ノート緊張

なぜ俳優は現場で緊張するのか?…てか緊張ってなんなの!?

「演じるとき緊張しなくなるにはどうしたらいいんですか?」という質問を俳優さんから立て続けに受けたので、今回の『でびノート☆彡』は俳優の大敵…「緊張」について書こうかと思います。

テンパりますよねー(笑)、舞台の本番前に、撮影前の楽屋で。

セリフが一つも思い出せなくなったりw、段取りがまったく思い出せなくなったりw。演じる役がどんな人か思い出せなくなったりw。

わかりますわかります。

「あれ?思い出せない!」と思うと心配になって、さらにテンパり「集中!集中!」とか言っても目は宙を泳ぎ、台本をパラパラとめくっても文章がまったく頭に入ってきません・・・完全に気が散っている状態です(笑)

まるで家が火事になって今すぐ逃げなきゃいけないのに何を持ち出せばいいのかわからなくなって、目の前のぬいぐるみを手にとっては置いてみたり、冷蔵庫を開けてみたり、テレビのリモコンとかを鞄につめたりしてる人みたいですね(笑)

テンパってる。アガッてるとも言いますね。さて、なぜ我々は現場でこんなに緊張してしまうのでしょうか?

それでは脳のしくみから、それを解き明かしてゆきましょうw(!)

「デフォルト・モード・ネットワーク」という言葉をご存知でしょうか?

最近の脳科学の本とかを読むと良く出てくる言葉なのですが、意識せずに勝手に働くサブの脳の活動のことで・・・まあ雑にひと言で言ってしまえば「過去の失敗にクヨクヨしたり、未来のことを心配する能力」、変な能力ですね(笑)・・・そして、おそらくコイツが我々俳優を苦しめる「緊張」「テンパり」の正体なのです。

では「過去の失敗にクヨクヨしたり、未来のことを心配する能力」とはなにか?

生物の進化の話をしましょう。 野性の環境において何かに集中しきってしまうことはとても危険です。美味しいものを食べるのに夢中になっていると、知らない間にうしろから恐ろしい猛獣が近づいてきてバクッといかれてしまうかもしれません。で、気にせず食べ続けた種は絶滅しましたw。でもそこで、食べている間に後ろで小枝がパキッと折れる音がした時に「あれ?誰か近づいてきたのかな?」と心配することができたら、それで逃げられる、生き延びられる。お、よい能力な気がしてきましたねw。

つまり脳の中に思考用の作業テーブルがあるとしましょう。その作業テーブルの端っこの方に「肉食獣に注意!」をちょこんと置いておきながら、作業テーブルのど真ん中で「食べる」という作業に集中するわけですね。

この「過去の失敗にクヨクヨしたり、未来のことを心配する能力」のおかげで我々人類や哺乳類は生き延びてこれたのです。

ところが原始人は「肉食獣に注意!」くらいを心配してればよかったんですが、現代人って心配事がとんでもなく多くなっちゃったんですね。人間関係、お金、仕事、能力、恋愛etc.etc.

俳優も楽屋で心配しまくりますよね。台詞を忘れるんじゃないだろうか、この役づくりで正解なのかな、照明さんに怒られないように段取通りに動かなきゃ、小道具の使い方大丈夫だろうか、本読みの時に監督に言われたことちゃんとできるだろうか・・・などなど。

もーね、

脳の作業テーブルが心配事でいっぱいになっちゃってるんですよw!

だから俳優が「次のシーンの演技」に集中しなきゃいけないのに、そのメインの作業をするスペースが残ってなくて、たまたま空いてたちっちゃなスペースで必死にやろうとしても出来るはずもなく・・・ハイ、これが「緊張」「テンパり」の正体です。ああ!「デフォルト・モード・ネットワーク」なんて言う便利機能があったばっかりに!w

この「デフォルト・モード・ネットワーク」って本来は「メインの作業」が始まるとアイドリング状態に戻る仕組みなんですが、心配事や大きなストレスを感じてる時には「メインの作業」を始めても「デフォルト・モード・ネットワーク」が暴走したままになって、心配事が頭から離れないようになります。で、肝心の「メインの作業」の方に集中できなくなるらしいんですよ。 しかもこれ、の原因にもなるんです。

さてここからです・・・どーしたらこのテンパリ状態から脱出できるのか?

そして「次のシーンを演じる」に集中しなければ!

それには、まず脳の作業テーブルの上の山のような心配事をひとつ残らずテーブルの上から落としちゃってください!ザラーッと! そして「次のシーンを演じる」だけを脳の作業テーブルのど真ん中にドン!と載せて、それだけに集中しましょう。

大丈夫。作業テーブルから落としてしまったからと言って、記憶が無くなるわけではないので台詞やダンドリを忘れてしまうわけではありません。むしろ逆にいろんな心配事に目移りしなくて済む分、台詞もダンドリもスムーズに出てくるようになります。

ではどうやって脳の作業テーブルから山のような心配事を落とすのか。

ここからは脳科学とか関係なく、ボクの個人的経験から言ってるだけなので話半分に聴いてくださっても結構なのですが(笑)・・・効きます!

まず深呼吸してください。そして・・・

好きな人のことを考えてください。

片思いでも何でもいいです。あ~でもアイドルとか遠い人じゃない方がいいな、なるべく身近で好きな人のことを考えてください。そして心の中でその人の名前を叫んでください。「○○さーん!好きーっ!」できうるかぎり大声で!心の中で!この気持ち相手に届けとばかりに!何度も何度も!!!

これでだいたい「デフォルト・モード・ネットワーク」の暴走は解除されます、マジで(笑)。

信じられないでしょうがやってみてください。少なくとも作業テーブルの上の心配事の数がガクンと減るはずです。で、その空いた広いスペースでやるべき「次のシーンを演じる」という作業に集中できるわけです。。。愛は強し!w

緊張をほぐすために大切なのは・・・頭の中の「余計な心配事」の数を減らすことだったんです。

そして冷静さを取り戻したら、もう自分の台詞とか、自分の段取とか、自分を見る他人の眼とか、自分の衣装とかメイクとか、もう自分のことを考えるのをやめましょう。

自分のことを考え始めると、また心配事がもたげてきて「デフォルト・モード・ネットワーク」の罠に逆戻りです。「デフォルト・モード・ネットワーク」はもともと自分自身を認識するための機能でもあるので、自分のことを気にすると活動を始めてしまうんですね。

なので自分以外のことを考えましょう。目の前に実際にあるものがいいです。 相手役のことを。セットや演じる空間のことを。目の前の小道具のことを。

「この人が私の恋人なのかあ」とか「ここで私はもう5年も働いているんだなあ」とか「私はブラックコーヒー飲む人なんだなあ」とか、そうしてるうちに自然に心の中で「次のシーンを演じる」準備がどんどん整ってゆきますよ。

以上です。お試しあれw!

小林でび

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