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観戦記: 2024 J2 第13節 清水 vs 栃木

GWの真っただ中に行われたJ2 第13節、ホーム栃木戦のレビューを書きます。でしも現地観戦しましたが、快晴の五月晴れで気温もそこまで高くなく最高のサッカー日和になりましたね。

4-1の快勝でリーグ戦5連勝達成

試合は、4-1で清水の快勝。点差ほど差はなく拮抗したゲームでしたが、終わってみれば、今季最多得点の4点を異なる選手が奪い、得失点差の面でも大きなプラスになる素晴らしい結果になりました。
こちらがハイライトです。

開始すぐの2得点の後、前半のうち1点返されるというAいわき戦と同じような展開になりましたが、清水はあの時から成長をしていました。後半3点目の追加点を取った後も、前の推進力を弱めず、更に追加点を奪い4-1での勝利になりました。
試合の流れに沿って、ポイントを書いていきます。

栃木のシステム変更と序盤のピンチ

この試合のメンバーとシステムは以下の通り。(19番は奥田選手ではなく大島選手の誤記です)

清水 vs 栃木 両チームのスタメン

清水は前節から、前節交代出場でリーグ戦に復帰した原選手が先発に復帰。連戦で疲れのある吉田選手に代わって右SBに入ります。システム、「乾不在システム」の4-4-2。ベンチには前節と同様のメンバーに吉田が加わる形でした。
一方の栃木。スタメンの顔ぶれは同じであるためアンカーを1枚置く3-3-2-2と予想しましたが、蓋を開けたらダブルボランチの3-4-1-2の形。これまでは前線でFWだった15番の奥田が神戸とWボランチを形成。大島が宮崎と2トップを組み、注目の南野がトップ下に入ります。
田中誠監督はこの狙いについて試合後に以下のように語っています。

--点差は開きましたが、内容面は少し向上した印象を持ちました。ボランチを2枚にした成果はあったかと思いますが、どう見たでしょうか?
いつもはアンカーだったので、後ろのCBの負担だったり奪いどころで奪い切れなかったり、という課題に対して修正を図りました。今日はエスパルスさんを相手にしたときに劣勢になることを想定し、ダブルボランチにしてある程度自分たちが奪いたいサイドで奪い切るという守備をしようと思っていました。

試合後 栃木 田中監督

試合の立ち上がり、前半1分に、栃木がチャンスを作ります。まさにその立ち位置を変えた南野と奥田のコンビで左サイドを突破し、大森がフリーでクロス。クロスは宮崎に合わず、住吉選手がスローに逃れますが、そのスローインで、栃木はロングスローを選択。そのこぼれ球を神戸がシュートを放ち、わずかでしたが左にゴールポスト左に逸れます。この試合のファーストシュートは栃木となりました。
その後も前線の宮崎がキープして獲得したCKから、南野がシュートを放つなど、試合はじめは栃木ペースでした。

THIS IS 矢島の先制点

この悪い流れを断ち切ったのは、宮本選手でした。前半4分、宮本→原から、右サイドに流れた北川に展開。北川は右サイドでタメを作って、ブラガにバックパス。ブラガは、右サイドのペナルティエリアの角(通称ペナ角)にいるカルリ―ニョスにパス。

前半4分 ペナ角を使ったカルと宮本による突破

カルは巧みに右アウトサイドで、走り込んできた宮本にスルーパス。組み立ての起点だった宮本がランニングでここまで走ってくるというのが清水の今季の強み。ニアゾーンを破った宮本がシュートを放ちますが、これは栃木GKの丹野に阻まれます。カルはこの試合、この「ペナ角」で何度も起点になっていましたね。

そしてこれで獲得したCKから、矢島選手に待望の移籍後初ゴールが生まれます。

THIS IS THIS IS THIS IS 矢島慎也というゴラッソでした。CKの流れで、原からパスを受けると、矢島は単純にクロスを入れるのではなく、矢島→北川→矢島でPAまで進入すると、さらに矢島→住吉→矢島でリターンパスを要求して受けます。右足の足裏でトラップすると、まるでセットプレーのキックのような美しいフォームで右足インフロントで、ゴール左上隅にシュート。蹴った瞬間にゴールとわかるような、美しい弾道を描いたシュートは、左ポストの内側に当たり、サイドネットに突き刺さります。このシュートについては自ら解説してくれていますね。

インステップで振り抜くのではなく、インフロントで逆を狙うというのは、自分の得意な形でもあります。狙いどおりです。

清水 vs 栃木 試合後 矢島選手

入団会見で秋葉監督が語っていたように、矢島慎也という選手は、もちろんポジショニングやトラップ、パスという高い技術が魅力な選手ですが、何故か得点力もあるんですよね。昨晩、現パリ五輪代表が決勝でウズベキスタンを倒してU23アジアカップを制しましたが、2016年のリオ五輪最終予選の決勝で、0-2の劣勢から、1ゴール1アシストとMVP級の働きをしたのが矢島選手でした。ハイライトを置いておきますね。

得点能力に優れる矢島選手。これからも、ここぞというときに点を獲ってくれるのではないかと思います。

THIS IS ブラガの追加点

この矢島の初ゴールで盛り上がる清水のゴール裏は、序盤から「駒込」チャントで選手たちを盛り上げます。

「らーらーらーら らーららーらーら」とチャントがなりびいている中での後半8分、再び歓喜が訪れます。矢島のゴール後、栃木のロングパスがゴールラインを割って以降、カルリがプレスバックしてボールを繋ぐなど、一度も栃木にボールを渡すことなくパスを回します。左サイドでボールが回っている際に、通常とは逆の形ですが、原がハーフレーン、ブラガがサイドレーンにポジションを取ります。それをよく見ていた中村から、原に対するパスが通ります。原がボールを運び、サイドに張っていたブラガにパス。

右サイドでブラガは大森と1対1の局面。得意のドリブルで中に切り込むと、右手で巧みに大森をブロックしながら、利き足ではない左足を一閃。矢島のゴールとは逆の軌道で、綺麗に内側に巻いたシュートは、同じようにゴール左のサイドネットに突き刺さります。矢島のゴールからほぼ栃木にボールを保持させずに連続ゴール。アイスタの雰囲気は最骨頂に達します。

清水のペースダウンと栃木の得点

この試合、栃木がある程度引いて守るとが予想されていたため、一番嫌な展開は0-0で試合終盤までもつれ込み、栃木にカウンターなどでワンチャンスを決められることでした。そうならないためにも、でしnoteの「展望」でも、早めの先制点と追加点が重要だと書いていました。まさにその理想的な展開となり、清水の選手たちも少しほっとしたはずです。
この象徴となったのが前半10分のシーン。左サイドで山原→カルリで楔が入ります。カルリは乾のような素晴らしいターンで相手DFを背負いながら前を向きます。そして左サイドレーンのスペースへのスルーパス。カルリの中ではここには当然山原か矢島が走り込んでいると思ったでしょう。ただ二人ともストップしており、栃木にボールが渡ります。その後もブラガの優しい横パスに対して、目測を見誤った原がボールを流して相手ボールのスローインにしていまいます。徐々に流れを栃木に渡すことになってしまいました。
その中でも前半14分に清水の良い攻撃。中村が右サイドにポジションしボールを受けて、ブラガと入れ替わる形で右サイドにいたカルリにパス。カルリは中村とのパス交換でタメを作ると、ブラガとのコンビネーションワンツーで裏に抜け出し、右足でのシュート。枠を外れましたがカルリ起点の良い攻撃でした。
前半21分にも、中村の良いボール奪取から、中村→カルリ→北川→カルリ→山原→北川と繋がってカウンター。北川選手に出た際に、右サイドの原のオーバーラップに気付いていればスルーでも良かったように思いますが、北川のリターンは相手に係り、その後も繋ぎますが、山原のシュートはブロックに阻まれ、北川のクロスがそのままゴールラインを割ります。
チャンスの後にはピンチあり。前半24分、わずかではありますが、清水の右サイドの守備のほころびを突かれて失点を許します。
神戸が左サイドの左WBの大森にパスを展開。そこには一度ブラガがつくので、大森は神戸に戻しのパス。一つの問題はこの神戸に対して清水の選手は誰もいっていません。その中で大島がPA内をスライドし、左側のペナ角で神戸からのパスを受け、左サイドに上がった大森に落とします。現地でも思いましたが、大森には本来はブラガがついていかなくてはいけませんでしたが、ブラガはボールウォッチャーとなり大森はドフリーでした。大森のダイレクトでの左足のクロスは少し慌ててヘディングでクリアをした原が頭に当てるも不十分なクリアとなり、それがPA内に進入していた南野の元へ。ダイレクトで左足を振り、それが山原に当たってコースが変わりゴール。3つ目の問題は山原のマークも少し距離が離れていました。不運な形の失点ではありますが、タイトなディフェンスをしていれば起きないシーンだったと思います。

前半の終盤は栃木ペースで終了

この得点で勇気を得た栃木は、ポゼッションを高めて、優勢にゲームを進めます。宮崎を起点にロングボールを集めたり、ボランチが上がってボールを受けたり、左サイドの大森からクロスを上げたりと、栃木がやりたい攻撃が徐々に見えてきます。
前半33分、栃木の良い攻撃。宮本のハーフレーンに立つブラガへの縦パスを大森が出足良く前でカット。それを下がって大谷が受けると、左サイドに流れた宮崎に展開し、宮崎がクロス。南野に繋がって一度失うも。神戸がセカンドボールを回収し、左サイドに展開し、大森がクロス。ここもブラガではなく、宮本が釣りだされる形。PA内中央にポジションを移した宮崎にあわや合いそうなシーンでした。
栃木の攻撃について、左WGの大森を起点に、何本もクロスを上げていました。ここはやはり清水のブラガの守備が、相手とゴールの間に距離を空けて立つような守備の仕方であり、強度が足りていないところがありましたね。ここはおそらくブラジルでの守備の仕方と違う部分なので、徐々に慣れていくしかないと思います。
栃木の守備について、清水のサイドバックの特に原にはそこまでタイトなプレスはかけず、スペースを与えます。一方でSBからのパスコースとなる、ボランチ・WG・トップにはタイトにマークし、パスを簡単には入れさせないような守備を徹底していました。そこに対して、清水も付き合ってしまうような形になりましたね。
試合後に宮本選手と原選手が口をそろえてこの問題を語っています。

相手目線だとSBに持たせる狙いがあったという感覚です。SBの選手の判断が遅れて、どんどんハマっていっちゃう時間もありました。バランスを考えてポジションを取っていますが、僕的には少しアンバランスというか、自らボランチがボールサイドに寄って、枚数をかけてもいいかなと思えるシーンはありました。ただ、チームとしてバランスが求められる中で、そこの思い切った決断をできなかったのが悔やまれますし、やっても良かったのかなと思える部分でもあります。

清水 vs 栃木 試合後 宮本選手

入りのところは100点に近かったかなと思います。ただ、前半の半ばから終わりにかけては、自分たちからゲームを難しくしてしまったという感覚があります。ある程度、後ろの選手はフリーでボールを持てましたが、“持たされている感覚”もありました。閉められている感覚があって、距離感も遠かったので、相手に対応し切れないという反省点を感じました。

清水 vs 栃木 試合後 原選手

前半終了間際も、CKを連続で与えるなど、栃木ペースで試合が進み、前半終了。2-1で折り返します。

前半の総括

前半は、試合開始直後こそ、連続得点で清水がペースを握りましたが、中盤以降は1点返したことも含めて、栃木ペースとなりました。あれだけ序盤「いけいけ」の展開だったのに、スタッツとしてもシュート数やポゼッション含めて、ほぼ互角の内容となりました。

清水 vs 栃木 前半のスタッツ

他には清水はボール奪取位置が低いことと攻撃が右サイドにかなり偏重していることが気になりますね。あまり前から強くは行けなかったということと、攻撃の部分で左サイドをうまく使えなかったことは課題を残しました。

後半の序盤は一進一退の攻防

後半開始からのメンバー変更はありません。まずチャンスを作ったのは栃木。後半1分、ファール気味のように見えましたが、住吉の縦パスを受けた原が後ろから倒されてボールを奪われます。左サイドに張っていた大谷を住吉がケアしていたため、インナーラップで走り込んだ南野にスルーパス。そのまま南野がPA内まで持ち込んで左足のシュート。ニアに外れましたが、最初にチャンスを作ったのは栃木でした。
清水は、引き続き、右サイドからの攻撃が中心になります。これは乾がいない場合に起こりやすいので今後の修正ポイントかと思いますが、前半よりも、カルリや宮本が絡むことで数的優位の状況を生み出すことでゴールに迫るシーンは増えていきます。この狙いについては試合後に原選手が語っていますね。

後半に関してはカル(カルリーニョス ジュニオ)をこっち(右サイド)に寄らせて、ブラガとの関係性をより発揮できるようにしたり、前半にはなかったような形で前へ進む場面もありました。そこで自分の特長を出せることもありました。

清水 vs 栃木 試合後 原選手

後半8分には、久しぶりに左サイドからの攻撃。住吉選手がオーバーラップして中村選手からパスを受けて、持ち込んでペナ外中央にいる北川にパス。北川が右足でシュートを放ちますが、丹野にキャッチされます。この日北川の最初で最後のシュートになりました。この日はラファエル中心にかなり激しくチャージを受けていましたね。
さらに後半10分。カルリが右サイドで見事なターン。大森が思わず引っ張り倒してイエローカードを受けます。
後半12分、今度は左からのCK。キッカーはこの日初めて山原。住吉の頭に合わせますが、ブロックされます。そしてその流れの中から、高橋→山原と渡り、PA内で待ち構える北川に楔を入れます。これぞ北川というプレーで、うまく相手DFを背負いながら、山原へのリターンパス。完全にニアゾーンをフリーで受けた山原ですが、ここは珍しくキックミスでクロスが大きくなり、自らチャンスを壊してしまいます。

栃木がFW2枚交代で一気に優位に

清水の流れになってきたことを受けて、後半14分、栃木田中監督はトップの2枚を変えてきます。大島→イスマイラ、宮崎→矢野。特に宮崎は清水にとって脅威でしたが、おそらく宮本との衝突で腰を痛めたため。ナイジェリア出身で188cmでフィジカルの強いイスマイラと、40歳ながらまだまだ現役バリバリの元日本代表の187cmの矢野貴章という高さのあるツートップになります。
後半18分の栃木のCK。大森のキックは一度は権田が弾きますが、セカンドボールを栃木が拾い、南野が奥田のワンツーから抜け出し、左足での正確なクロス。まだ残っていたラファエルが頭で合わせますが、ファーに外れました。
さらに後半20分。イスマイラ交代による狙いがでます。原からカルリへの縦パスに対して、カルリが珍しくトラップミス。南野から藤谷を経由して、左サイドで原と高橋の間に立つイスマイラへ。イスマイラはそのままドリブルでPA枠の外から豪快なミドルシュート。強烈なシュートはポストを掠めます。
その直後にも、清水のパス交換で宮本に入ったところを、背後からイスマイラが奪取。矢野から大谷に繋ぎ、右サイドの7番石田へ。石田のクロスから矢野が抜け出したかに見えましたが、ここはオフサイドとなります。矢野がもう少しラインを気にしていれば決定的なチャンスでした。ちなみに矢野がオフサイドになったのは明らかにPA内のはるか手前側でしたが、権田がFKをしようとした位置を、主審がPA内に戻したのは七不思議でした。
そして後半22分にも、栃木に決定機。狙いであるロングボールを、矢野に送り、住吉が競り合ってこぼれ球となり、これにも住吉が向かいますが、斜め後ろから来たイスマイラが住吉を弾き飛ばし(ショルダーというよりは身体全体を斜め後ろからぶつけていますので、ファールに見えましたが)、イスマイラがフリーでPAまで進入。イスマイラのクロスは高橋がブロック、さらにこぼれたボールに反応した南野シュートを原がブロック、さらに左サイドにこぼれたボールを大森がシュートしますが、浮かせてしまいゴールを大きく外れます。これは栃木のこの試合最大の決定機でした。シュート精度に助けられましたが、ここで追いつかれていたら嫌な展開になっていたと思います。住吉の治療時間に、清水の選手たちは話し合いを持ちます。

両チームメンバー交代で清水の流れに

後半23分に、両チームともに2枚替えを行います。
清水は北川からタンキ矢島から松崎という同じポジションの入れ替え。栃木は大森から青島南野から森に交代。正直南野はこの時間も走れていましたし、清水にとって脅威になっていましたので、この交代は助かりました。ちなみに青島太一選手は清水ユース出身、川本選手と同期ですね。
両チームのメンバー・システムはこうなります。

清水 vs 栃木 後半23分からのメンバー

清水は松崎が右WGに入り、ブラガが左WGに回ります。一方の、栃木は、システムをもともとの3-1-4-2に戻し、神戸がアンカー、奥田と青島がトップ下、森が左WGに入ったように思います。

両チームのどちらが流れをつかむのか注目でしたが、流れをつかんだのは清水でした。
そのきっかけは後半28分のタンキのプレー。左サイドの山原のスローインを受けると体の強さを発揮して一人を飛ばし、左足でクロス。クロスが相手DFにあたってCKかと思いましたが、ゴールキックの判定。1 vs 3の状況でしたが、こうしたプレーをしてもらえるのは周りの選手は非常に助かりますね。
さらに後半29分、山原の華麗なサイドチェンジから、原がドリブルで中に切れ込み左足でのシュート。DFにリフレクションしてCK獲得。ファーに走っていたカルリが合わせられれば1点のシーンでした。
続いて後半30分。タンキと松崎が清水右の同サイド圧縮で追い込みボールを奪取。センターにいたカルリ→左サイドに走ったブラガとボールが渡り、ブラガが抜けきらずに右足でのクロス。カルリは後ろにタンキがいると思いスルーしましたが、相手にカットされます。カルリは、タンキに点を取らせたいという気持ちが随所に見えましたね。こういところ大好きです。
続いて後半31分。今度は右SBの原が相手を交わしてドリブルで持ち上がり、逆サイドのブラガにサイドチェンジ。ブラガが山原に落として、ペナ角からミドルシュート。ニアに外れましたが良い攻撃を示します。

清水の「攻撃的」3バックで山原の追加点

さらにここで秋葉監督は次のカードを切ります。後半32分にブラガに代えて吉田を投入。システムも3-4-2-1に変更します。

清水 vs 栃木 後半32分〜のメンバー

面白かったのは、これは決して「守備固め」を意図したものではなかったこと。むしろ、両WGで主導権をとって、相手を押し込もうとする狙いでした。宮本選手のコメントからもチームとしても共通認識があったようですね。

--追加点を決めて勝てたことについて。
3枚でクローズする時間帯でもなかったですし、追加点を取れるなら取って、試合展開をラクにしたいとは思っていました。交代選手も前の選手が多く、彼らの特長が出た展開になったと思っています。良い時間帯に点を取ってくれたので、感謝しています。

清水 vs 栃木 試合後 宮本選手

この交代の直後、まさに清水としての狙いが出ます。後半33分、栃木の神戸選手のトラップミスを見逃さなかったカルリがボールを奪いタンキへ。フィフティフィフティのボールでしたが、タンキが長い脚でボールを前に運び、まさに「単騎」での突破。PA付近で後ろからミスを帳消しにしたい神戸のチャージを受けて倒れますが、笛はならず。ただ、その後吉田は集中していましたね。すぐにゲーゲンプレスをかけにいき、たまらず青島が出した横パスに、山原が鋭く反応。見事なトラップでカウンターに出ようとしていた栃木の大谷選手、石田選手を置き去りにしてフリーに。左足で冷静に右サイドネットに流し込み、非常に貴重な大きく勝利を引き寄せる、値千金の追加点を奪います。

後半34分の貴重な追加点ということで、いわき戦や仙台戦に続いて、チームにとって本当に欲しいタイミングで3点目に絡むという。この日はここまであまりボールに触れず、また失点にも絡んでしまって、良い部分が少なかったのですが、本当に勝負強い選手ですね。このゴールで清水の勝つ確率が大きく高まりました。

仕上げは松崎のダメ押し

後半35分に、栃木は最後の交代カード、神戸から小堀に交代。
ここからは栃木のアフター気味のチャージが目立ち始めますが、清水の選手たちは勇敢に戦い続けます。
後半40分にはカルリの素晴らしいターンから、タンキへのスルーパス。タンキはPAまで持ち込んで、一度はバランスを崩しますが、また反転してシュート。ラファエルにブロックされますが、迫力のある攻撃を見せます。
これで奪ったCKから、今度は高橋がヘディングシュート。こぼれ球をタンキがキープしてスローインを獲得します。
そして後半42分。清水に4点目が生まれます。スローインから、相手になりかけたボールをカルリが奪い返し、松崎との細かいパス交換から、松崎がドリブル。またしても「ペナ角」にポジションをとったカルリが、回転しながらのヒールパス。松崎の足元に落ちて、松崎は左足で切り返したのちに、利き足ではない右足で逆サイドへのシュート。ダメ押しの追加点になります。

この得点でほぼ試合は決まり。秋葉監督は後半44分に宮本→西澤カルリ→西原の交代カードを切ります。
アディショナルタイムの3分には清水の波状攻撃。最後は吉田のクロスが引っかかりシュートには至りませんでしたが、相手を完全に崩し切った素晴らしい攻撃でした。

4-1での快勝

試合の総括

後半のスタッツはこうなりました。

清水 vs 栃木 後半のスタッツ

試合全体ではこうです。

清水 vs 栃木 試合全体のスタッツ

後半の前半は栃木、後半の後半は清水ペースという形になりました。最近の清水は後半の前半に相手にリズムを取られますが、交代選手の活躍で試合終盤にペースを取り返せるのはいいですね。

4得点の割には、ゴール期待値がトータル1.18というのは若干違和感ありますが、GWに詰めかけた17,000人以上を熱狂させるには十分すぎる内容だったと思います。
90分間を通して、ペースを握ることができればもちろんさらに良いですが、逆にそうではない時に我慢できるのも今年の清水の強さだと思います。これについても原選手、宮本選手が話していますね。

--難しい試合展開、内容の中でも勝ち切った。
去年よりも我慢強く戦えているという印象は持っています。今日の試合だけでなく、うまくいかない流れのときに耐えながらも、最後あのようなチャンスを仕留めて勝ち切る回数は、今季多いです。連勝ができるチームの特徴だと思いますし、そこはポジティブに捉えています。簡単に勝てる試合なんて1つもない中で、いかに苦しい時間帯を乗り切るかが大事だと思います

栃木戦後 原選手

--後半は押し込まれる時間もあった。ピッチに立っている選手の感覚は?
向こうのFWに高さのある選手2枚が入ってきて、ロングボールを蹴られたり、セカンドボールを回収されたり、早いタイミングでクロスを入れられることが多かったです。自分的にも若干の怖さはありました。ただ、チームとして踏ん張る時間帯は絶対にあると思っています。これまでの12試合で守れてきた経験があったから、実際に踏ん張ることができたと思っています。もちろん危機感は感じます。危ないシーンは減らしていかなければなりませんが、そのような成功体験があったことでストレスなくやれました。

栃木戦後 宮本選手


全選手が素晴らしい活躍でした

この試合のMVPは?

この試合はMVPを一人上げることは難しく、複数の選手が輝きを放った試合でしたね。
まずは矢島選手。先制点の素晴らしいゴールもさることながら、下記の攻撃の個人スタッツにある通り、左サイドにいながらもボールに良く絡み、9割以上のパス成功率でチームに貢献しました。

栃木戦の矢島選手の個人スタッツ(攻撃)

続いてカルリ―ニョス選手。2トップの1角ではあるものの、攻撃にも守備にも大車輪の活躍。後半は右サイドでも良くボールに絡んでいましたし、4点目の松崎選手へのアシスト含めて、多くの決定機を演出していました。あれだけの技術がありながら、献身的で周りを活かせる10番。他のチームにはいないと思います。

栃木戦のカルリ―ニョス選手のヒートマップ

最後に上げたいのはドウグラス・タンキ選手。リーグ戦では、これまでで最も長い時間プレーしましたが、まさに重戦車の異名の通り、大迫力のプレーでチームに貢献しました。二つの抜け出しからの決定機もそうですが、私が最も驚いたのはAT5分のプレー。権田からのロングボールに対して、内側から外に走って、触るだけでも難しかったのに、それを胸でトラップして収めてしまうんです。「欧州の香り」がするそのワンプレーにびっくりすると同時に、これからコンディションが上がってきたら、どこまでやれるのだろうと今から期待しかありません。

他にも、決勝点を奪ったブラガ選手、値千金の3点目を奪った山原選手、4点目の松崎選手、後半に本来の調子を取り戻した原選手、無尽蔵のスタミナで圧倒的なパフォーマンスをした中村選手、その相棒の宮本選手、安定した守備で追加点を獲らせなかった高橋選手・住吉選手のCBコンビ、危なげないセービングを見せた権田選手など、すべての選手が素晴らしかったと思います。
鹿児島キャンプ当初は、スタメンの11名と、サブの選手に正直パフォーマンスの差があることを秋葉監督も指摘していましたが、ベンチの選手(7名)+数名はレギュラーメンバーと遜色のない働きをできるようになりました。実際に乾選手、蓮川選手を欠く中での連勝ですからね。本当にこの辺りの底上げも昨季よりも上手く言っている点だと思います。

最後に

清水はこれで5連勝で10勝到達。10勝1分2敗の勝ち点31となりました。優勝ペースは1試合平均勝ち点2であるため、勝ち点5を貯金したということになります。今節、長崎が秋田に引き分けたため、勝ち点差は1から3に広がりました。それでも長崎は1ゲーム差かつ、得失点差で上回っているため、まだまだ油断できる状況ではありません。次は中2日でのアウェイ群馬戦。前回最下位の徳島に引き分けているだけに油断はできません。
また展望で書きますが、おそらく秋葉監督は、主力の疲労回復とチーム全体の底上げを図るために、ターンオーバーを採用するでしょう。
タンキ選手をはじめ、誰がレギュラー獲得に名乗りを上げるのか、大変楽しみですね。


次も必ず勝ちましょう!

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