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超私的グルメ(25) ロバのパン

今回は、懐かしい『ロバのパン』です。ロバのパンに出会ったのは、今から半世紀も前の、私が小学生の頃でした。ロバのパンとのファーストコンタクトの日、その日は土曜だったので半ドンで家に帰っていました。何もすることが無くて家でゴロゴロしていたら、外で変な音楽が流れてきました。

軽快なメロディーで「ロバのおじさんチンカラリン♪」とスピーカら流れてきました。「ロバのおじさん・・・?」と思いながら外に出てみると、軽トラックの荷台がショーケースになった1台の車がゆっくりと走っていました。たまたま、私の家の前の道路に、ロバのパン屋さんが止まりました。

「ロバのパン屋」は、蒸しパンの移動販売車です。いまは、タイトル画のようなちょっと可愛くてオシャレなワゴン車ですが、私の頃は軽トラックだったと記憶しています。このパン屋さん、といっても蒸しパン専門ですが、それまでにないカラフルな蒸しパンを売っていました。

ググってみたら現在でも秘かに売られているようで、苺ジャム、チョコレート、三角レーズン、抹茶あんぱん、カスタードクリームなどのメニューがあります。私のいい加減な記憶では、黒糖蒸しパンもあった気がします。

昭和の40年代は日本が豊かになる途中で、まだまだものが不足している時代でした。この時初めて、おしゃれな”蒸しパン”に出会いました。何も入っていないシンプルな蒸しパンはそれまでにもありました。しかし、中にジャムやチョコレートが入っていたり、色もカラフルな蒸しパンは画期的でした。

確か値段は50-60円くらいでした。記憶が間違っているかもしれませんが、当時のショートケーキと同じくらいの値段でした。その当時、10円あれば駄菓子屋でおやつが買えた時代です。ロバのパンはかなりの高級品でした。そのため、滅多に買ってもらえませんでした。

その日は、母親の機嫌が良かったのか、気前よくロバのパンを買ってくれました。私が食べたのは抹茶あんぱんだった思います。ほのかに甘い蒸しパン生地の中には、甘いアンコが入っていました。抹茶とアンコの最高のマリアージュでした。「うめー」と思わず、心の中で叫びました。

それからも、ロバのパン屋さんは何度も家の近くに止まりましたが、買ってもらったのは2-3回くらいでした。「また食べたいなぁ~」と思いつつ待っていましたが、その後、ロバのパン屋さんは現れなくなりました。

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