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私以外皆うまい


自分の趣味は水商売の類と同じなのかもしれない。

その人たちの話なんて聞いたことはないし、その道の人に聞かれたら
「何を言い出すんだふざけんな一緒にするな」
と、ワインのボトルが飛んできてシャンパンファイト(曖昧さ回避)が始まるかもしれないけれど、何となくそう思っただけなので一回聞いてほしい。
その上で全然違うならその時は潔く酒瓶で殴られようと思う。

気分でnoteをはじめてから丸々2年が経った。
自分でもこんなに続くと思わなかった。内容の良し悪しはともかくよく続いたなと思う。三日坊主パーソンに革命が起きている。
でも会社の人には絶対に、「実は一人でよくわからない文章を書いてる」だなんて口が裂けても言えない。言えないから身バレをしないように細心の注意を払っている。(だから私は今のところ住所不定、性別不詳、若手社会人という人格で存在している)

誰かに読ませるために投稿しておいて読まれないために努力するのは我ながら訳がわからない。わからないがそうしたいからそうしている。

別に文章を書くのが悪いことじゃあるまいし、何も隠す必要もないのに、本音の4番地くらい手前でしか話すことのない会社の人には読まれたくないと思う。
「仕事モード」という、ある種演技をしているペルソナが浸透している環境で、その人格を脱ぎ去ることは自分でもびっくりするくらい難しいのだ。それはそういう職場が悪いのか、演技し始めた自分が悪いのか諸説ある。
異動があるからせいぜい1-2年の付き合いで終わる人が大半で、どう思われようと知ったことではないにせよ、言えないものは言えないのだ。

そんなふうに、どことなく纏った後ろめたさが夜の街で働く人たちの抱くそれと似てるのかもしれないと唐突に思った。日中にそのことを公言することは憚られるような。

水商売をしてる人が職業を聞かれたときに適当に
「駅前のドトールでバイトしてます」
って言ってしまうみたいに、自分は自分で趣味を聞かれたら
「土日は寝てばかりで終わっちゃいますね」
と、無難で、かつ真逆なことを、「ほんとどうにかしないといけないよね、やれやれ」みたいなくたびれたテンションで言ってみせる。息を吐くような嘘である。

こそこそ何かやってる感がある分、音楽せよ美術せよ自分の作品を世に送り出している芸術関係に秀でている方々のことは、心の底からすごいなと思うし、そういう人たちにはどんな訳のわからないことを言ったとしても「わからないなにかに出会う」という事象ごと面白がってくれそうな気がして勝手に親近感を抱いている。

でもそういう人たちは芸術関係に秀でているから、大抵はものすごくキラキラして綺麗なものを作るし、とても面白いことを言うから、夜通し走ったって追いつけないくらい遠くに感じる。

でも多分そういうのって、どんなに才能がある人でも一度は通る道なのだろう。

藝大の練習室に書かれた「私意外皆うまい」という落書きの写真がバズってるのをみてそう思った。「私以外皆うまい」と藝大に入るような人ですらそう思うなら凡人の私がそう思うのは当たり前だよね!と開き直った。みんながみんなお互いに「私以外皆うまい」って思ってたら、自分も他のみんなからは「うまい」と思われているわけで、生きてる本人は生きづらいところもあるかもしれないけど、マクロで見たらすごく寛容な社会なんじゃないかって思う。

本当にそうなったらいいなと思うので、とりあえずは「私以外皆うまい」と引き続きあらゆる皆様に思いを馳せながら、いつかは回り回って自分も誰かに「うまい」と言われたらありがたいなあなんて思ったりもする。
そんな日はホストが公務員として認められる日と同じくらい遠い未来かもしれないけれども、だからと言って困ることもなさそうなので、とりあえずは寝てばかりして過ごしながら気長に待っていようと思う。




とりあえずみんな一回美術館にでも行ってくれ

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