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全国教育問題協議会の《反論》を読みながら、同協議会の「顧問隠し」・「青津和代隠し」を考える。

全国各地のPTA連合会の有志や父母、住民が教育正常化のため結集し、「全日本教職員連盟」の皆様と協力して「美しい日本人の心を育てる教育」を目指し、活動を展開している》と自負する一般社団法人全国教育問題協議会(以下、全教協)は、中尾建三理事長による『「週刊文春」憶測記事に関する反論』を発表した。その一部分を紹介する。

「文春」が私共「全教協」と「旧統一教会」との関連を憶測した理由は、当会の事務手伝いを今年3月までなさっていた青津和代氏が「勝共連合」の関係者であったこと、又、役員の一人が「世界日報」に記事を提供していたということ* であろうかと思われます。
まず、青津氏は、会の趣旨に賛同され2000年中頃に入会した人で、文春は、青津氏を役員と断定していますが、入会から一度も役員であったこともなく、事務を手伝われた方で運営に関係した方ではありません。この度、渡辺弁護士さんより「全教協は、(旧)統一教会の関連団体ではない」と証明して頂いたので、これ以上、「全教協」に迷惑かけられないとして、8月末で退会されました。

中尾建三 (一社)全国教育問題協議会 理事長『「週刊文春」憶測記事に関する反論』2022年9月5日より

何度読んでみても最後の一文の意味が理解できないのだが、それはともかく、20年近くにわたって全教協の事務局で働いてきた青津和代氏に対して事務局次長、事務局長といった役職まで与えてきた全教協の代表として、《事務手伝い》だとか《事務を手伝われた方で運営に関係した方ではありません》と言い放つ中尾建三理事長には、ただただ驚くしかない。

※ 《「世界日報」に記事を提供していた》全教協役員とは、恒崎賢仁 副理事長のことだろう。彼の1995年の著作に掲載された《筆者経歴》には《世界日報記者として教科書問題、レフチェンコ問題などに取り組んだ後、 1984年よりワシントン、エルサレム特派員として9年あまり海外生活を送り、湾岸戦争、 マドリード中東和平会議などの報道で活躍》とある。1981年の「〈侵略→進行〉大誤報問題」批判の口火を切った渡部昇一氏が、その《誤報》について知ったという《『世界日報』(八月六日)》記事も、恒崎 副理事長の《世界日報記者》時代の仕事の一つとして知られている。

引用でなく註釈

全教協のサイトやパンフレット等に掲載された『役員名簿』や『役員一覧』には、青津氏の名が掲載されてきた。もちろん全教協の定款第20条では、理事と監事のみを《役員》と規程しているため、理事長ら《役員》にとっては、「『役員一覧』に並んでいても、それが《事務局長》であっても、彼らは《役員》ではない。彼らは《事務手伝い》や《事務を手伝われた方》でしかなく、当然ながら《運営に関係した方ではありません》」と言いたいのだろう。

全教協が今まで《全教協広報部担当》・《事務局員》・《事務局次長》などを、まるで役員であるかのように『役員名簿』等で扱ってきたのは、《事務手伝い》の方々に対する敬意を表われだったとしても、しかしその敬意も、所詮はただの建前にすぎなかったことを中尾理事長の《反論》が教えてくれる。

中尾理事長はその《反論》のなかで、こうも述べている。

それから、私共のホームページから、顧問の皆様を消したのは何故か?と問い合わせがありました。これは、今年度、私共「全教協」の役員・顧問の改選の年であり、新役員は決定し、掲載しましたが顧問の皆様は未だ決定してなく、掲載していないものであります。

中尾建三 (一社)全国教育問題協議会 理事長『「週刊文春」憶測記事に関する反論』2022年9月5日より

これは週刊文春記事には出てこない話だが、取材のなかで《顧問の皆様を消したのは何故か?》といったやりとりがあったのだろうか。

知らない人のための全教協サイトの「顧問隠し」・「青津和代隠し」

2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件によって、日本が空前の「統一教会ブーム」に包まれていた同月25日、青津和代氏が過去に2回、富山市議会の自民党会派の勉強会に講師として招かれていたことを富山チューリップテレビが報じた

その報道のなかで青津氏は《統一教会の熱心な信者で特に勝共部門の責任者の一人で、国際勝共連合の選挙対策とかを実際に担当していたという人物》と紹介された。その人物が2010年の統一教会内部FAX文書とされる、いわゆる「有田退治文書」に登場することを人々が思い出すのに時間はかからなかった。

「有田退治文書」には《勝共本部青津和代氏より資料等届いているかと思いますが、山谷えり子戦士必勝のためご尽力お願いいたします》、《又青津さんも自民党の先生方を集めた全国教育問題協議会の事務をしている関係から名前を変えています。勝共の青津は使っていません》といった記述があるのだ。連日の「政治と統一協会」報道の矛先は、当然のように、山谷えり子 参院議員にも向けられることになる。

山谷参院議員は、8月3日の毎日新聞の取材に「私は〔統一教会とは〕関係ありません」と回答。そして翌日には記者団に対し、統一協会からの選挙支援について否定した。

そのような状況のなか、長年にわたって全教協サイトに掲載され続けていた『役員名簿』ページに大きな変更が行われたのだった。

放置状態の「顧問リスト」を《改選の年》だから削除!?

全教協『役員名簿』ページ変更についての、中尾建三理事長の説明を要約すればこうなる。

  • たまたま今年は、全教協の顧問・役員が改選の年だった。

  • 『役員一覧』ページの役員リストを《新役員》のリストに変更した。

  • 顧問改選はまだ行われていないため、顧問リストは掲載していない。

  • よって「顧問隠し」などしていない。

しかしこれは全くの苦し言い訳であり、さらには事実について読み手に誤解を与える不正確な説明だ。

該当の『役員名簿』ページのリストは2022年夏までに、『平成26年度役員名簿』、『平成28年度役員名簿』、『役員名簿』とその名前はたびたび変えられてきたが、そこにある顧問リストの中身には何の変化もみられない。しかしそのことは、全教協の顧問が変わらなかったという意味ではない。ただサイトの顧問リストが放置されていただけだ。

全教協サイトの顧問リストが長年放置されてきたこと。またその期間にも顧問の変更があったことを示す筆者作成の表。
全教協サイトの顧問リストは放置されていた間にも、全教協の顧問自体には変遷があった。

例えば近年の全教協顧問のなかから国会議員をみても、全教協パンフレット2014年版に掲載された顧問リストには義家弘介 衆議院議員が掲載されている。また2021年版パンフレットには、義家弘介 衆議院議員に加えて、橋林太郎 衆議院議員、上野通子 参議院議員の名も並んでいる。しかし彼らの名前は、削除された顧問リストには記載されていなかった。なにせ全教協サイトの顧問リストは、2017年に死去した小田村四郎氏がリストが削除される残っていたほどだ。

古い顧問リストが放置されていると発覚したのなら、現在の顧問リストに差し替えればよいだけだ。そんなことはリストを削除する理由にはならない。ましてや、新たな顧問が選任されるまでは、現在の顧問を掲載しておくのが当たり前だろう。一体どこの世界に「今年は取締役が選任される年なので、経営陣の名前をサイトから消しました」などということがあるのか。それにもかかわらず、わざわざ顧問リストを削除したのだから、全教協が顧問の名を、それも過去の顧問ですら、伏せたのだと受け取られても仕方がない。

また、完成したばかりの全教協の2022年版パンフレットにも、顧問リストは掲載されなかった。急遽作成されたのか、2021年版と全く同じレイアウトのなかで、前年版との大きく違っているのが、この不自然なレイアウトだ。ここからも全教協の「顧問を隠したい」という意思が感じられる……と言ったら言い過ぎだろうか。

全教協パンフレットの2021年版と2022年版。2022年版からは顧問リストが消えた。
またどちらも《全教協が国民の皆さんに訴えたいこと》として
《青少年健全育成基本法の制定》と《家庭教育支援法の制定》が掲げられている。

全教協『役員名簿』変更に見る「青津和代隠し」の実像

役員リストに関してはさらに酷い。中尾理事長は「新役員リストを掲載する際に、顧問リストを削除した」かのように言っているが、その経緯を追っていれば全く不正確な説明だということがわかる。もし「そうは言っていない」と言うなら、「役員リスト変更の詳細について言及しないことで、読み手をミスリードする説明」とでも言えばよいだろうか。

全教協サイト掲載の役員リストの推移を表した表(筆者作成)
役員リストの変更は2度行われたが、結果的に、どちらも事務局の2人が消えただけだった。

全教協サイトの役員リストは、少なくとも、8月上旬頃の「事務局員2名の削除」、8月下旬頃の「『令和4年度 全教協役員』リストへの差し替え」という2度の変更が行われた* 。つまり外形的に言えば「古い役員リストから、青津和代氏を含む事務局員だけを削除(事務局長は残す)し、加えて顧問リストを丸々削除。そして後日《新役員》リストに差し替えた」となる。

※ さらにその後には、『役員名簿』ページ自体が旧ページから、別URLの新ページにそのまま移設されるというサイト構成の変更もあった。

引用ではなく註釈

さらに《改選の年》に選ばれた《新役員》のリストであるはずの『令和4年度 全教協役員』も、2021年版パンフに掲載されていた『令和3年度 全教協役員』から青津和代氏を含む《事務手伝い》2人が削除されたリストに過ぎなかった。もちろん《改選》によって《事務手伝い》以外が再任されたということもあり得るが、部外者がそれを判断することはできない。

ただし、週刊文春2022年9月1日号記事では《青津さんは今も会員ですが、事務局は本人の意向で今年3月31日に辞めています》との中尾理事長のコメントも紹介されている。それが事実なら、2022年度の事務局長には別の人間が就いていたはずだ。しかし全教協が長年続けてきた「《事務手伝い》は正式には役員ではないが、公表する役員リストには《事務手伝い》も記載する」という「伝統」も今は消えてしまったということだろう。

全教協の過去記事「改竄」から浮かぶ「青津和代隠し」の意図

しかし全教協が行ったサイトの変更は、『役員名簿』ページからの顧問リスト・《事務局員》削除だけではない。それらが行われた2022年7月下旬~8月頃には行われたのと同じ時期、全教協サイトの過去記事からは、青津和代氏に関わる箇所が削除されている。

全教協サイトの過去記事『教師たちの心身が危ない 仕事の協力最優先』(2019年2月7日)から青津和代氏による記事の転載が削除されたことを示す画像
全教協サイトでは2019年の過去記事からも青津和代氏の名前と《800字提言》が削除された。
なお変更があった2019年記事での青津和代氏の肩書は《全国教育問題協議会事務局次長》だった。

この2019年2月7日記事の修正からは、その理由はともかく、青津和代元事務局長との関わりを消そうする全教協の強い意志を感じざる得ない。

「青津氏の記事の内容が問題となって消されただけでは?」などと考える方は、先の過去記事画像をよく見ていただきたい。削除された青津氏の《800字提言》は、2019年2月当時に全教協の事務局次長だった青津氏が、全教協の機関紙に寄稿したものだ。その記事内容を全教協が問題視するはずがない。それとも全教協の方針がこのタイミングで大きく変更されたとでもいうのだろうか。

青津氏の《800字提言》は、《子育て中の母親の34.8%が地域との会話もなく、孤立している》《子育ての孤立化・不安が虐待につながる》などと現状を憂いながら、《孤立した中での子育てをしている親達に、親としての学びを支援》したり《子供への親になるための学びの推進》することでその問題に対応している熊本家庭教育条例を紹介する内容だ。そして記事はつぎのように締め括られている。

一日も早くどこでも親達が支援を受けられるよう全国化が望まれる。そのためにも、今国会で家庭教育支援法の成立を実現して頂きたく強く念願している。「親育て」こそが、今日的キーワードなのである。

青津和代 全教協事務局次長(当時)『父性、母性を育む家庭教育の重要性』
(『全国教育問題協議会ニュース』2019年2月号収録)より

先にみた全教協パンフレットでは《全教協が国民の皆さんに訴えたいこと》には《青少年健全育成基本法の制定》と《家庭教育支援法の制定》が掲げられていた。青津和代氏らが「青少年育成基本法」と「家庭教育支援法」を《車の両輪》として捉え、両方の推進のために運動を続けてきたのは以前みた通りだ。

約20年にわたって全教協の《事務手伝い》をしてきた青津和代 元全教協事務局長の視線は、削除された《提言》でも、それ以前も、そしておそらく今も、全教協と同じ方向を向いている。

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▼ 青津和代氏も仲の良い熊本ピュアフォーラムのはなし

▼ 青津和代氏も関わる全国の「草の根」運動のはなし

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