのですが、ここ数年で見た投手の中ではストレートに関しては中村投手より凄い投手は居ませんでした。それくらい衝撃を受けた投手だったので、今回の合宿で全国から集まる猛者を相手にどこまでやれるのかが非常に楽しみでした。
 そして蓋を開けると・・・言うまでもありません。ショートイニングの中村投手はこんなに凄いのかと改めて思い知らされました。普段は先発の姿で見ていた中村投手ですが、2イニングと決まって投げる中村投手は好打者が揃う合宿メンバーでも打てる球はほとんど無かったのではないでしょうか。ストレートの球速・質もさることながら変化球も素晴らしく、横滑りのスライダーはネット裏からでも変化量が分かる変化幅でしたし、縦に落ちる球(縦スラ?SFF?)はまるでバットに当たる気がしないキレを感じました。

松山の観衆に衝撃を与えた最速157キロのストレート

 普段愛知大学野球連盟の試合はスピードガンが無い(もしくは表示されない)球場でプレーしている中村投手なので球場ガンでの比較は出来ませんが、スポーツライターの西尾典文氏のX(旧Twitter)によるとリーグ戦では152キロに対し松山合宿では153キロ(西尾氏のマイガン)を記録したとポストされていたので、球速自体は普段通りでしたがリーグ戦での計測が気温30℃以上だった9月の試合に対して今回は気温10度前後の12月の試合ということを考慮すると、今回の数字はとてつもない数字だと思われます。一冬を越えて春が来た時の中村投手はとてつもない高みへ行くのかと思うと、今からもう楽しみです。リーグ戦ではクイックやバント処理含めたフィールディングに難があった印象ですが、今回はあまりその部分に触れる機会がなかったので、個人的にはその辺も春に成長していることを期待しています。

春のリーグ戦が楽しみな中村投手、皆さんも機会あれば是非愛知へ

3-2 宗山 塁(明治大学)

今合宿では即席チームをまとめる動きを見せた明治大学の宗山塁選手

 前回の大学JAPANから不動の遊撃手のレギュラーとしてチームを牽引してきた明治大学の宗山塁選手。今回の合宿では初日にチームキャプテンを務め、ランニングでは先頭を切りチームを引っ張る姿を見せており、就任したばかりの明治の主将が全日本でも変わらず見れたというのは非常に良かったと思います。この世代は彼の存在無しではもはや成り立たたないくらい宗山選手の存在感は大きいと思います。

軽快な守備を見せる宗山選手、彼の守備はプロに混じっても一級品との評価も

 合宿2日目に行われた紅白戦では相手投手も相当な警戒をする中での打席となり、結果は6打席立ちノーヒットに終わりましたが相変わらず守備では鮮やかな姿を見せてくれました。打撃の方では3年の春秋合わせてホームランは0本、秋のリーグ戦は途中から不振に陥りこの合宿でもなかなかタイミングが合わない迷いのあるスイングが見られましたが、紅白戦翌日のフリー打撃では首脳陣に打撃フォームの相談をして自身の課題と向き合う動きを見せていたので、宗山選手クラスの選手ならしっかりと修正して来春にはまた素晴らしい宗山選手になって神宮に帰ってくると思います。

首脳陣の指導を受ける宗山選手、ドラフトイヤーは打撃にも期待 

 そしてプロでも一流レベルと称される守備は相変わらず健在で、不慣れな土のグラウンドでのプレーでしたが普段と変わらない宗山選手の華麗なフィールディングが見れたと思います。シートノックでは捕球面だけではなくスローイングの正確性、カットプレーの指示出し、個人的には捕球後の握り替えが他の選手より格段に凄いなと感じながら見ていました。
 大学生遊撃手の超目玉選手は2003年の早稲田大学の鳥谷敬氏以来20年ぶりの逸材ということで今以上に来年は騒がれると思いますが、宗山選手が普段通りの宗山選手としてプレー出来れば間違いなく結果を残してドラフトの主役に躍り出ると思います。楽しみにしています。

グラウンド整備にも余念がない宗山選手、明治新主将として背中で引っ張る姿とても良いです

3-3 金丸 夢斗(関西大学)

世代No.1s左腕の呼び声高い金丸夢斗投手、ドラフトイヤーの来年はどんな姿を見せてくれるのか

 今回の合宿ではアピール出来なかったかもしれませんが、結果関係なくもはや説明不要なレベルで凄さを見せている金丸夢斗投手。左腕ということもあり現時点では1番人気になりうる存在だと思います。今年のドラフトでは国学院大学の武内投手に最多タイの3球団が競合しましたが、金丸投手はその倍はあっても驚きはありません。それくらい関西学生野球連盟での成績がずば抜けている点、それを後押しするようにポテンシャルを発揮している点で現時点のNo.1なのかなと思います。
 合宿では立ち上がりということもあって制球が少し甘かった印象を受けましたが、その後修正してきたという所に金丸投手の凄みを感じました。関西地方でこれほどの逸材となると2006年の近畿大学・大隣憲司投手以来ですかね、あの頃は希望枠という名の逆指名があり大学・社会人の有望株は抽選ではなく事前に入団するチームが決まっていたので、実際大隣投手が競合となったら何球団だったのか想像も付きませんが、金丸投手は同等かそれ以上の強豪になり得る予感がします。
 今回は2イニングだけの投球でしたが、やはり先発している姿が見たいので来年は関西学生のリーグ戦にも行きたいと思います。そこで是非本気の金丸投手が見れることを願って。

今年の1位投手と比べても遜色ない逸材、来年何球団競合するのか楽しみです

3-4 清水 智裕(中部大学)

打撃は全国でも通用することが分かった中部大学の清水智裕選手

 続いて紹介するのは愛知大学野球連盟が誇る最強捕手の中部大学・清水智裕選手です。清水選手は持ち前の打撃と強肩が売りの捕手であり、下級生から中部大学の4番に座りチームを牽引して今春では中部大学をリーグ戦優勝に導きました。
 中部大学は愛工大の中村投手や名城大の松本凌人岩井俊介の両投手ほど投手陣が豊富ではなく、投手の継投で勝ちを拾ってきたチームだったのでその陰には清水選手の存在がとても大きかったと思います。そして大学選手権でも初戦の九州産業大学を相手に接戦をものにして初戦突破するなど、中部大学には欠かせない選手です。
 大学選手権でもホームランを放ち全国でも打撃面はアピールしていたので、今回の合宿でも打撃で目立っていたことに関しては特に驚かなかったですが、金丸投手のボールを弾き返し坊っちゃんスタジアムの右中間を破ったのは流石に驚きました。紅白戦では少し守備面で綻びが見えたり、自慢の強肩が発揮出来ず盗塁があまり刺せなかったことで捕手としてのアピールは不発に終わりましたが、これほど振れる選手と分かったことは収穫だったと思います。本番の国際大会では指名打者があるので、個人的には清水選手を起用するのも面白いと思います。
 肝心のドラフトに関してですが、23年は進藤勇也選手(上武大)、22年は吉田賢吾選手(桐蔭横浜大)と大学生捕手は近年指名人数が少なく、指名ジャンルとしては鬼門の立ち位置にありますが、清水選手は現時点で24年ドラフト候補では1番上の立ち位置にいると思っています。愛大連の選手ということもあり応援している選手なので、是非指名されて欲しいと思います。

愛知大学野球連盟21世紀初の捕手支配下指名なるか

3-5 立石 正広(創価大学)

打撃でのインパクトは参加メンバー1だった創価大学の立石正広選手

 続いては創価大学の立石正広選手を紹介します。立石選手は大学選手権でホームランを打った試合を現地で見ており、その時からスイングの力強さを感じ凄く良い選手だなと思って見ていました。何より体格がしっかりしていて軸がブレないスイングをしており、打席での佇まいからも非常に打ちそうな雰囲気を感じます。
 紅白戦では2本の長打(合宿参加メンバー唯一)を放ってアピールしており、50m走でも全体7位につける脚力を披露するなどポテンシャルの高さを存分に発揮した合宿だったと思います。
 同じポジションに青山学院大学の佐々木泰選手が居るので守備力を考えた時に立石選手が不利かなと思いますが、そもそもこの選手を大学選手権で見た時のポジションはファーストだったことを考えると、代表合宿で十分なアピールの出来なかったファーストメンバーより立石選手がファーストを守る方が十分に可能性としてあると思います。とても期待をしております。

本番の国際大会では一塁手起用も?来年注目の立石選手から目が離せません

3-6 浦田 俊輔(九州産業大学)

長崎海星高校時代から注目していた九州産業大学の浦田俊輔選手

 6人目は九州産業大学の浦田俊輔選手を紹介します。浦田選手は長崎の海星高校時代の2年生時に私は甲子園で見ており、その時は守備の良い下級生ショートが居るなあという印象でした。時を経て6月の大学選手権、私は中部大学の応援で東京ドームに行った際に相手が九州産業大学でした。九産大のシートノックを見てショートの動きに魅了され、すぐさま九産大のショートの名前を調べると浦田選手でした。まるで忍者のような身のこなしで前年の亜細亜大学の田中幹也選手(現中日)を見ているようでした。出身高校が海星という表記を見てあの時の海星の下級生ショートか、一致した瞬間なんだか嬉しい気持ちになりました。
 今合宿でも守備で際立った動きをしていました。紅白戦では最初はファーストを守っていてなかなか目立っては居なかったですが、2戦目にショートの松川選手と入れ替わりショートに就くと流石の動きをしていました。守備範囲で言ったら宗山選手より上かもしれません、守備の総合力は宗山選手と双璧を成すと思っています。強いて挙げるならスローイングが気になるくらいなので相当良いと思います、スローイングをリカバーするためにセカンド起用というのも面白いかもしれません。今合宿で招集されたセカンドの選手は皆動きが良かったものの、突出した選手は居なかった気がしますので、浦田選手のセカンド案は個人的に推したいです。あとは打撃面を何とかしたら一気にドラフト候補の選手になると思います。

宗山選手と双璧を成す守備力を披露して代表入りに向けて猛アピール

3-7 藤澤 涼介(横浜国立大学)

走攻守において高いポテンシャルを発揮した横浜国立大学の藤澤涼介選手

 7人目は横浜国立大学の藤澤涼介選手です。藤澤選手は今合宿で初めて名前を知り衝撃を受けた選手でした。187cmの長身でグラウンドではスケール感を感じる選手だなと思っていましたが、プレーでも魅力的な動きをする選手でした。
 まず紅白戦の第1打席で右中間を破るツーベースを放って松山の観客がざわつきました。ベースランニングの姿もスピードを感じましたしスリーベースも行けそうな勢いを感じたので、昨年の大学JAPANで言う所の宮崎一樹選手(日本ハム3位指名)を彷彿とさせました。
 紅白戦ではレフトを守っており少し打球判断に難があるのかなと思って見ていましたが、翌日のシートノックではセンターを守っておりそこでは華麗な動きを見せていたので、適正はセンターかもしれません。センターは大阪商業大学の渡部選手が不動のレギュラーとして君臨しているので、牙城を崩すのは難しいとおもいますが、個人的には藤澤選手もJAPANの熾烈な外野手争いの候補の一人として推していきたいと思います。

外野手争いは激しいものの一角に食い込める素質を見せつけ、代表入りへ猛アピールする藤澤選手

3-8 国本 航河(筑波大学)

登板投手唯一のパーフェクト投球を見せた筑波大学の国本航河投手

 最後に紹介するのは筑波大学の国本航河投手です。名古屋高校時代から凄い投手が居ると知り合いから聞いてたくらいの逸材でしたが、残念ながら彼の最後の夏はコロナ禍と共に無くなってしまったので、最後のアピールをすることは出来ませんでした。一浪して筑波大学に進学したみたいなので学年はまだ2年生ではありますが、既にドラフト候補と呼んでもいいレベルで頭角を現していると思います。
 今合宿では投手陣唯一の2イニングをパーフェクトに抑える快投を見せつけて、代表入りへ大きくアピール出来た投手の一人だと思います。投げ方を見てても綺麗なフォームで、リリース時に力を集約させ強いボールを投げている印象を受けました。動作解析が進む筑波大学に進学してブラッシュアップされたものなのか、元々のポテンシャルなのかは分かりませんが凄く理にかなった個人的には理想的なフォームなのかなと思います。
 ストレートは150キロを多々計測する力強さを見せる一方で変化球もスライダーは変化量も大きく打者が打ちにくそうにしている印象でした。パーフェクトピッチングの内容はフライアウト1つとゴロアウト5つのまるでゴロピッチャーの理想形のような内容で、バックの守備が代表クラスが集まるとなると戦力になり得る可能性が高く、個人的には招集は堅いのではないかと思っています。
 国本投手が所属する筑波大学は首都大学リーグ1部、来春は必ずリーグ戦を見に行きたいと思います。

まだ2年生なのが末恐ろしいポテンシャルを兼ね備えた国本投手

   以上で松山合宿の感想を終えたいと思います。2023年もアマチュア野球の試合に多く行けて楽しかったです。2024年は23年以上に精力的にドラフト候補を見に行きたいと思います。長い文章にお付き合いいだき、ありがとうございました。

 

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