第十夜 心づくしの秋 後編

『源氏物語』は、平安時代に紫式部が書いたとされる、世界最古の長編小説である。
 主人公の、光源氏の君は、桐壺帝の皇子として生まれるが、占いの結果を受けて、皇太子ではなく、臣籍降下して、源氏の姓を賜る。この光源氏が、義母である藤壷や、自ら育てた紫の上をはじめとする、幾多の女たちと、恋の遍歴を重ねながら、宮廷人としても出世して、准太上天皇となるも、無常を覚えて出家するまでを描いた、第一部と第二部。光源氏の死後、出生の秘密を持つ光源氏の子、薫の君の生涯を描いたのが第三部である。
 原本は現存しておらず、表題のみが伝わる「雲隠」のように、本文が伝存していない巻もある。写本にもいくつかの系統があって、それぞれに異同がある。そのため、全編を紫式部が書いたわけではない、とする説も存在する。
 何にせよ、『源氏物語』が、平安時代の貴族たちの間で、流行文学として愛されていたことは間違いない。

 がたん。
 大きな音がして、几帳が倒れ、私たちはそちらへ目をやった。
 几帳の上に倒れているのは、侍女姿の拾であった。
「おやおや、几帳の綻びから、のぞき見かい? いけない侍女だ」
 御簾が上げられていなくて幸いだった。私の動揺と、真っ赤になった顔を見られずに済んだから。
「お許しください。ほんの出来心にございます……」
 平伏して詫びる拾に、中将の君は微笑みを投げてみせ、それから私に向き直って言った。
「今宵はここまでにいたしましょう。明日また、うかがいます」
 中将の君が立ち去り、外から牛車の動き出す音が聞こえると、私は矢も楯もたまらず、御簾を上げて飛び出した。
「奥方さま、お許しください!」
 這いつくばって詫びる拾が愛おしくて、私は、彼を抱き寄せ、きつく抱き締めた。
「お前は悪くないわ」
 その一言を口に出すのがもどかしく、私は拾に口づけをし、舌をねじこんだ。そのまま拾を仰向けに押し倒す。
 手を伸ばすと、拾のそれは、もう十分にいきり立っていた。
 私は、着物を脱ぐのすらもどかしく、前をはだけて拾にまたがり、深々と拾を呑み込んだ。
「ああ……」
 拾の先端は、ちょうど私の一番奥に届く。長すぎも短すぎもしない、私のためにあつらえたかのような長さだった。そして、太すぎも細すぎもせず、私の肉が彼の肉を感じるのに、ちょうどいい太さだった。
 私が手放したくないものは拾? それとも、この陽物?
 そんなことも次第に考えられなくなっていく。私の頭が真っ白になると同時に、彼も私の中に激しく放った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?